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ねえ、君、死ぬ前に私と将棋しようよ  作者: takemot
第3章 僕の知らない死神さん
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第88話 やった!

「うーん。生姜焼き弁当……チキン南蛮弁当……むむむ」


「決まりました?」


「ちょ、ちょっと待ってて。決める。すぐ決めるから」


 あの後、僕たちは、晩御飯を買うためコンビニに来ていました。本当なら、すぐに帰宅して食事を終わらせ、二局目の対局を始めるつもりでした。ですが、先ほどから、死神さんが弁当売り場から動いてくれません。本人曰く、「この後の対局で勝つために、ちゃんとした将棋飯を選ばないと!」らしいです。プロの対局に影響されたのでしょうか。最近では、プロが昼食休憩で何を食べたのかが注目されることも多いですからね。


「どっちも捨てがたいなあ。このコンビニの生姜焼き、おいしいって聞くんだよね。けど、タルタルソースも食べたい気分だし……」


 あ、これ、ダメなやつですね。


「……そんなに迷うなら、二つ買って、僕と半分ずつ食べますか?」


 呆れながらそう提案してみる僕。すると、死神さんの顔が、勢いよくこちらに向けられました。注がれたのは、おもちゃをもらった子供のようなキラキラとした視線。


「君、天才すぎるよ!」


「……ハハハ」


 どうして乾いた笑いが出てしまうのでしょうか……。


「よーし。早く帰ってご飯食べた後は将棋だね。次は負けないよ!」


 二つのお弁当を手に取り、死神さんはレジに向かって歩き始めます。白銀色の髪がフリフリと揺れるその背中を見つめながら、僕は、自分の口角が自然と上がっていくのを感じていました。


 これから、僕は、死神さんとどれだけ将棋を指すことができるでしょうか。どれだけ一緒にいられるでしょうか。今はまだ分かりません。でも……。


「あ、君……」


「何ですか?」


「デザートも欲しいなー……なんて」


「…………」


「…………」


「……はあ。いいですよ」


「やった!」


 僕は望むのです。大切な人が傍で笑っているこの時間が、少しでも長く続くようにと。

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