第五話④
ステージの確認が終わる頃には、校庭はだいぶ暗くなっていた。
さっきまで人がたくさんいた場所も、今は静かだ。
ステージの周りには、まだ機材が置かれている。
黒いカバーのかかったスピーカー。
照明のスタンド。
明日ここでライブがあるなんて、まだ少し信じられない。
「よし」
会長が言う。
「最終確認終わり」
副会長がうなずく。
「ステージ周り問題なし」
顧問の先生も言う。
「今日はここまででいいだろう」
生徒会のメンバーが少しほっとした空気になる。
綾香が小さく言った。
「やっと終わった」
「だね」
私も息を吐く。
一日中動いていたから、さすがに少し疲れた。
会長がこちらを見る。
「坂城、近藤」
「はい」
「明日は昼頃からステージ横待機」
「分かってるな」
「はい」
私と綾香はうなずく。
ライブのサポート。
それが私たちの役目だ。
副会長が言う。
「メモリア・コードの到着は三時」
「裏門から入る」
私はメモを見ながら確認する。
明日のスケジュール。
もう何回も見たけど、念のため。
会長が最後に言った。
「今日はもう帰っていい」
「明日に備えて休め」
「おつかれ」
「おつかれさまでした」
校舎を出る。
夜の学校は少し静かだった。
文化祭の装飾がそのまま残っているから、なんだか不思議な感じがする。
昼間はあんなに賑やかだったのに。
「明日香」
綾香が隣を歩く。
「明日だね」
「うん」
文化祭二日目。
そして——
メモリア・コードのライブ。
「楽しみ?」
「うん」
正直に答える。
綾香が笑う。
「だよね」
私は少しだけ空を見た。
夜。
少し冷たい空気。
明日、この学校に。
あのバンドが来る。
「明日香」
「うん?」
「サウズ」
「うん」
「どんな人なんだろうね」
私は少しだけ考える。
歌声しか知らない。
顔も知らない。
でも。
「きっと」
「すごい人だと思う」
綾香が笑う。
「ファンの意見」
「まあね」
校門まで歩いてきた。
ここで綾香とは帰る方向が違う。
「じゃあまた明日」
「うん」
「文化祭二日目」
「がんばろ」
綾香が手を振る。
私はそれを見送る。
家に帰る道。
今日はなんだか少し静かだった。
でも頭の中では、ずっと同じことを考えている。
明日。
メモリア・コード。
そして。
サウズ。
文化祭二日目が、もうすぐ始まる。




