鬼の徘徊する死んだ町
月明かりの下に赤い血が光り、道路に飛び散っている。
黄色い脂肪がその周りにへばりついている。
白い骨が乱雑に原型を留めず転がっている。
まだ人の形を留めている蛆の湧いた名状し難い黒い人肉。
破れた腹部よりまだ新しい内蔵がはみ出している。
嗚呼、鼻に付くのは鉄錆の臭いか、それとも死臭か、腐乱臭か。
人の姿をした化け物がこの町に来たのは何時だろうか。
化け物が手当たり次第に人を喰い散らかし、この町を去ったのは。
その後、何処からともなく現れた、人によく似た姿をし、狼の顔を持ち、腐肉を喰らう人外は、喰い散らかされた残骸へ更に歯をたてた
私は何とか奴らから逃げ延び、隠れているが、見つかるのは時間の問題だろう。
奴らは鼻が異様に鋭い。
これは報いなのだろうか?
両親の死体を、まだ微かに息をしていた友を、将来を約束した恋人さえも犠牲にし生き延びた私への。
だが、私の番がもうすぐ来るようだ。
私もそこいらに転がる名も無き骸の一つに成り果てる。
私の体から流れる血の匂いに誘われて、食屍鬼共が集まってきている。
ヒタヒタと、ゴム底の靴のような足音を無数に立てながら、気味の悪い奴らが集まってきている。
嗚呼、嗚呼。
早く。
殺してくれ!