16話 おはようございます、星です……朝起きたら動けません
おはようございます……星です。
朝起きたら、声も出せず体も動きません……星です……
なぜか……隣でヴィーナス様も寝ています……
とても気持ちよさそうに寝ています……
最初はとても驚きましたが、こんなベッドの端っこに動けないようにされているってことは間違いも何もなさそうです。
そんなことよりも……聞いてください。
———星です……。トイレに行きたいとです……
………………
ねぇぇぇぇぇぇ!?
や……やだ、もう……お漏らしネタはもう昨日やったじゃん……!?ヴィーナス様、起きて……
ほら、起きて……!可愛くてイケメンな男の子が隣で起きるの待ってるよ……!……起きて!
動くことも、喋ることもできない星はヴィーナスに精一杯、心の中で必死に訴えかける。
この女神全然起きない……。
おい…起きろ、起きろよ……隣に男がいるんだぞ……!?
あんた、昨日俺に好きって言ったじゃん、
おもちゃとしてだけど……
あんなにドキドキさせた男が……
そ、そんな男が隣にいるんだぞ……ほら、起きて……
…………起きてよ、お、……襲うぞコラァァ!!
なんでそんなにすやすや寝れるんだよぉぉぉ? やっぱりおかしいよ、この女神、普通じゃない。
ねぇ、嘘だから、おぉ……おねがい、ほんとに…………
このままじゃ2人ともびしょびしょになります。
……昨日、あんなに楽しくご飯食べたじゃないですか……上映会は恥ずかしかったけど本当に昨日のご飯は一緒に食べれて楽しかったんですよ?
……そ、そんな……相手を流石にびしょびしょになんてできないよぉ……したくないよぉぉぉ……
むりだょぉぉ……!そんなことしたら、もうお嫁にいけない。
………………
———あと10分ぐらいなら耐えれるから。
……いや、むり、うそ、あと5分が限界、起きてよ。
なんで起きないの……!?
……なに……白雪姫なの?
そうなんでしょ……?毒林檎でも食べちゃったのかなぁ……? ほんと、この女神様は可愛いんだから……ほらぁ、キスしてあげるから、起きて?チェリーくんの初キッスあげるから……
星は、キスをしようとするが、身体を動かすことができなかった。
おれ、動けないんだった……
いや、動けてもキスする勇気はないけど、と考えていると——
この女神、寝たままお腹のあたりかきはじめたよ!
お腹をかいたことによって、その拍子に、服の裾がめくれ、白くて引き締まったお腹が目に飛び込んできた。
くそ、視線が離せない、
必死に理性を働かせる。
———おいおい、この女神、服めくってお腹だしたよ……今は、いいよ……タイミングが違うよ……
そういうのはさ、俺が、ヴィーナス様の部屋にいきなり入って偶然、着替えをしてるところに出くわす時のラッキーイベントであって今、じゃない……絶対に今じゃないんだよ……なんでそんなこともわからないかなぁ……?
——美の女神のくせに腹出しながら寝やがって
いいのか…腹出し女神って呼ぶぞ…!
いいんだな……?美の女神の名を汚してやる!
そんなことを思うが、ヴィーナスは一向に起きる気配がない。
お、おねがい……本当に起きて……ヴィーナス様
……………………
おれの、おれの人生終わりだ……もうおしまいだ……一緒に寝ている女の子の隣でお漏らしなんて……こんな事って……グスッ
星の目元から悔しさと情けなさがつまった1滴の雫が流れる。
こんなことになるなら……
昨日ヴィーナス様のシャワーの時に突入していればよかった……。
漏らすより、全然恥ずかしくないし!
目の前で、服がめくれてお腹を露出して寝ている女神を見る。
ヴィーナス様のお腹、綺麗だなぁ……
肌も透き通ってるし、くびれもあるしなんかエッチだ、やっぱり美の女神だけはあるよなぁ……
星は、目の前にいるのが美の女神であることを改めて実感する。
でも、残念だよなぁ……
ヴィーナス様のおっぱい、まな板だ———
突然、下腹部に痛みが走った。
い、いっ……たぁぁ!
ヴィーナス様が蹴った……!?
え、心読まれてた?
焦ってヴィーナス様を確認するがまだ、眠りからは覚めていなかった。
———起きてないな?焦ったぁぁ!
……ってか寝相悪!女神が蹴ったよ、そんなことある……?
それにしても、この動けなくなる魔法?
効果強くない……?いつかけたかわからないけどヴィーナス様が眠ってても効果持続するってことでしょ?
いいなぁ、俺も使えたらな……
俺が使えたら何しようかな。
あえて、喋れるようにするのもいいなぁ……!
俺は、ゆっくり目を瞑り、自分が動けなくなる魔法を使っている姿を妄想した。
———すると、指で音を鳴らしヴィーナス様を動けなくしている風景が思い浮かんできた。
ヴィーナス様は、悔しそうな顔をしている。
「……この私が星くんの魔法にかかるなんて……」
俺は煽るようにヴィーナス様に聞く。
「ヴィーナス様、どうですか?
