表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

振り向いてはいけない

作者: 颯姫

 今日、私が死んだ。昨日かもそれないけど、まあ、どうでもいいかな。

 三途の川は予想していたような大河ではなくて小川だった。水位も踝くらいだし。歩いてなんなく渡れてしまった。

「迷える仔羊発見〜」

 唐突に聞こえてきたのは軽い、若い男の声。

「それ、あたしのこと?」

 振り向くとそこにいたのは今時の普通の男の子だった。同い年くらいかな?

「そうそう。お嬢さん、君だよ〜。たまにいるんだよね〜。ちょっとぶつかったくらいで死んじゃった、とか騒ぐ子」

 トラックに撥ねられたのはちょっとしたことだったのか。

「トラックに撥ねられたのに、あたし、死んでないの?」

「あ〜それ勘違い。トラックはギリギリ止まって、まあ、軽く君に当たっちゃったけどね」

 ケタケタと笑う。

「でも、あたし、川、渡っちゃった」

「まさか、これが三途の川だと思ってる?これは庭園の飾りみたいなもんだよ」

「じゃあ、あたし、帰れるんだ」

「送るよ」

 少し歩くとトンネルが見えた。ここが黄泉と現世の堺なのらしい。

「真っ直ぐに光を目指して歩くんだ。なにがあっても振り向いてはいけない」

 確か神話にもあったな。そんな約束事。私は出口を目指して、現世への帰り道を進んでいく。

「リサ」

 名前を呼ばれてあたしは振り向いてしまった。さっきの男の子が嗤っていた。

「振り向いたね」

 嬉しそうに嗤う。

「君は帰れない」

「帰れない?」

「僕が君になる、やっと君になれる」

 ああ、そうだ。彼はあたし。もう一人のあたし。1つの体に2つの心。双子で産まれるはずだった、あたしの…。

「バイバイ」

 彼は帰っていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