第五話②
生徒会室に入ると、もう何人か集まっていた。
「坂城、近藤」
会長が顔を上げる。
「おつかれ」
「おつかれさまです」
私と綾香は席に座る。
机の上には文化祭のパンフレットと、進行表。
副会長が言った。
「今のところ大きなトラブルなし」
会長がうなずく。
「来場者も多い」
「いい文化祭になりそうだ」
私は少しほっとする。
文化祭って、始まるまでは本当に大丈夫かなって思うけど——
始まると、案外ちゃんと回る。
「坂城」
「はい」
「午後は校庭の巡回頼む」
「分かりました」
「近藤は?」
「私も一緒でいいですか?」
綾香が言う。
会長がうなずく。
「ああ」
「二人で回ってくれ」
「了解です」
生徒会の仕事を少し片付けてから、私たちは校庭に向かった。
外に出ると、にぎやかな音が一気に広がる。
焼きそばの匂い。
音楽。
笑い声。
屋台みたいな模擬店が並んでいる。
「文化祭って感じ」
綾香が言う。
「ほんとに」
私はパンフレットを見ながら歩く。
迷子とか、トラブルとかがないか確認するのが生徒会の役目。
でも今のところ特に問題はなさそうだ。
そのとき。
「明日香!」
声が飛んできた。
振り向くと、クラスメイト。
「お化け屋敷めっちゃ並んでる!」
「ほんと?」
「今三十分待ち」
「そんなに?」
綾香が笑う。
「成功じゃん」
「明日香も来てよ」
「あとで行く」
私は笑って答えた。
巡回が終わったら、少しくらい行けるかもしれない。
クラスメイトが去っていく。
綾香が言った。
「人気だね」
「うん」
「よかった」
校庭をぐるっと一周して、生徒会室に戻る。
時計を見ると、もう午後。
文化祭一日目は順調に進んでいた。
会長が言う。
「おつかれ」
「どうだった?」
「問題なしです」
副会長がうなずく。
「いいな」
「このまま何もなければ助かる」
会長が資料を見ながら言う。
「明日が本番だからな」
私はその言葉に少しだけ反応する。
明日。
文化祭二日目。
そして——
メモリア・コードのライブ。
副会長が続ける。
「明日は来場者ももっと増える」
「ライブ目当ても多い」
会長が言う。
「だから今日のうちに確認しておく」
紙を机に置く。
「ステージ周り」
「警備」
「整理券」
「全部もう一度チェックする」
「坂城、近藤」
「はい」
「お前たちは明日、ステージ横」
「分かってるな」
「はい」
私はうなずく。
綾香も「了解です」と言った。
そのあとも、生徒会の仕事は続いた。
気づけば外は少し暗くなり始めている。
文化祭一日目はもうすぐ終わり。
私は窓の外を見る。
校庭ではまだ人が歩いている。
楽しそうな声。
笑い声。
でも——
頭のどこかでは、ずっと考えている。
明日。
メモリア・コード。
そして。
サウズ。
あの歌声を、生で聞く日が来る。