動けますか?動けませんよね……?」
ヴィーナス様は余裕な表情を崩さない
「……こんな、人間の魔法なんか、すぐに解けますよ。」
「そうですか?それなら大丈夫そうですね……
そろそろトイレの時間だと思ったのですが」
ヴィーナス様は少し焦ったような顔になった。
「女神が……トイレに行くわけないじゃないですか……」
「そうですね、女神様ですもんね?」
俺は、となりにあった水の入った容器を取り、
ゆっくりヴィーナス様に飲ませる。
ヴィーナス様は、嫌がるが身体が動かせない為水を拒むことができない……
「ん、ゴクッ、ほ、星くん、や……やめてください、これ以上は限界です」
「ん?何が限界なんですか、ちゃんと言ってもらわないとわからないですよ?ほ〜ら……」
「そ、それは……」
水を飲ませるのを途中でやめ、星は、ヴィーナス様の目の前から立ち去ろうとする
ヴィーナス様が涙目になりながら訴える
「待ってください……言いますから、もう限界なんです。ト、トイレに……いかせてください。」
星の妄想が終わる。
くぅーー、妄想の中のヴィーナス様さいこう!
おいおい、この魔法やばいな!
こんなことできれば、最高じゃん!
……ぐふ、妄想だったけど必死に懇願するヴィーナス様可愛かったなぁ!
早く、魔法使えるようにならないかな?
なんか、妄想だけど朝から心からスッキリした。
妄想が終わりゆっくりと目を開ける。
———目の前には、今まで寝ていたはずの
ヴィーナス様が目を開け、じっと俺の方を見つめていた。
ヴィーナス様と目が合う。
夢だ……まだ夢の中だ。目の前の現実を受け入れられず、俺はもう一度目を瞑る。
「星くん、おはようございます。
いい朝ですね!」
ヴィーナス様の声が優しい!
あれ、怒ってない?
もしかして、今の妄想もバレてない?
もう一度、目を開けヴィーナス様に視線を合わせる。目を開けると爽やかな笑みを浮かべていた。
「今、お水を持ってきてあげますね?」
ば、バレてるぅぅぅぅ!
妄想が全部、ヴィーナス様に……
いやいや、昨日あんなに仲良くご飯を食べた仲だよ、そ、そんな、まさかね?許してくれるよね……?
水を持ってくると寝ている俺の目の前に腰をかけ
話しかけてきた。
「あえて、動けない相手に喋らせるのがいいんでしたっけ?はい、声を出せるようにしましたよ?」
「……ヴィーナス様、違うんです。トイレに行きたいの紛らわそうと思って妄想———」
ヴィーナス様は途中でセリフを遮り、容赦なく水を飲ませていく。
「ヴィーナ——ゴクッ、ん、ちょっと、ゴクゴクッ……やめてくださいヴィーナス様」
くるしい、やめてよ!
な……なんて顔をしてるんだ、
なんで……そんなに気持ちよさそうな顔ができるの……?
「今の星くん……とっても可愛いですよ?」
悪魔だ、悪魔がいる……
謝らないと……
ヴィーナスの水を飲ませる手が止まった。
今、とにかく謝ってトイレに行かないと!
「ヴィーナス様、不敬なことを考えていたのは謝ります。すみませんでした。」
謝る星を見ると黙ってリビングから出て行こうとする。
はぁ……?なんで!許してくれないの?
「ちょ、ちょっと待ってください、
本当に限界なんです……トイレに……行かせてください。」
すると、ヴィーナス様は振り返って、にっこりと笑いかける。
「星くん、妄想全部、実現しましたね?
立場は、逆ですけど!」
そんなことより、トイレに……
ヴィーナス様は指でパチンと音を鳴らす。
すると、俺は、ズボンとパンツがない状態でトイレの座席にワープしていた。
よかった……間に合った!
あの女神、ワープまでできるのか……
末恐ろしいな……。
朝のトイレを終えドアを出ようとするところで気づく、俺のパンツとズボンが、ない。
まさか、リビングに……
大声でヴィーナス様に声をかける
「ヴィーナス様ーー!
おれのパンツとズボンそっちにありませんかーー」
するとヴィーナス様は扉の前に歩いてきて話しかけてきた。
「ありますよ、どうかしたんですか?」
「いや、どうしたんですか?じゃないんですよ!
服がないと出れないです!」
「大丈夫ですよ、私は気にしません。
そのまま出てきてもらっていいですよ?」
「で、で……できるかぁぁぁ!」
おれは人生で一番大きな叫び声をあげた。
扉の奥でくすくす笑っている声が聞こえる。
「星くん、今日も私の勝ちですね♡」
いきなり、目の前にパンツとズボンが現れる。
「私、朝食はフレンチトーストがいいです。
早く作ってください。星くんの当番ですよ?」
「朝から、ぼこぼこにされた……」
ヴィーナス様との新しい朝が幕をあけた。




