第97話 ニヒヒヒヒ
「あ、ここですね」
「……本屋さん?」
「はい。ここに来たかったんです」
僕たちが訪れたのは、ショッピングモール内にある大きな本屋。
普段の僕は、本を買う時、学校近くの本屋にしか行きません。ショッピングモール内の本屋の方が、品ぞろえがいいのは分かっているのですが、行くのに時間がかかりますからね。
「君、何か欲しい本でもあるの?」
「はい。死神さん用の、『鬼殺し』に関する本がないかなと思いまして……」
「…………へ?」
「…………?」
死神さんが、ポカンとした表情を浮かべます。僕は何かおかしいことを言ってしまったのでしょうか?
「えっと……君の行きたいところだよ?」
「はい」
「それで……私のための本を探しに、ここへ?」
「そうですけど……」
「…………」
「…………」
僕たちの間に奇妙な沈黙が流れます。今、死神さんが何を考えているのか、僕にはよく分かりません。僕はただ黙って、死神さんの次の言葉を待っていました。
そして、数秒後。
「……ニヒヒ」
「……死神さん?」
「ニヒヒヒヒ」
一体どうしたことでしょうか。死神さんが、奇妙な笑い声をあげ始めたのです。その顔には、ほんの少し朱が差していました。
「えっと……」
「そっか、そっか! じゃあ行こう! すぐ行こう!」
「ちょ!? 待ってください、死神さん」
これまで以上にテンションの上がった死神さんを追いかけるように、僕は本屋へと足を踏み入れたのでした。




