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トーノブユース  作者: ふなつさん


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38/49

第十一話①

次の日の朝。

目が覚めた瞬間、昨日のことが一気に頭に戻ってきた。

「……あ……」

天井を見つめたまま、動けない。

夢じゃない。

ちゃんと現実。

週刊誌。

記者会見。

家に来たちと。

お父さんとお母さん。

全部、ちゃんと起きたこと。

「……はぁ……」

小さく息を吐く。

少しだけ、重たい体を起こす。

スマホを見る。

通知は、相変わらず多い。

でも、昨日よりは少し落ち着いてる気がする。

……気がするだけかもしれないけど。

画面を開くの、ちょっと怖い。

でも。

逃げたくない。

ゆっくり、ロックを解除する。

SNSを開く。

トレンド。

まだ、ある。

《サウズ》

《メモリコ》

《熱愛》

でも。

昨日より、言葉が少し変わってた。

《記者会見》

《高校生カップル》

《配慮を求める声明》

「……」

スクロールする。

いろんな意見。

応援してる人。

批判してる人。

面白がってる人。

ぐちゃぐちゃ。

でも――

《ちゃんと説明してて好感》

《守ろうとしてるのが伝わる》

《そっとしてあげてほしい》

そういう言葉も、ちゃんとあった。

「……よかった……」

ぽつりと呟く。

全部が敵じゃない。

それだけで、少し救われる。

そのとき。

――ピロン。

メッセージ。

「……ちと」

反射的に開く。

《おはよう》

いつも通りの一言。

それだけで、少しだけ安心する。

《おはよう》

すぐに返す。

《体調大丈夫か》

《うん、大丈夫》

《そっちは?》

少し間が空く。

《ちょっと忙しい》

だよね、って思う。

会見のあとだし、

絶対いろいろあるはず。

《でも平気》

《ちゃんと落ち着いてきてる》

その一言で、

少しだけ肩の力が抜ける。

《よかった》

《学校は?》

「……あ」

その言葉で、現実に引き戻される。

学校。

今日から、普通にある。

「……どうしよう……」

小さく呟く。

行きたくない、って気持ちが一瞬よぎる。

でも。

行かなきゃ。

逃げたくない。

《行くよ》

そう打つ。

少しだけ、指が震える。

《……無理するな》

すぐに返ってくる。

《何かあったらすぐ言え》

その言葉が、すごく安心する。

《うん》

短く返す。

《終わったら連絡する》

《ああ》

それだけで、会話は終わる。

でも。

それで十分だった。

スマホを置く。

「……よし」

小さく呟いて、立ち上がる。

怖い。

正直、すごく怖い。

でも。

昨日、ちゃんと決めたから。

逃げないって。

ちとと、一緒にいるって。

洗面所に行く。

鏡の中の自分を見る。

少しだけ、顔が固い。

「……大丈夫」

自分に言い聞かせる。

深呼吸。

一回。

もう一回。

「……行こう」

小さく言って、

私は部屋を出た。

――玄関。

靴を履く。

ドアノブに手をかける。

一瞬、止まる。

外に出たら、

何が待ってるか分からない。

でも――

「……いってきます」

声に出す。

後ろから、お母さんの声。

「いってらっしゃい」

その一言で、

少しだけ背中を押された気がした。

ドアを開ける。

冷たい空気。

冬の朝。

一歩、外に出る。

心臓が、どくんと鳴る。

それでも。

私は、そのまま歩き出した。

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