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秋が終わり、冬が始まる頃――
冬の王がその空間に入ると、見えてもいないのに秋の王は勢いよく玉座から立ち上がり振り返った。
「おはよう、フユノ。遅いよ!」
青空のような色の髪を持ち、青色の服を着た秋の王は、ニコニコと嬉しそうに玉座の後ろに回って背もたれに手を置く。
冬の王に早く座れとうながしているようだった。
「アキノ……いい加減、俺を起こそうとするのはやめろ」
冬の王は眉間にしわを寄せて、苛立たしそうに早口で言った。
今回もまた秋の王は、何度か冬の王を起こそうとしてきたのだ。
眠っているときに、「起きてよ、起きてよ」と言いながら何度も体を揺すられるのはとても腹が立つものだ。冬の王が無視しても、怒っても、秋の王は何度もそれをくりかえす。
そのため、冬の王が起きて、秋の王に会ったときの第一声は小言になるのが毎年の決まりごとのようになってしまった。そして、秋の王がそれをまったく気にしないのも決まりごととなっている。
「フユノが遅起きなのが悪いよ。それに、今回はかなり大事な話があったからね。本当はもっと早く起きてほしかったくらいだよ」
冬の王が玉座に座ると、いつも冬の王が頬杖をする肘掛けとは反対の肘掛けに秋の王は腰かけた。
そして、冬の王の顔をのぞきこむ。
「ハルノのところに、お姫さまが来たようだ」
「……なんだと?」
言われた意味が分からず、冬の王は眉間にしわを寄せた。
そんな戸惑いも分かっているように、秋の王は言う。
「ナツノから聞いたときは、僕も何を言われたのか分からなかったのだけどね。王は――僕たちはずっと一人でここにいる。そこに他者がいたことなんてない。それなのにハルノのところに、いきなり少女が現れたらしい」
「それは……どういうことだ?」
四季の王たちは一人で、それぞれの季節を過ごす。それは王たちが存在するようになってからずっと変わることのないものだった。それなのに春に、春の王以外の存在がここに現れるなんて……。
秋の王は少しだけ口の端をあげる。それは笑うのに失敗しているようにも見えた。
「ハルノもそれはどういうことだろうと考えたらしい。それで出た結論が……その姫が、次の春の王――いや、この場合は女王か。次代の春の女王ではないかってことらしい」
「次代の春の女王?」
「つまり獣が子を残すように、植物が種を残すように、世界が次の春を生んだのではないか、と。もっと分かりやすく言うなら、ハルノの子供ってことかな」
「……全然、分かりやすくないだろう。どうして春の王の子供などが生まれる? 獣が子を残すのも、植物が種を残すのも、永遠に生きられない彼らがそうやって自分たちの種族を残すためだろう。だが、俺たちは違う。俺たちはもう永く存在していて、彼らのように死ぬわけでもないのに……」
そこまで言って、冬の王はなにかに気付いた。
それに気付いた秋の王も小さくうなずく。
「そうだよ。僕たちは死とは無関係だと思っていた。でも、今までハルノもナツノもフユノも僕だって、獣や植物のように死なないからそう思っていただけで、そうじゃないのかもしれない。次代の春が現れたということは、つまり……春の王が死ぬかもしれないってことじゃないか。きっと、その姫は春の王に死を与えるために現れたんだよ」




