天使と悪魔
ちょっとヤンデレ書いてみたくて!
おつまみ程度にご覧ください。
「きゃあっ!」
「おっと。大丈夫?」
「あ、あ、ありがとうございます...」
「ううん。大丈夫だよ。気をつけて。」
「は、はひぃ......」
「きゃあああっ!ユール様かっこいいですわぁぁあああ!本当、天使様ですわぁ!」
「だれっ!あの子誰!あのいい思いした子!!!」
「あの子、ファンクラブの子!?何番!?...324番!あとでどんなにおいがしたか聞かなければ!!」
「やあ、おはよう、みんな。朝から元気そうだね。愛らしい小鳥たちのようだ。」
「きゃああ!もったいなきお言葉っ!記録係!今の言葉丸写ししなさいっ!絵つきで!」
「了解です!会長!」
朝から校門前で行われる恒例行事を、遠くで見ていた女性徒がいた。
プラチナブロンドの髪をなびかせ、ラピスラズリの瞳を声のあるほうにむけ、冷めた目―実際は普通に見ているだけ―で見ていた。
「私には、関係のない世界だわ――」
ぼそっと発せられたその言を聞いたものはいない。
彼女は自分の教室にに足を向け、歩いていった。
はぁ、と誰にも聞こえないほどのため息をこぼす。
今は自分の教室に向かっている途中だ。
私の名前はエリザベス・アーレン。侯爵令嬢です。
お母様譲りのプラチナブロンドの髪と、お父様譲りのラピスラズリの瞳をもって生まれました。
顔はなかなかきつめで、私が一人でいることが多いからか、顔が怖いからか私には悪魔のあだ名がつきました。
...あとは...ああ、そうそう。先ほど校門前で恒例行事の真ん中にいた男性の名前はクリス・ユール様。
爵位は確か...公爵子息様?いや、王子だったかしら?
あまり興味がなくて...確か私よりも爵位?は高かったはずなんですが......え?興味がなくても普通は覚えているだろうって?ええ。そうなんでしょうね。
ですが私、勉強関係のことの記憶力はいいのに、人の名前となると覚えてられないたちなのです。
興味なさ過ぎて。こんな私を貰ってくださるご子息様って、いるのかしら...
ああ、話が脱線いたしました。
ユール様はプラチナよりも輝かしい髪と、空の青をそのまま写したかのような瞳をお持ちの方で、
その爵位と美貌と性格のよさから、周りの皆様からは天使と呼ばれております。
天使と悪魔...ああ、いや、私が比べてはいけない次元の方でしたわ。
ソレはそうと、教室に着きましたわ。
中は...今は話が盛り上がっているようですわ。
私、今は入らないほうがいいかしら...
時間はたっぷりあるし、盛り上がりが収まったら入りましょうか。
そう思い私はいつもの場所へ足を向ける。
私が教室に入らなかった理由は主に二つ。
私が教室に入ると皆様静かになってしまうから...ですかね。
なぜかいつも私が教室に入ると皆様どんなに盛り上がっていようとシーン...となってしまいますの。
盛り上がっているのに、そんなのはお気の毒でしょう?
大方、悪魔が来たから静かになるのでしょうね。はぁ...
私、別にこの顔に生まれたことは後悔しておりません。
だから、気にはしませんが...はぁ。
もう一つは、お気に入りのところで読書ができるから...です。
静まり返った教室で読むのはちょっと...あとなんだか視線が凄いので...
だから、皆様が盛り上がっている時は少しラッキーと思います。
win-winですわよね?
皆様は盛り上がった話をそのまま話し続けられるし、私はお気に入りの場所で本を読めます。
でしょ?
そうこういっている間にお気に入りの場所に着きました。
「はぁ~相変わらずここは空気が澄んでいますねぇ。」
ここは人の通行が少ないし、森が近いので空気が澄んでいます。
よく貴族令嬢たちが香水をがっつりつけてむんむんするのですが、アレってくさくないですか?
よくあんなにつけられますわぁ...
