【完結】『第40話 追放宣告。俺は英雄を降ろされた』:第1部完結
契約システムの破壊から数日後、王都に激震が走った。
英雄レオンに下されたのは、王国からの永久追放という重い処分。
ヒロインたちとの別れ、そして荒野への旅立ち。
栄光の第一部がついに幕を閉じ、名もなき土地での新たな物語が始まろうとしている。
英雄レオン・シュヴァルトの追放裁判が、今始まろうとしていた。
王宮大広間の空気は、鉛のように重い。
豪華なシャンデリアの下、床には昨日まで煌めいていた契約水晶の残骸が砕け散り、まだくすぶる白い煙が立ち上っている。
玉座に座る王は怒りで顔を真っ赤に染め、その隣の宰相は顔面蒼白で震えていた。
「シュヴァルトよ!汝の不始末により、我が王国の威信は地に落ちたのだ!」
王の怒声が響く。
広間に集まった貴族や兵士たちが、レオンに冷たい視線を向けている。
レオンの隣に控えていたセレスティア、リリアン、ミーナが、一斉に弁明しようと声を上げた。
「陛下!この件は…!」
「不当な裁きです!」
「レオン様は悪くありません!」
しかし、王は彼らの言葉には耳を傾けず、ただ冷酷な視線をレオンに突きつけた。
英雄剥奪と、レオンの諦念
王が、冷たい光を放つ銀の剣章を差し出す。
それは、レオンが英雄となった証そのものだった。
「もはや英雄シュヴァルトは、我が王都に不要。その剣章を返上せよ!」
レオンは苦笑しながら、深くため息をついた。
「やっぱりこうなったんやな…。あんたらの気持ちもわからんでもないわ」
左右から宮廷兵がレオンに詰め寄り、彼の胸から乱暴に銀の剣章を剥ぎ取った。
さらに、英雄の証である煌びやかな鎧までもが、次々と剥ぎ取られていく。
レオンの姿は、たちまちただの男に戻った。
その時、レオンは心の中で呟いた。
(英雄を降ろされる痛みよりも、俺のせいでこんなに悲しい顔をさせてしまう、みんなを見る方がよっぽど堪えるわ…)
追放宣告と、ヒロインたちの絶望
王は立ち上がり、厳かに告げた。
「シュヴァルト、汝をこの王都より永久追放とする!二度とこの地を踏むことを許さん!」
宰相が追放証書を掲げ、その決定が確定したことを示した。
その瞬間、ヒロインたちの表情にそれぞれの想いが溢れ出す。
セレスティアは、王の決定が絶対であることを知っていながらも、レオンの隣に駆け寄ろうとして騎士に制止された。
「陛下、これは王家の血筋に対する冒涜ですわ!このような裁きは、決して未来の繁栄には繋がりません!」
彼女の声は震えていた。
普段の優雅さを失い、必死に訴える姿は痛々しかった。
リリアンは怒りに震え、王を睨みつけた。
「この不当な追放は、必ず未来に禍根を残します!レオンをこのような形で辱めたこと、後悔させてやるわ!」
その瞳には、復讐への炎がギラギラと燃えている。
そして、ミーナがレオンに飛びつこうと、一直線に走り出した。
兵士が慌てて制止しようとするが、ミーナはそれを振り払い、レオンの胸に飛び込む。
「レオン様を一人にしないでください!私も一緒に追放されます!」
兵士たちがミーナを無理やり引き離そうとすると、彼女は涙を流しながらも、大声で叫んだ。
「レオン様を放っておけません!レオン様の居る場所に、私は行きます!」
しかし、ミーナは兵士たちに取り押さえられ、レオンから引き離されていく。
その顔は、初めて見るほど絶望に歪んでいた。
リゼは、レオンの騒動を監査官として報告した立場上、何も言うことができなかった。
ただ、静かに目を伏せ、震える声で呟くのが精いっぱいだった。
「……申し訳ありません…」
レオンはそんな彼女たちを優しく見つめ、静かに首を振った。
「みんな、ありがとう。でも、これでええんや」
旅立ちの馬車と、新たな決意
城門の外には、一台の黒い馬車が用意されていた。
レオンは、壊れた水筒と、使い込まれたスコップが入った、小さな麻袋を肩に担いでいる。
「これより王都より出でし英雄は、ただの追放者となる…」
兵士の声が、広場に響き渡る。
レオンは静かに歩き出し、城門をくぐり抜けた。
門を出る直前、彼は一度だけ振り返り、王都の空を見上げて苦笑した。
「英雄の物語は、ここで終わりや」
馬車は、王都を離れ、荒野へと進んでいく。
窓の外に広がるのは、生命の気配すら感じられない荒れ地。
遠くには、かすかに村の廃墟が見える。
レオンは、馬車の揺れに合わせて、懐から壊れた水筶を取り出した。
過去の栄光の象徴だったそれは、今やただのガラクタだ。
レオンは水筒をそっと捨てようとして、思い留まった。
「…まぁええ。剣はもう要らん。この水筒は…思い出や」
彼はスコップを握り直した。
「スコップ一つで、やり直したる」
レオンはもう一度、荒れ地を見つめた。
「この物語は、ここで終わりちゃう。農夫としてなら、まだ立ち上がれる。俺はこれで終わりやない!」
王都に残された想い
レオンが去った王都では、ヒロインたちがそれぞれ動き出していた。
リゼが宰相に密かに接触していた。
「宰相様。レオン様が去った今、この国の魂律はより危険な状態にあります。彼が唯一の解決策でした。…わたくしに、ログの監査権限を最大限まで拡大する許可を頂けませんか?」
リリアンは、別の場所で王都の有力な貴族たちと接触し、レオンの追放が王家にとってどれだけ不利益かを説いていた。
「皆さん、英雄を追放した王の決定は、いずれ我々貴族の権力をも揺るがすでしょう」
そしてセレスティアは、王宮の自室で、レオンに渡すはずだった手紙を握りしめ、静かに涙を流していた。
「あなたがいなくても、わたくしは…」
彼女の言葉は、最後まで続かなかった。
ミーナは自室で泣き続けていた。
侍女たちが心配して声をかけても、彼女は窓の外、レオンが去った方角をただ見つめ続けている。
「レオン様…どこにいらっしゃるの…」
新たな物語の始まり
その荒れ地が、やがて"第49領地 スットコランド"と呼ばれることを、この時の俺はまだ知らなかった。
ざまぁ格言:
「剣を奪われても、土を耕す自由は奪えん。…そして、土を耕す英雄は、誰にも止められへん」
ついに第一部完結ですわ!
レオンの追放、ヒロインたちとの別れ、めちゃくちゃ切なかったですね。
特にミーナの「一緒に追放されます!」は書いてて泣きそうになりました。
でもこれで終わりやありません!次回からはいよいよ第二部「スットコランド編」が始まります。
荒野に捨てられたレオンが、どんな新しい仲間と出会って、どんな村を作っていくのか。
契約システムに縛られた英雄から、自由な土の民へ。
剣を捨ててスコップを握ったレオンの新たな冒険、楽しみにしててください!
王都のヒロインたちとも、きっといつかまた会えるはず。
それまでは、スットコランドでの新生活を一緒に見守ってくださいね。
読んでくれて、ありがとうございます!
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