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トーノブユース  作者: ふなつさん


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第二話⑤

メモリア・コードからメールが届いた日から、数日が経った。

 文化祭の準備は、少しずつ形になり始めていた。

 昼休み。

 私は綾香と一緒に教室でお弁当を食べていた。

「明日香」

 綾香が言う。

「生徒会、今日もあるよね」

「うん」

「文化祭のやつ?」

「たぶん」

 綾香はお箸を止めて少し考える。

「メール来てるかな」

 私は少しだけ笑った。

「どうだろう」

 メモリア・コードからのメール。

 あの日、生徒会室でみんなで読んだあと、生徒会として返信を送った。

 それからは特に連絡は来ていない。

 でも、文化祭の話をしているとき、どうしてもそのことを思い出してしまう。

「放課後わかるね」

 綾香が言う。

「うん」

 私は小さくうなずいた。

 授業が終わって、放課後になる。

 私たちはいつものように三階の生徒会室へ向かった。

 廊下には部活に向かう生徒の声が響いている。

「お疲れ様です」

 生徒会室のドアを開けると、もう先輩が何人か来ていた。

「お疲れー」

 私はカバンを椅子の横に置いて席に座る。

 机の上には書類の束。

 文化祭の準備はまだまだやることが多い。

「出店の配置決めよう」

 会長の先輩が言う。

「体育館のスケジュールも確認したい」

 いつも通りの会議が始まる。

 私はノートを開いてペンを持った。

 クラスの出店。

 場所の割り振り。

 人の流れ。

 そういう話をしながら、時間が少しずつ過ぎていく。

 そのときだった。

「あ」

 二年生の先輩が言った。

 ノートパソコンを見ている。

「メール来てます」

 私は反射的に顔を上げた。

「どこから?」

 会長の先輩が聞く。

 先輩は画面を見ながら言った。

「メモリア・コード」

 その言葉で、生徒会室の空気が少し変わる。

「ほんと?」

「はい」

 先輩が画面を開く。

 私は席から少し身を乗り出した。

 画面の差出人。

 Memoria Code Official

 間違いない。

「読みますね」

 先輩が言う。

 生徒会室が静かになる。

「先日はご連絡ありがとうございました――」

 落ち着いた声で読み上げる。

「文化祭ライブの件につきまして、いくつか確認させていただきたいことがあります」

 先輩は画面をスクロールする。

「まず、会場の広さとステージの設備について」

「音響設備の有無」

「演奏時間の予定」

 生徒会の何人かがメモを取り始めた。

「あと」

 先輩が少し目を細める。

「観客の人数の想定」

 会長の先輩がうなずく。

「なるほど」

「ちゃんと確認してるな」

 先輩が続きを読む。

「これらの条件が問題なければ、出演について前向きに調整できる可能性があります――」

 そこまで読んだとき、生徒会室の空気が少し動いた。

「可能性ありますね」

 誰かが言う。

「だな」

 会長の先輩がうなずく。

 私はノートの上でペンを握っていた。

 胸の奥が、少しだけ落ち着かない。

「体育館の設備ってどうでしたっけ」

 綾香が言う。

「音響はある」

 二年生の先輩が答える。

「去年のダンスイベントでも使った」

「観客人数は?」

「体育館なら結構入る」

 会長の先輩が資料をめくる。

「椅子並べれば数百は入る」

「立ち見入れたらもっとですね」

 そんな会話が続く。

 私はそのやり取りを聞きながら、ノートに小さくメモを書いていた。

 音響。

 観客。

 演奏時間。

 もし本当にライブになったら。

「返信作ろう」

 会長の先輩が言う。

「設備の詳細送る」

「はい」

 先輩がキーボードに手を置く。

 体育館の広さ。

 音響設備。

 ステージサイズ。

 文化祭のスケジュール。

 そういう情報をまとめていく。

 生徒会室の中は、さっきまでより少しだけ真剣な空気になっていた。

「これで大体いいかな」

 先輩が言う。

 会長の先輩が画面を確認する。

「うん」

「大丈夫そう」

 マウスが動く。

 送信ボタンの上で止まる。

「送ります」

 カチッ。

 クリック音が響いた。

 それでまた、生徒会室はいつもの空気に戻っていく。

 書類の整理。

 文化祭の話。

 ペンの音。

 窓の外を見ると、夕方の光が少しずつ薄くなっていた。

 私はノートを閉じながら、さっきのメールのことを思い出していた。

 メモリア・コード。

 サウズ。

 文化祭ライブ。

 まだ決まったわけじゃない。

 でも、その言葉が頭の中で何度も浮かんでいた。

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