第26.5話『勝利の余韻と、システムの悪戯』
【勝利の宴、しかし】
カザリナ軍を打ち破った翌日。
エルグレイス王国軍の野営地は、まだ勝利の熱狂に包まれていた。
兵士たちは昨夜から続く酒宴で上機嫌だったが、俺――レオン・シュヴァルトだけは、違和感を覚えていた。
「おかしい……」
俺は司令部のテントで、戦利品として押収した書類を整理していた。
前世のサラリーマン時代に身につけた事務処理能力が、ここでも役に立つ。
だが、その時だった。
突然、視界の端に見慣れない光が点滅した。
【システム通知】
重要:ギルド制度更新のお知らせ
メンテナンス完了につき、一部機能が変更されております
「……は?」
俺は目を擦った。幻覚か?それとも疲労による錯覚か?
だが、その光る文字は確実に俺の視界に浮かんでいる。
【詳細を確認しますか? Y/N】
「何だこれ……まさか、異世界にもシステムが……?」
恐る恐る「Y」を選択すると、さらに詳細な画面が展開された。
【謎のシステム画面】
【エルグレイス王国ギルド管理システム ver.2.7】
■ 更新内容
- 婚姻契約システムが追加されました
- 魂共鳴機能が実装されました
- 感情波検出機能が有効化されました
- ※本機能は古代セレスティア王朝の魔法技術を復元したものです
■ 現在の登録状況
- 対象者:レオン・シュヴァルト
- 候補者:3名検出済み
- 魂共鳴率:セレスティア王女(94%) リリアン(87%) ミーナ(91%)
- 選抜戦開催予定:明日 10:00より
「待て待て待て!何だこのふざけたシステムは!?」
俺は慌てて画面を消そうとしたが、どこを押しても消えない。
それどころか、新たな通知が次々と表示される。
【緊急通知】
王城より正式な婚約選抜戦の開催が決定されました
理由:戦勝記念、および王国の安定化のため
参加拒否:不可
「不可って何だよ!?俺に選択権はないのか!?」
【セレスティア王女の思惑】
その頃、王城では。
セレスティア王女が、父である国王と密談を交わしていた。
「父上、レオン様の功績は目覚ましいものがあります。彼のような人材を王家に迎え入れるべきではないでしょうか?」
「うむ……確かに、あの若者の戦術は見事だった。だが、セレスティア、お前まさか……」
「はい」王女は頬を染めながら答えた。「レオン様に、心を奪われてしまったのです」
国王は苦笑いを浮かべた。
「そうか……では、正式な婚約選抜戦を開催しよう。古い伝統に従い、魂共鳴による選抜を行う」
「ありがとうございます、父上!」
セレスティア王女の喜ぶ声が、城中に響いた。
【リリアンとミーナの参戦】
同じ頃、外交官のリリアンは、この情報をいち早くキャッチしていた。
「王女殿下だけに、美味しいところを持って行かれてたまりますか!」
彼女は鏡の前で髪を整えながら、決意を新たにしていた。
「レオン様の真の価値を理解しているのは、この私よ。戦術の天才には、外交の専門家こそがふさわしいわ」
一方、メイドのミーナは。
「レオン様……」
彼女は掃除用具を握りしめながら、小さくつぶやいた。
「お側で、お仕え続けたいのです……」
【俺の絶望】
翌朝。
俺が目を覚ますと、テントの外が騒がしかった。
「何事だ?」
外に出ると、兵士たちが興奮した様子で話し合っている。
「軍師殿の婚約選抜戦だって!」
「王女殿下が参加されるらしいぞ!」
「おい、他にも候補者がいるって話だ!」
俺の血の気が引いた。
「マジかよ……夢じゃなかったのか……」
再び、あのシステム画面が現れる。
【本日のスケジュール】
10:00 - 選抜戦開始
11:00 - 魂共鳴テスト
12:00 - 最終選考
13:00 - 婚約発表
※逃亡は検出次第、強制送還されます
「逃亡まで監視されてるだと!?」
俺は頭を抱えた。桶狭間では勝利したが、今度はもっと恐ろしい戦場が待っているようだ。
「戦術で勝てる敵じゃないぞ、これは……」
システム画面が、まるで俺を嘲笑うかのように点滅している。
【婚約選抜戦まで、残り2時間です】
俺は慌ててテントに戻り、緊急事態用のExcelファイルを開いた。
「逃げ道を計算するしかない……!」
だが、その時。
【システム警告】
Excel使用が検出されました
婚約選抜戦への影響を排除するため、一部機能を制限します
「Excelまで封じられた!?」
俺は絶望した。
戦場では無敵の軍師も、恋愛戦場では完全に無力らしい。
「くそ……これが、アルベリヒの言っていた『遊び』なのか……?」
遠い空の向こうで、何者かの高笑いが聞こえたような気がした。
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次回予告:第27話『最終嫁選抜戦、開幕。俺は逃げる準備を始めた』
今日のざまぁ格言:
『戦場で勝利しても、システムには勝てない』




