『第37話 全ログ保存されてた件』
隣国との戦争が終結し、平穏が訪れたかに見えた王都。
しかし、レオンの契約問題は複雑化の一途を辿っていた。
そんな中、戦雲編で離れ離れになった元仲間が、思わぬ立場で再び現れる。
久々の再会は、しかし誰もが予想しなかった形となった。
隣国カザリナとの戦雲が晴れ、ようやく安堵の空気が王都を包み込んでいた。
レオン・シュヴァルトは、グラスに注がれた水を傾けながら、心の中で「やっと平和が…」と呟いた。
騎士団長や兵士たちの「推し活」騒動も一段落し、今日は何も起こらないはずだ。
その時、部屋のドアが音もなく開いた。
入ってきたのは、質素な商服に身を包んだ見覚えのある女性だった。
その表情は以前より硬く、手に持った水晶には複雑な契約文書が浮かんでいる。
部屋に重い沈黙が落ちた。
「…リゼ」
レオンが呟くように名前を口にすると、ヒロインたちも一斉に振り返った。
「リゼさん…お久しぶりですわね」
セレスティアがよそよそしく声をかける。
「監査官って、そういうことなの?」
リリアンが複雑そうな表情で問いかけた。
「リゼさん、お元気でしたか?」
ミーナだけが素直に喜んでいるが、場の空気に気づいていない。
リゼ・ヴァルシュタインは一瞬、懐かしそうな表情を見せたが、すぐに無表情に戻った。
「…皆さんも、お変わりなく」
彼女は軽く頭を下げ、改めて口を開いた。
「ヴァルシュタイン商会の監査官として参りました。シュヴァルト殿の"契約履歴監査"を開始いたします」
レオンが首をかしげる。
「お前、戦雲編の間どこおったん?」
「裏で戦雲の"ログ整理"をしていました」
リゼが淡々と答えると、ミーナが素直に感心した。
「お疲れ様でした!大変でしたでしょう?」
「…カットされましたけど」
「カット前提!?」
会場に微妙な空気が流れる中、レオンが苦笑いを浮かべた。
「監査官か…随分と出世したんやな」
「…そう見えますか?」
リゼの声には、僅かな苦さが混じっていた。
契約監査セッション① 懐かしい記録の再生
リゼは表情を引き締め、魔法水晶を起動した。
すると、水晶からUI風の半透明なスクリーンが浮かび上がり、過去の映像が再生される。
しかし、最初に表示されたのは意外なログだった。
【第21話~第26話:リゼ → 表示OFF】
【理由:戦雲編に不要と判定】
【復帰条件:契約監査必要時】
「表示OFFて何やねん!? RPGのパーティメンバーか!?」
レオンが叫ぶと、セレスティアが冷静に呟いた。
「……制作都合というやつですの?」
「運営の采配ね。よくあることよ」
リリアンが肩をすくめる中、リゼは無表情のまま答えた。
「監査官ですから。システム仕様です」
「いやシステムの問題ちゃうやろ!」
レオンのツッコミを無視し、リゼは本題に入った。
「まず、シュヴァルト殿の契約状況を確認いたします」
【契約履歴:第20話】
王都の宮廷。レオンが貴族たちに向かって「俺は関係ない!」「俺は逃げる!」と連呼している映像が映し出される。
「…懐かしいですわね、あの頃の英雄様」
セレスティアが皮肉めいて呟く。しかし、リゼは映像を見つめたまま答えた。
「この時点で、シュヴァルト殿は『英雄契約』と『逃亡願望』という相反する契約を同時に締結されています」
「ちょっと待てや、逃亡願望って契約なんか!?」
「神域法第347条により、強い意志は自動的に魂契約として登録されます。…あの頃、私がお伝えしていた通りです」
【発言音量:MAX】
【矛盾度:危険域】
リリアンが眉をひそめた。
「リゼ、あなた昔はもっと…」
「職務中です」
リゼの冷たい返答に、部屋の空気がさらに重くなった。
契約監査セッション② 変わってしまった関係
リゼは次の記録を淡々と読み上げる。
【契約履歴:第27話~第28話】
王都の裏門から脱走を試みるレオンが再現され、続いてヒロインたちに向かって「もうまとめて嫁にしていいか?」と叫んでいる映像が流れる。
ミーナが赤面しながら「あの時は…」と呟きかけたが、リゼは機械的に続けた。
「ここで新たに『三重婚約契約』が発生しています。しかし既存の『独身願望契約』との間に重大な矛盾が…」
「リゼちゃん」
レオンが昔の呼び方で声をかけると、リゼの手が僅かに震えた。
