第49話 こんな私を受け入れてくれたんだから
「……部長たちに、託されたのよ。『将棋部を任せるぞ』って」
先輩は、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めました。
去年、将棋部には部員が数名いたようです。ですが、その数名とは、先輩を除き全員が三年生でした。つまり、今年、将棋部の部員は先輩一人だけ。しかも、今のところ、新しい入部希望者はゼロ。先輩の友人に幽霊部員として入部してもらうことで、何とか部としての活動が許され、部室も与えられているそうなのですが……。
「このままじゃいけないって思ったの。部長たちが私に託したのは、ただ将棋部が続いていくことや部室があることだけじゃないのよ。少ない人数でもいいから活動して、大会にも出て、それで……」
握られる拳。噛まれる下唇。小さく震える肩。苦しくて、悔しくて、不甲斐なくて。そんな様々な気持ちが表れているようでした。
「……先輩ちゃんは、卒業しちゃった部長さんたちのことが大好きなんだね」
死神さんが、先輩に向かって優しく微笑みながらそう言います。
「……大好きよ。こんな私を受け入れてくれたんだから」
「……『こんな私』って何ですか?」
僕の質問に、先輩の口から、とめどなく言葉があふれてきました。
「私、今はまだましだけど、小さい頃は他の子に比べてかなり背が低くてね。そのせいで、馬鹿にされることが多かったの。それが嫌で、強気に話すようにしたら、今度は生意気だって言われ出したのよ。学校でもそう。通ってた将棋教室でもそう。どこでも同じように言われた。もう、人との付き合いっていうのが、よく分からなくなって……」
僕と死神さんの目の前で、先輩は、どこか遠くを見つめていました。