さ、さ。
今日持ってきた本を読みましょうか。
私は木にもたれかかる。
今日持ってきた本は町で噂になっている本で、私が変装をして買ってきたもの。
た、楽しみすぎますわ...!
パラ、と一ページ、二ページ、とめくっていく。
『――王子はいいました。この間の夜会で、僕の心をつかんだまま僕の前からいなくなってしまったのは君だね?...悪い子だ。もうつかまえてしまったから。君はもう逃げられ――』
「何をしているのかな?」
「え?」
真上から声がした。
テノールの声。ちょうどいい声で、聞き入ってしまいました。
じゃ、なくて。
え?え?
だ、誰かしら...?
顔を本からはなし、上を向く。
最初に私の目が捕らえたのは――オリーブの髪。
しかも、とてもさらさら。
風になびいている。
私は思わず手を伸ばしてその髪に触ってしまいました。
「...?!な、なにを...」
「......さらさら...」
本当に手触りがいい。
ずっと触っていたいですわ...
「......あ...も、申し訳ございません!あまりにもさらさらと風になびいていたので、つい...!」
私、今何を...!?
み、未婚の女性が、婚約者でもない相手の髪の毛を触ってしまいましたわ...!
「ああ、いえ。少し驚いただけですから。お気になさらず。......それで、あなたはここで何を?」
「え?あ、私は読書をしておりました...」
「そうでしたか。申し訳ありませんが、ここに少しいてもよろしいでしょうか?」
「あ、はい。どうぞ?」
「ありがとうございます。ああ、自己紹介を忘れていましたね。私のことはスール、とおよび下さい。」
「あ、えっと...私の名前はエリザベス・アーレンといいます。よろしくお願いします?」
「はい、よろしくおねがいしますね。」
もう多分会うことはないだろうけれど...
というかこの顔...よくよく見てみたら誰かに似ている気がしますわ...
ううん?
...あら?今何時でしたっけ?
懐中時計をあけ、みる。
授業が開始されるのが9:00でしたから...
――8:50
あら?あらあら?
まずいですわねこれは...ダッシュでいかなければ...(早歩き)
「あの、申し訳ありません。そろそろ授業が始まってしまう時間になりますので、戻らせていただきます。」
「もうそんな時間でしたか。では、私も行かなければですね。」
「では、またどこかでお会いしましたら。ごきげんよう。」
そういいのこし、早足で教室に向かう。
息を乱してはダメだから、教室が近くなったら少しゆっくりめに歩く。
「失礼いたします。皆様。おはようございます。」
...視線が痛いですわ...
今日も皆様の視線が痛い一日のスタートです。
~~~~~~~
私の名前はクリス・ユール。この国の第一王子であり、王位継承権第一位。
プラチナの髪と空色の瞳をもってこの世に生を成した。
幼い頃から教育があり、講師は厳しかったが得られたものも確かにあった。
幼い頃は自分の気持ちにとても素直で、感情を顔によく出していた。
今となってはいやな感情にも蓋をできるし、長年培った仮面のおかげで私の周りには人が絶えなかった。
私は生まれてこの方、恋を知らない。
学園では良家の御令嬢がわらわらと集まり、私のファンクラブのようなものができているらしい。
いまではこの学校の全員がファンクラブに加入しているらしい。どうでもいいが。
「きゃあっ!」
「おっと。大丈夫?」
「あ、あ、ありがとうございます...」
「ううん。大丈夫だよ。気をつけて。」
「は、はひぃ......」
今日も今日とてご令嬢に優しくする。
そろそろ飽きてきたな。
でも、関係を悪くするわけには行かないから、いつもの仮面をつける。
ふと、目線を感じた。
周りの御令嬢たちの熱い視線ではなく、冷たい、ただそこにいるものを見る視線。
誰だ、と周りを見渡すと、ラピスラズリの瞳にぶつかった。
けどソレは一瞬のことで、その子はすぐ学園の中に行ってしまった。
誰だったのだろうか。
ラピスラズリ、ラピスラズリ...
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