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2話② ヴィーナス様のドSスイッチ入りました

残りの願い……そうだよ、凹んでる場合じゃない!


「俺、イケメンになれるんですよね?」


期待の眼差しを向けると目の前の彼女は目を瞑って言った。


「いえ無理ですね」


え、嘘だ……そんなのって


「そうだ、イケメンじゃなくてもハーレムはできる!ですよね?ねぇ!」


「……無理ですね」


その言葉に棒立ちになる。

イケメンもハーレムも無理、重要な願いが2つもだめ……嘘でしょ?


「な、ならお金持ちにはしてくれますよね?」


藁にも縋るように目の前の女神にすがる。

そんな俺にヴィーナス様は優しく語りかけるよう聞かせた。


「いいですか星くん?最初からお金持ちって、見てる私がつまらないんですよ。……なのでダメでーす」


バッテンポーズをとりながら言った。


は?今なんて……「見てても私が楽しくない」って言ったの?いや俺は楽しいよ!ふざけんなよ!なんであんたを楽しませなきゃいけないんだよ。しかもなんだよ、そのちょっとイラッとくるポーズは!

この女神様、いや、ヴィーナスに一回立場をわからせないといけないなこれは!


そう決意し、目の前のヴィーナスを見つめると

目を細め、口元を歪め悪魔のように微笑んでいた。


「星くんにできるんですか?立場をわからせるなんて」


忘れてた、心を読めるんだった!

そんなことで弱気になるな、かましてやれ!


「で、できますよ!さては、びびってるんだヴィーナス?」


目の前の女神の雰囲気が変わり、その空間がとてつもなく冷たく重い空気になる。


「へぇ〜、では、どうぞ!

倍返しでやり返される覚悟はあるんですよね」


え、何、これめっちゃ苦しいんだけど

てか、倍返しって何?あれ、俺の膝が笑ってる?


ヴィーナス様の放つプレッシャーに完全に怯えながら質問する。


「ヴィーナス様、そのですね倍返しとはどんな内容ですか?」


「様なんかつけないで呼び捨てでいいですよ?

そうですね、例えば、つい先日、女性経験がないことに悩んで行こうと———」


ヴィーナス様の言おうとした言葉を途中で遮った。


「お、俺が悪かったです。ちゃんと敬いますから!」


今まで漂っていた冷たく重たい空気が無くなった。

許してもらえたか……?


ヴィーナス様を見ると肩を少し震えさせながら笑っていた。


「ふ、ふふ、冗談です。

星くんは、イケメンにならなくても良いじゃないですか?そのままのお顔で充分ですよ?」


え、それって……

美の女神的に俺って……イケメン?


嬉しくなり顔を合わせようとするとすっと逸らされた。


「ちょっと!なんで、顔を逸らすんですか。

まだ何も言ってませんよ!こっち見てください」


わかってたよ、イケメンじゃない事ぐらい


本当になりたかった……

クールで爽やかで甘いマスクの細マッチョになりたかった。


ガックリと肩を下ろす。


「そんな落ち込まないでください。今回可愛い反応に免じて、許してあげますから、でも次はないですよ?」


「……次、やったらどうなりますか?」


ヴィーナス様は顎に手をやりながら答える。


「そうですね星くんの物語をダビングしてるので

一緒に黒歴史の鑑賞会でもしましょうか?」


ダ、ダビング……久しぶりに聞いた。

この女神様って結構、歳とって、いや神様だから普通か、歳っていくつなんだろう1億とかそんな感じか?


冷たくなった瞳が俺をじっと捉えていた。


「星くん、見えてますからね?それと私は、そんなに歳はとっていません。……本当、不敬な子ですね?今からでも始めましょうか、鑑賞会?」


そんな地獄の鑑賞会なんて絶対やりたくない


「すみませんでした。

もう、考えるのやめるのでそれだけはやめてください」


「はぁ〜、まったく、次はないと言ったばっかりなのにいいですか?仏の顔も3度までですからね?」


いや、ヴィーナス様、仏じゃなくて神様じゃん


「み・ま・す・か?」

「もう、心の中は勘弁してくださいよ!

反射的に出て来るんですから」


「じゃあ、ちゃんと気をつけてください!」


そんな無茶苦茶な、できるわけないじゃん


「頑張ってください」


ダメだ、もう、話さなくても会話が続いてしまう……まって、そう言えば!


「なんで俺のこと見てたりダビングして保存してるんですか!」

「なんでって……?趣味だからです♡」


趣味って……どんな趣味だよ!

もしかして、俺のことが好きだっ——


「いえ、違いますよ?」


そんなに、遮ってまで否定しなくていいのに!好きだからイケメンにしてくれなかったんでしょ?え、なにその顔、違うの……?


「……じゃあどうしてですか?」


ヴィーナス様の雰囲気がまたがらりと変わった。怒った時とも違う、絶対的に逆らえない女王様の雰囲気を纏っていた。


目の前の女神は左手で顎をなぞり、右腕でその肘を抱えるようにして、恍惚と上から見下ろしてきた。


ゾワッとした。


今まで感じたことのない空気に冷や汗をかく。

怒ってるわけじゃない……なにか触れてはいけないものに触れてしまったそんな感じだ。


「ふふ、少し圧をかけるだけで、やっぱり可愛い……私、君みたいな情けない男の子の恥ずかしいところを見るのが趣味なんですよ。

ダビングは、どういう時に使うかさっき言いましたよね?鑑賞会用ですよ♪」


何も言えなかった。

そうだ、この女神は会ってからずっとドSだ。


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