第3話 漆黒の怪物── 壊れた現実とサニワの世界
※和風×現代ファンタジーです。
突然後退りをする鉄喜。
「あ...ああ....」
「ん?どうしたんだ?実はビビってたんか?」
翔は、鉄喜の視線が自分ではなく、その“背後”に向いていることに気づいた。
「あ...あれだよ!」
「なんだよ!」
翔は、ゆっくりと振り返った。
「……は?」
翔の背後には、5メートルはあろう漆黒の怪物が立っていた。
赤く光を放つ目、鳥のような嘴、凄まじい力を感じる体躯には4本の腕が生え、黒い霧のようなモヤがかかる。
境内の木々の隙間の空を全て覆い尽くすほどの大きな漆黒の翼を広げると、灰のようなモノが舞い落ちた。
「カッ、カラスの化け物!?」
夢だと疑うほどの衝撃に、翔は動けなくなった。
「霧島、見えるか、お前にも...」
「あ...ああ、見えてる....」
その声を聞き、上を見上げていたその赤い目が、動けなくなっている翔をギロリと見下ろした。
「我ノ姿ガ見エルカ、サニワアアァァァァ!!」
怪物は、割れたノイズ音のような鼓膜をつん裂くような声で叫ぶ──
「しゃっ、喋った!?...さっ、さにわ?....」
「サニワ……人間ハ...マタ同ジ過チヲ繰リ返スカ」
「こいつ、何を言ってんだ...一体、なんのことか...全く...。だっ、誰か!」
「グオォォォォ!貴様ラノ責任ダ、罪ヲ償エッ!!」
黒く巨大なカラスのような怪物は、体の芯が震えるような大きな重低音で叫ぶと、その巨大な翼を翻した──
「ぐあっ!」
風圧で翔の体が吹き飛び、後ろにいた鉄喜に衝突した。
「どっ、どうする、霧島。オレ、足が震えちまって...。」
「どうするって...やるしかねえだろ...」
逃げなきゃ──
翔の中から、そんな感情すら吹き飛んでいた。
「やるって、お前!あんなのに勝てるわけねえだろ!」
「サニワ....ツイニ神ニ牙を向ケルカ!」
実体があるのか、ないのか、わからないほど漆黒に染まった怪物の体躯。
すぐ横に立つ神社の木よりも太く見える4本の腕。
まるで勝てる気などしなかった──
「どうする、考えろ、考えろ...どうする」
必死に突破口を見出そうとする翔に、怪物はまた意味不明なことを叫んだ。
「神ヲ欺イタ罪──死デ償エ!」
黒い怪物が右腕を高々と掲げると体を覆っていた黒い霧がその手に集まり、大きな槍を形作った。
「やっ槍!?そっそんな、反則...」
「フン!」
怪物に放られたその槍の先は翔の頬をかすめ、鉄喜の胸に突き刺さった。
「ぐふっ...」
鉄喜に刺さった黒い槍はすぐに霧となって怪物の右手に戻り、鉄喜はそのままうずくまるように倒れた。
「鉄喜いぃぃぃ!!」
「次ハ、貴様ダァァァ!」
再び怪物の右手に形成された槍の切先が翔に向けられたその時、翔の心臓が大きく脈打った。
──ドクン!
「なんだ...オレの体...」
翔の目は血走り、さらに激しく心臓が脈打ちはじめ、全身の血管が赤く浮き上がった。
「あっ、熱い....」
翔は断末魔のような声を上げ、やがて全身の力が抜けたように両腕をだらんと垂らし、立ったまま動かなくなった。いつしか浮き出た血管は元へ戻り、赤い紋様のような跡だけが全身に残った。
「フン、マヤカシダッタカ」
怪物は、動かなくなった翔めがけ、容赦なく槍を突き立てる。
しかし槍が届く寸前、怪物の眼前から翔の姿が消えた──
「...ナニッ!?」
目にも止まらぬ速さで懐に飛び込んでいた翔は、とんでもない跳躍力で飛び上がり、怪物の光る赤い目めがけて拳を叩き込んだ──
「グアアッ...キッ、貴様、マサカ...ワイルドブラッド...」
しかし、翔はそのまま意識が遠のき、力が抜けその場に倒れた。
「コイツハ危険ナ、サニワダ。ココデトドメヲ刺シテオカネバ...」
再び怪物は大槍を高く掲げた。
その時、一筋の光が怪物の前を横切った──
「チッ!」
その光を見た怪物は舌打ちをするとたちまち黒い霧となって姿を消した。
翔は、目の前に現れた金色の光が自分の顔の周りを飛び回り、やがて消えていくのを遠のく意識の中で見つめていた。
「....とんでもねえ...誕生日だ....」
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