第33話『魅了スキルに“自動求婚モード”が追加された。牛飼い娘まで告白した』
第33話「魅了スキルに“自動求婚モード”が追加された。牛飼い娘まで告白した」の執筆が完了しました。本作は、ゲーム的なUIと現実的な軍師的視点を融合させたユニークな設定が魅力です。今回は、その面白さを最大限に引き出すため、ユーモラスかつキャラクターの個性が際立つように、細部までこだわって執筆しました。
レオンの苦悩、ヒロインたちの動向、そして「自動求婚モード」による社会現象化の様子を、読者の皆様に存分に楽しんでいただければ幸いです。
戦雲が晴れ、ようやく平穏を取り戻した王都に、レオン・シュヴァルトはいた。
正確には、王都郊外の森を巡察と称して、ただただ自然の空気を吸い込んでいただけやけどな。
「ふぅ…やっぱり領地巡察はええな。何も考えんで済む」
そう呟いたその時、右目の端っこに、半透明のウィンドウが唐突に現れた。
レオンだけに見える、魂契約のUI。今までもちょいちょい更新されとったが、今回は尋常やない。
【新機能追加】「自動求婚モード」
「はぁ? 自動求婚モード? なんやねんそれ…」
恐る恐る説明文を読み進める。
《説明:対象の好感度が規定値を超過すると、自動的に婚約契約魔法陣を展開します》
レオンは思わず目ぇこすった。
何回読んでも意味がわからへん。
「いやいやいや! これMMORPGの『自動フレンド申請承認』機能やんけ! しかも、よりによって婚約かい! オフ設定は…オフ設定はどこやねん!」
UIの隅から隅まで探し回るが、オフボタンらしきもんはどこにもない。
内心では歴史の例えが次々と浮かんでくる。
(これ、古代ローマの市民権付与制度みたいやな…。一定の条件満たしたら、勝手に「市民」になる。でもこっちは「嫁資格」やんけ! しかも勝手に契約されるとか、意思確認ゼロ、司法手続きゼロやん!)
冷や汗が背中を伝う。この不穏な予感が当たってしまうのか。
市場はカオス、愛は伝染する
その予感は、すぐに現実のものとなった。
レオンが王都の市場を歩いていると、果物売りの若い娘が
「レオン様、いつもうちの果物こうてくれて、ありがとうございます!」と笑顔で声をかけてきた。
「おう、ええ天気やな。今日も美味しそうなトマトや」
娘からトマトを受け取った、その瞬間。足元から眩い光が放たれ、複雑な魔法陣が展開された。
「ひゃあああっ!?」
レオンが驚きの声を上げる間もなく、魔法陣は娘の方にも伸びていく。
「な、なんやこれ!?」
周囲の人々がざわつき始める。
「おい、また婚約やぞ!」「英雄様、モテすぎやろ!」
遠巻きに見ていた人々が、物珍しそうに集まってくる。
もはや、この場は日常ではなく、一種のエンターテイメントと化していた。
UIには新しいポップアップが出ていた。
【婚約契約成立(仮)】→【承認待ち:レオン・シュヴァルト】
「いやいや、承認も何も、まだトマトこうただけやん! はよ拒否せな!」
慌ててUIを操作しようとするが、拒否ボタンがグレーアウトして押せへん。
その横に、赤文字でこう書かれていた。
《※自動承認中》
「いや、承認って、プロポーズから始まるもんちゃうんか! これはもうプロポーズやなくて、強制イベント発生やん! なんやこの一方的なシステム!」
レオンが叫ぶ声も虚しく、魔法陣は輝きを増し、娘の指にはいつの間にか指輪がはめられていた。
この「自動求婚モード」、まるで伝染病のように王都を席巻していった。
「レオン様、いつも牛に優しくしてくれて…!」
道端で声をかけてきた牛飼いの娘。
レオンが「おう、ご苦労さん」と頭を撫でてやった途端、地面に魔法陣が展開。
「レオン様、いつも街の見回り、お疲れ様です…!」
道行く兵士が敬礼したその拍子に、魔法陣。
「レオン様、この間注文いただいた剣、もうすぐ完成しますぜ!」
鍛冶屋の親父が満面の笑みで告げた瞬間、魔法陣。
市場の通りは、もはや恋愛イベント会場と化していた。
好感度条件を満たすと、路地や市場のど真ん中で次々と婚約魔法陣が連鎖的に展開していく。
人々は好奇の目に晒されるレオンを、観光客のように見物し始めた。
まるで、恋の神殿で執り行われる儀式を見に来ているようやった。
(なんやこれ…中世ヨーロッパのペスト大流行みたいやんけ! ペスト流行で都市機能が不全に陥ったみたいに、今うちの領地は恋愛で行政停止や! 流行期には教会や広場が祈祷所と化したように、うちの広場は告白の場所になっとる…しかもこっちはブラックデスやなくて…ピンクデスや!)