「…ヴァルシュタイン監査官です」
「そんな堅苦しい言い方、昔はせえへんかったやろ?」
「昔は…」
リゼが口ごもる。その隙に、水晶に契約書の文字が赤く点滅した。
【警告:契約条項抵触】
【婚約契約数:3件】
【独身願望:継続中】
【魂的負荷:限界値接近】
「昔は、私もまだ甘かったんです」
リゼが小さく呟いた。
緊急事態:契約破綻の危機
リゼの表情が初めて僅かに曇った。
「実は、シュヴァルト殿の契約状況は…あの頃から予想していた通り、前例のない複雑さになっています」
【現在の契約総数:47件】
【相互矛盾契約:23組】
【破綻リスク:87%】
セレスティアが息を呑んだ。「47件って…」
「このままでは72時間以内に『契約破綻』により、シュヴァルト殿の魂が消失する可能性があります」
レオンの顔が真っ青になった。「消失って、死ぬってことか!?」
「いえ、存在そのものが無かったことになります」
その言葉に、ヒロインたちも慌てふためいた。
「そんな、それは困りますわ!」
「レオンがいなくなるなんて!」
「英雄様、どうすれば…」
リリアンが立ち上がってリゼに詰め寄った。
「あなた、何か方法を知ってるんでしょう?昔みたいに、レオンを助ける気はないの?」
リゼは目を伏せた。
「私は…監査官です。個人的な感情で判断を曲げるわけには…」
昔の絆と現在の立場
レオンが静かに立ち上がった。
「リゼちゃん。俺らが一緒におった時のこと、忘れたんか?」
「忘れるわけ…」
リゼの声が震える。
「でも、あの頃と今は違います。私には職責があって…」
「職責って、俺を助けることやったんちゃうんか?」
その言葉に、リゼの目に涙が浮かんだ。
「…一つだけ、解決策があります」
レオンが身を乗り出す。「何や、教えてくれ!」
「『契約統合』です。全ての契約を一つにまとめ、矛盾を解消する方法…しかし」
リゼは一瞬、昔の表情に戻った。
「統合後のシュヴァルト殿は、現在とは別人格になる可能性があります」
会場に重い沈黙が落ちた。
「別人格って…俺が俺じゃなくなるってことか?」
「その通りです。ですが、それ以外に…」
その時、リゼがレオンにだけ聞こえるような小声で呟いた。
「…72時間あれば、昔みたいに、一緒に別の方法を見つけられるかもしれません」
レオンが「えっ」と息をのむ。
「ただし、私の報告書提出を遅らせる必要があります。ヴァルシュタイン商会の規定違反になりますが…」
彼女の瞳に、昔の温かさが戻っていた。
「契約専門家として、そして…昔の仲間として、これほど複雑な事例を簡単に諦めるのは悔しいのです」
再び手を取り合って
リゼは立ち上がり、改めて宣言した。
「シュヴァルト殿、72時間の猶予を差し上げます。その間に契約の整理方法を見つけてください」
「でも、どうやって…」
「それは…」
リゼは振り返ると、微かに昔の笑顔を浮かべた。
「昔みたいに、一緒に考えましょう。たとえ規定違反になろうとも」
セレスティアが安堵の息を漏らした。「やっと、昔のリゼさんが戻ってきましたわね」
リリアンも笑顔を見せる。「そうよ、これでこそリゼだわ」
ミーナが嬉しそうに手を叩いた。「みんな一緒ですね!」
リゼが扉の前で立ち止まり、最後に付け加えた。
「契約には必ず抜け道があります。それを見つけるのが、私たちの仕事でしたから」
リゼが去った後、レオンは仲間たちを見回した。
「72時間で契約整理か…でも今度は一人やない」
その瞳には、諦めではなく希望が宿っていた。
ざまぁ格言:
「契約は縛るものではない。仲間と共に突破口を見つけるためのパズルである。」
はい、リゼちゃんが帰ってきました!
久々の再会やったけど、最初はお互い気まずかったですね。
でも最後は昔の仲間に戻れてよかったです。
戦雲編でリゼの出番なくてすまん!編集の都合や!でも帰ってきたから安心してな!「表示OFF」システムまで作って、メタネタに走ってしもた。
72時間の時間制限で、今度は昔のチームが復活して契約問題に立ち向かいます。
懐かしのメンバーでどんな解決策を見つけるか、楽しみにしててください!
次回からは本格的な契約解析編が始まりますよ~。
読んでくれて、ありがとうございます!




