第3話 じゃあ、証拠見せてあげる
「そうですか」
僕がそう答えると、死神さんは目を丸くしました。
「……驚かないの? 普通の人なら、驚くところだと思うんだけど」
「まあ、僕、今から自殺する予定でしたし。死神さんが来るのも納得いきます。そもそもこの部屋、数分前に、ドアも窓も全部締め切ってますし。もしあなたが普通の人だったら、絶対入れないですよね」
「おお、こんなに理解が早い人とは初めて会うよ」
死神さんは、ひどく感心しているようでした。
おそらく、普段の僕なら取り乱していたことでしょう。「不審者!」と叫んで、部屋から飛び出していたかもしれません。ですが、すでに自殺の決意を固めていた僕は、この不可思議な状況を素直に受け入れてしまっていました。
「……ん? いや、待ってください。あなたが本当にストーカーで、ピッキングか何かでこの部屋に入ったという可能性も……」
「い、いやいやいや。さすがにないから」
手をブンブンと振る死神さん。
「でも、あなたが死神っていう証拠はどこにもありませんよね」
「え!? どこからどう見たって死神でしょ」
「……うーん」
「むむ! じゃあ、証拠見せてあげる」
頬を少しだけ膨らませた死神さんは、手のひらを天井に向けて突き上げました。次の瞬間、彼女の手に光の粒が大量に集まり始めます。それは、とてもとても幻想的な光景でした。