3話 メイドを作る前に星くんには恥を味わってもらいます
「そんなに褒められても困りますよ!」
何、嬉しそうにしてるんだよ、褒めてないから!
「ヴィーナス様、お願いの件に話を戻しましょ!」
このままじゃ、ずっとからかわれて終わる。
話が進まない。
「ふふ、そうですね。揶揄うのは後にしましょうか。残り2つのお願いですが、時間はかかりますが異世界にはいけます!」
「えっ、本当ですか?」
思わず前のめりになっていた。
異世界、冒険、美少女、夢みたいなワードが頭を駆け巡る。
でも、ヴィーナス様の一言が頭に引っかかっていた。
「ヴィーナス様、なんですぐにいけないんですか?」
「それは、星くんの最後のお願い。メイドさんを用意するためです」
「メイドって……そんなに時間かかるんですか?」
「ふふ、星くん……」
ヴィーナス様の表情が、すうっと変わる。笑顔のまま、少しずつ近づいてくる。
「私は誰よりもメイドに詳しい女神です。
なので中途半端なものは絶対に出しません。
完璧で最強、理想を具現化した美少女メイドを私が責任を持ってプロデュースします」
いや、なんでそんな本気なんだよ。
神様なのに、メイド制作にこの熱量……
「ヴィーナス様、もしかして……メイド好きなんですか?」
「大好きです♡」
即答だった。笑顔に迷いがない。
……神の中で一番って、どこからその自信が来るんだろう。
「ヴィーナス様、ありがとうございます。
でも、そこまでの愛があるならあんまり時間かからないんじゃ——」
「はぁ……もう。
好きなキャラって、パパッと作ります?
星くんもキャラメイクで1週間も時間をかけてましたよね?身長とか髪型が違うってずっと悩んで!お胸のサイズだけは一瞬で決めてましたけど」
「ま、待って待って、なんでその情報知って——」
「ルナちゃんでしたっけ?星くんが作ったキャラ」
あの光景を見られてた……?
一気に背筋が冷たくなる。
「ええ。太ももとお尻の調整で1日潰したのは驚きでしたよ。お尻と太ももそんなに好きなんですか?」
「あの、もう、や、やめて……っ!」
動揺して一歩下がった俺を、ヴィーナス様がすっと掴んできた。
「逃げちゃダメですよ? 星くん。もっと、あなたの理想を教えてください」
距離が近い!目が合う、視線を逸らせない。手汗がやばい。
「……キャラメイクに時間がかかるのは分かりましたから、あの、このことは誰にも言わないでください……」
「うふふ、大丈夫です。わかってくれたなら、秘密にしておきます」
ようやく手を離してくれたヴィーナス様は、満足そうに微笑んだ。
……この人、ほんとに神様?なんで俺のキャラメイク姿まで覗いてたんだよ……!
「さ、星くん。黄昏れてないで、始めましょ?」
「え……何をするですか?」
「あなたの旅を彩るメイドさんのデザインです。
見た目は?性格は?服装は?さあ、星くんの性癖をた〜っぷり詰め込んだ最高の子を、一緒に作りましょう?」
「ちょっ!言い方!なんでそんな恥ずかしい言い方するんですか!?」
「え?分かりやすい表現だと思ったのですが……?」
「いや、だからってっ……!」
こうして女神ヴィーナスと朱野星による、理想と業が詰まりすぎたメイドメイクが始まった。