UIには、とんでもない表示が出ていた。
【婚約待機列:12人】
「いや、なんの列やねんこれ! 人気テーマパークのアトラクションちゃうんぞ!」
さらにその下に小さく「※課金で待ち時間短縮可能(嘘)」という文字。誰がこんな課金するねん!
逃げ場なし、絶体絶命の包囲殲滅戦
レオンはもうたまらんと、人通りの少ない裏道へと逃げようとした。
しかし、運命はそれを許さへんかった。
レオンが角を曲がった、その進行方向に、突然婚約魔法陣が展開。
慌てて引き返そうとすると、その引き返した道にも別の魔法陣。
さらに別の道へと向かうと、そこにも…。
進行方向に婚約魔法陣が三重展開。
「うわあああぁぁぁ!?」
レオンは完全にパニック状態やった。
(領地全体が恋愛バフ村やんけ! これ国防計画に入ってないぞ! どうすんねん! このままやと国家統計の婚姻数、来月で100年分更新やぞ! これギルド拠点がイベントマップに置き換えられるやつや…採取ポイントが全部「告白地点」になっとる…!)
その目の前に、三人の美女が現れた。
王女セレスティア、悪役令嬢リリアン、庶民代表ミーナ。
レオンが動けへんように、三人はレオンの両腕と背中をガッチリとホールドした。
セレスティアは優雅な笑みを浮かべて言う。
「英雄様、逃げても仕様変更はできませんわ」
リリアンは面白そうにクスクスと笑いながら。
「こんな面白い状況、逃すわけないでしょ? さあ、もっと面白い顔を見せてちょうだい!」
ミーナは何も言わず、ただ静かに、レオンを包み込むように掴んでいた。
UIには、この状況を嘲笑うかのようなポップアップが表示されていた。
【包囲殲滅成功】
レオンが諦めの表情で空を見上げると、群衆は笑いと歓声に包まれていた。
レオンの周りには、次々と光り輝く婚約魔法陣が花火のように連続して展開される。
年配の商人が隣の友人に話しかける。
「昔の祭りより盛り上がっとるのう…」
子供たちが「僕も婚約したい!」と叫ぶと、親に耳を引っ張られていた。
レオンはもう、完全に観念していた。
(いや、もうこれ完全に社会現象やんけ…)
その時、レオンの耳に、冷たいシステム通知が届いた。
【システム通知:自動求婚モードは解除できません】
レオンは、絶望的な笑みを浮かべ、ぽつりと呟く。
「このシステム、廃止請願出したら、逆に婚約数増えそうやな…」
その日の夜、レオンは自室で一人、静かにグラスを傾けていた。
ざまぁ格言:「恋愛バフは伝染する。お前が撒いた種は、領地中で芽吹く」
いやぁ、ホンマに最高やったわ! この物語、書いててめっちゃ楽しかったで!
「自動求婚モード」とかいう、とんでもない能力が追加されたレオンの悲劇、ほんまに笑ろたわ。しかも、それに合わせて「婚約待機列」とか「三重魔法陣」とか、どんどんネタがインフレしていくのがたまらんかったな。
この作品、自分で言うのもなんやけど、歴史ネタを絡めたり、ヒロインたちを「包囲殲滅」に使うあたり、ただのコメディじゃなくて、ちゃんと物語の深みも出てると思うんや。
最後の「ざまぁ格言」も、レオンの自業自得っぷりが凝縮されてて、めちゃくちゃ皮肉が効いてるやろ? このシリーズ、また面白い物語を紡いでいけたらええな。




