第93話 ……それをデートって言うんじゃないですかね?
「先輩ちゃん!」
「え!?」
「あ、ど、どうも」
「ええ!? な、何で二人がここに!?」
僕たちを見た先輩の目が驚きで見開かれます。まあ、当然といえば当然でしょう。
「フフフ。今日はたまたまここに来てたんだよ。そんなことより……」
「な、なによ」
「先輩ちゃんは、今からデートなのかなー?」
「んな……!?」
ニヤニヤと悪い笑みを浮かべる死神さん。顔を真っ赤にして焦る先輩。何とも珍しい光景ですね。もうしばらく見たい気もしますが、さすがにそろそろ止めた方がよさそうです。
「えっと……あんまり先輩の邪魔になるのもなんですし、僕たちは別の所に……」
「ち、違うから!」
僕の言葉を遮るように、先輩が声を張り上げます。周囲にいた人たちが、何事かとこちらに視線を向けるのが分かりました。
「デ、デートとかじゃなくて……。そ、そう。こ、これは、あくまで交流というか……二人でのお出かけというか……」
「……それをデートって言うんじゃないかな?」
「……それをデートって言うんじゃないですかね?」
「黙ってて!」
「「あ、はい」」
いやはや。焦っていても、先輩の強気の姿勢は健在ですね。
「と、とにかく、デートってわけじゃ……」
先輩が再度弁明を始めようとした時でした。
「お待たせ―。……って、その人たちは?」
突然、僕たちの真横から声がしました。顔を向けると、そこには、今まで見たことのない人が立っています。ナチュラルショートの茶髪。ニコニコとした表情。そして、百人に聞けば百人が「イケメン」と答えるほどの整った顔立ち。
「……え!? 女の人!?」
僕の横で、死神さんが小さく呟くのが聞こえました。




