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トーノブユース  作者: ふなつさん


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第四話⑤

放課後。

 教室の窓の外は、少しだけオレンジ色になり始めていた。

「よし!」

 教室の真ん中で誰かが声を上げる。

「こんなもんじゃない?」

 みんなが一斉に周りを見る。

 段ボールで作った通路。

 黒い布のカーテン。

 赤いペンキで描いた手形。

 そして入口の看板。

 恐怖の廃病院

 綾香が腕を組んで言う。

「結構いいじゃん」

「思ったより怖い」

 クラスメイトが笑う。

「俺ここ入りたくない」

「お前が作ったんだろ」

 教室の中は、なんとなく達成感みたいな空気になっていた。

 文化祭前日の準備は、ほぼ終わり。

 あとは明日の朝、少し調整するくらい。

「明日香」

 綾香がこっちを見た。

「生徒会行くんでしょ?」

「あ、うん」

 私は時計を見る。

 そろそろ集合の時間だ。

 文化祭前日。

 生徒会は最終確認の会議がある。

「じゃあ先行くね」

「了解」

 綾香が言う。

「私もあとで行く」

「うん」

 私はカバンを持って教室を出た。

 

 廊下はまだ賑やかだった。

 文化祭前日だから、どのクラスもまだ準備している。

 ペンキの匂い。

 ガムテープの音。

 笑い声。

 なんだか学校全体が少し浮かれている感じだ。

 

 階段を降りて、生徒会室へ向かう。

 ドアの前まで来て、軽くノック。

「失礼します」

 中に入る。

「坂城」

 会長が顔を上げた。

「来たか」

「おつかれさまです」

 生徒会のメンバーがだいたい集まっている。

 机の上には資料。

 文化祭のタイムテーブル。

 そして——

 ライブの進行表。

「坂城」

 副会長が言う。

「放送原稿持ってきてるか?」

「はい」

 私はプリントを渡す。

 文化祭当日の校内放送。

 開会式の案内。

 注意事項。

 ライブの告知。

 いろいろまとめてある。

 副会長がざっと目を通す。

「問題ないな」

 私は少しほっとした。

 そのとき。

 ドアが開く。

「遅れた」

 綾香だった。

「近藤」

 会長が言う。

「ちょうどいい」

 綾香は私の隣の席に座る。

「明日香、もう始まってた?」

「今から」

「セーフ」

 会長が机を軽く叩く。

「じゃあ始める」

 生徒会室の空気が少し引き締まる。

「文化祭前日、最終確認」

 会長が資料をめくる。

「まず全体スケジュール」

 文化祭は二日間。

 土曜日と日曜日。

「問題は二日目」

 副会長が言う。

「メモリア・コードのライブ」

 部屋が少し静かになる。

 やっぱり一番大きいイベントだ。

 会長が続ける。

「当日の流れをもう一度確認する」

 紙を机の中央に置く。

「メモリア・コード到着」

「午後三時」

「裏門から入る」

 私はうなずきながらメモを見る。

「坂城、近藤」

「はい」

「二人はステージ横」

「進行サポート」

「分かりました」

 私と綾香は同時に答えた。

 会長が続ける。

「整理券チェックは校庭入口」

「警備は先生と外部スタッフ」

「メンバーの正体は絶対に知られないようにする」

 綾香が小さく言う。

「狐の面のままだよね」

「ああ」

 副会長がうなずく。

「校内でも外さない」

 メモリア・コード。

 正体不明のバンド。

 ライブでも狐の面をつけている。

 だから私たちも——

 顔は見れない。

 ちょっと残念だけど、それがメモリコだ。

 会長が資料を閉じた。

「以上」

「何か質問あるか」

 少しだけ沈黙。

 誰も手を上げない。

 会長がうなずく。

「よし」

「じゃあ今日はここまで」

 私は小さく息を吐いた。

 文化祭。

 いよいよ明日。

 そして——

 メモリア・コードのライブも、もうすぐだ。

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