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第28話 晴れ渡る青空の如く

 鉄喜の肩が細かく震えていた。


「まさか俺が......翔を......」


力が抜け膝をついてしまった鉄喜は戦意を消失した。


「なんで......なんでこんなやつを庇うんだよ......オレ......オレは......」


目の前の光景が揺れ、鉄喜は思わず地面に手をついた。


 三重は翔を刺した短刀を拾うと鉄喜の首に突きつけた。


利蔵は天を仰いで口を震わせた。


「三重......すまない。オレは......間違──」


三重は短刀を振り上げた。


「あなたも翔のところに行きなさい!」


 その時、倒れていたはずの翔は三重の短刀を持つ腕を掴んだ。


「な、何!?」


 顔に赤い紋様を浮かべた翔は、目を閉じ深い息を吐いた。


「はぁぁ、鉄喜よぉ。てめえ、余計なことしやがって」

「翔......」

「てめえのおかげで、随分気分が良くなっちまったぜ。体の奥底から、とんでもねえ力がみなぎってきやがる」


 翔は三重の腕を離すと、膝をつく鉄喜の前に立ち、腕を抱えて立たせた。


「ほら、立てよ」

「翔......お前」

「鉄喜よぉ、お前のおかげでオレ気づいたわ。オレが大事にしなきゃいけねえもんってのにな。......ありがとな」

 

 翔の胸の中はかつて無いほど澄み渡り、怒り、悲しみ、孤独、焦り......今は、何一つ曇りがない。

 心なしか、翔の顔に浮かんだ赤い紋様が薄くなっている。


 翔は、三重の方に向き直った。


「アンタはオレの記憶に残ってる母ちゃんじゃねえ」

「翔、何を言ってるの!私はあなたの母さんよ!」

「クソババァ......オレは今からお前を殺す。オレの親友を傷つけたんだ......覚悟は出来てるよなぁ?」

「あなた、母親に向かってなんて口の聞き方するの!」

「翔、オレのこと......今......親友って」


──怒りでもない。

──悲しみでもない。

──晴れ渡る青空のような爽快な気分で


「──貴様をぶっ飛ばす!!」


音葉は、涙を流しながら、叫んだ


「翔くん!やってええええぇぇぇー!!


「くたばれええええぇぇ!!」


──


 周囲の空間が吸い込まれるかのような翔の正拳突きが三重の腹を貫き、その衝撃波はその後ろに立つ音葉を吹き飛ばした。


「グギャアアアアァァ!!」


 その瞬間、三重の姿は怪物に変わり、そのまま黒い霧となって消滅した──


 翔はその様子を確認して安堵の息をついた。

「......よかった。母ちゃん......」


 鉄喜は天に拳を掲げ叫んだ。

「よっしゃあああぁぁぁぁ!!これが霧島翔!!オレの親友だああぁぁぁ!!」


 利蔵は尻餅をつくかのように座り込み、天を見上げた。


「翔......鉄喜くん。君たちは......大したもんだ、ハハ」


 蘭は翔に駆け寄り、抱きついた。


「翔くん!死んじゃうかと思ったよぉぉ!!うえーん!」

「離せ、バカ女......」

「エヘ!」


 道心は倒れた音葉に駆け寄った。

「音葉!!音葉!!」

「へへ......おじいちゃん......翔くん達......頑張ったよ」

「ああ、お前もよお頑張ったわい......自慢の孫じゃ......」


 利蔵は、音葉と鉄喜に向かって頭を下げた。


「音葉ちゃん、ありがとう。鉄喜くん、ありがとう」


 いつしか月夜は終わり、晴れ渡る青空が境内の彼らを照らしていた。


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