第3話
「誰?」
彼女が俺に問いかける。
「1組の滝沢湊だ。」
少しの間を置いて、
「で、私に何か用?」
いつもの玲奈から考えられないような、
冷たい声と口調だった。
「いや、こんな時間に何してんのかなって。」
すぐに核心に触れるには気が引けたため、
とりあえず当たり障りのないことを言った。
「どうせ、私が何をするのか気になったんでしょ?
さっきすれ違ったから。」
まさか彼女からそれに触れるとは。
しかも、すれ違ったことに気づいていたらしい。
「よくお分かりで。せっかくこっちがすぐには
触れないようしたのに自分から触れるとはな。」
少し嫌味っぽく言ってみる。
心配している感じが出るとかえって彼女を
苦しめる気がしたから。
「無駄な時間をかけないため。」
淡々と玲奈が言う。
「そうですか。...んで、みんなの憧れの会長様は
こんなところで何をするおつもりだったんですか?」
俺はいやなキャラを演じ続けた。
「飛び降りようと。」
またしても玲奈は淡々と言葉を発する。
「そう、でも...」
「君も周りと同じように死ぬなって言うんでしょ?」
さっきよりも語気を強めて、俺に被せるように言う。
(やはりこういう人に死ぬなと言っても無意味か...)
それならばと、俺はどこまでも悪役ムーブを
することに決めた。
「俺が止めるとでも思った?一応体裁を保つために
止めたって事実を作りたかっただけなんだよね。」
玲奈はすこし面食らった顔をしていた。
ただすぐに暗い顔に戻ってしまった。
「死にたきゃどうぞご自由に。」
俺に促されて死ぬのは嫌だったのだろう。
「もういい、今日は帰る。」
彼女は足早に屋上から去ろうとする。
「あんたの覚悟はその程度なんだ?」
煽るように俺は言う。
この発言が彼女の逆鱗に触れらしい。
「あんたに...何がわかるっていうの?」
彼女が怒鳴る中俺は内心ガッツポーズをしていた。
よし、食いついた、と。




