プロローグ
魔法界リベリア。
東西南北の四つの大陸からなるこの世界は、総人口百億人を超え、その三割の人間が魔力資質と呼ばれる魔法使いになるために最も必要な才能を持って生まれる。
各大陸。大陸にある国々。国の中の街。
様々な文化と環境、人種、人外が織り成す世界の中で、ただ一つ全てに共通していることがある。
それが、魔法の存在。
言霊や呪法、それに属する道具を用いて、空間大気に住まう精霊を操る力。
その力を持つ者は、魔法使いと呼ばれた。
大陸によって魔法の特色は異なるものの、全ての魔法使いは精霊を宿した剣―――『霊剣』を携えて、あらゆる戦いに挑む。
魔法界で四つの脅威とされる、人、自然、魔物、罠。
旧暦の時代から続く大陸戦争や国家戦争、派閥戦争。
二度の魔法界大戦を終えて新暦になった近代魔法界においても、平和と争いは繰り返されていた。
そして、各国の魔法犯罪者たちが集団を作り、先導者として引き金を引いた三度目の大戦。
新暦に入って始めての大きな戦争となった第三次魔法界大戦は、東西南北魔法界全土にまで影響をあたえる大戦争に発展していった。
直接戦争の渦中にはならなくとも、戦争による食料問題や環境問題、魔法兵器が起こす災害は、魔法界の国々に住まう多くの人々を苦しめ、その命に死をもたらした。
大戦が終結したのは、今から約一年半前のこと。
魔法界に現れ、戦争終結と同時に去っていった一人の少年。
彼の力が最も大きかったといわれている。
一年半前。
南大陸―――レイバ国の中心、王都メリゼル。
夕闇に染まる空に、藍色の髪の少年は浮かんでいた。
少年の背中には、蒼白い輝きが、翼を作っている。
ただし、片翼。
左翼だけだ。
そして、少年の隣には、茜色の髪を肩下まで伸ばした少女が、同じように浮遊していて、
少女の背中には、少年と逆で、右翼があった。
形作っているのは、紅黒い光。
翼というより、羽と表現した方が分かりやすいかもしれない。
少年が左手に握る一本の蒼白く澄んだ剣。
少女の右手に握られた一本の紅黒く染まる剣。
二人は見下ろすように王都を見ると、あちこちの民家から煙や火の手が上がっている。
少年は藍色の瞳を正面に戻すと、その先には同じように空に浮かぶ竜の大群。いや、大軍は、黒いローブを纏った者たちを背に乗せ、こちらに向かってくる。
「―――」
竜の軍を見ながら、少年が何かを呟いたが、上空に吹き荒れる突風と竜の雄叫びにかき消された。
しかし、少女にはその言葉が聞こえていたようで、隣の少年に目をやり、剣を持たぬ左手で少年の右手を握る。
魔法の光が空中に飛び交い、竜の吐く炎が天を焦がす。
少年と少女は、張り上げるような声と共に、二人で竜の群れに突っ込んでいった。
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