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ねえ、君、死ぬ前に私と将棋しようよ  作者: takemot
第3章 僕の知らない死神さん
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第72話 ウガー!

「じゃあね。二人とも」


 そう言って、お義母さんは、忽然と姿を消してしまいました。


「…………」


「…………」


 僕と死神さんの間に、奇妙な沈黙が流れます。遠くの方で聞こえる「カー、カー」というカラスの鳴き声が、妙に大きく感じられました。


 きっと、死神さんは、寂しい思いをしているに違いありません。二人が会うのは久しぶりだったようですからね。加えて、「もう少し一緒にいたいな」という死神さんの言葉。会いたい人に会えない寂しさ。一緒にいたいのにいられない寂しさ。それは僕も痛いほど知っています。


 今、僕には何ができるでしょうか。死神さんのために、何か……何か……。


「あの……死神さ」

「ウガー!」


 僕が声をかけようとした丁度その時。死神さんは、両拳を天に突き上げ叫び出しました。僕の体が、驚きでビクリと大きく跳ね上がります。


「し、死神さん?」


「もう! もう! もう! ママったら、いつもいつも私を子ども扱いして!」


 地団駄を踏む死神さん。いつの間にか、「お母さん」ではなく、「ママ」と言ってしまっていることにも気がついていないようです。


「文句を言ってるわりには、お義母さんに撫でられてる時、それほど抵抗してなかったような……」


「…………」


「…………」


「……ソンナコトナイヨ」


 死神さんの片言。聞くのはこれで何度目でしょうか。思わず「ふふっ」と笑みが漏れてしまいます。


「わ、笑わないで。さ、さあ、早く帰ろう。もうお腹ペコペコだよ」


「分かりました」


「あ、食事が終わったら、将棋しようね。今日教えてもらった技で、君に勝っちゃうよ」


「…………そうですか」


「……? どうしてそんなに不機嫌な顔してるの?」


 不思議そうに首を傾げる死神さん。


 ……別に、不機嫌なんかじゃありません。今日、死神さんが、若い男の人と楽しそうに感想戦をしていたのを思い出して、少しモヤッとしただけです。本当に、ただ、それだけなのです。

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