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異世界へ来たのだから墓守として過ごしてみよう  作者: 東条李禹
現実世界編
2/4

鎖と糸

少し短いですが、頑張って書きました。

最後まで読んでください。



 蓮 奏晴死亡・1年後


 蓮さんが亡くなってちょうど一年が過ぎる。

 今日も俺は家から電車で10分の墓の前に立っていた。俺の日課である。約束である墓守しかっりと行わなけれなるまい。

 死人との約束は切っても切れないような鎖になってしまうこともあるだろうが、俺の場合は真逆。蓮さんと俺の過ごしたあの5日間は脆く短い。鎖どころか糸のごとき約束なのだ。一瞬でも隙をみせれば忘れてしまう。

 人間とは不思議なもので、消えた瞬間には痛みを感じても、次の日には笑えている。切り替えが早いとかではない。そこには人間の本能的なものを感じる。

 話を戻そう。

 俺の日課である墓守の仕事は、主に墓の清掃である。清掃をしてお供え物をして俺の日課は終了する。お供え物には、コーヒーを一杯、必ず供えている。


「黎人くん!朝ごはん、出来たよ」

「はい!今、行きます住職さん」


 この墓の近くにあるお寺の住職さんは俺に親切に接してくれる。朝早くからくると必ず朝ごはんを用意してくれるぐらいに。

 名前は片裏史かたりし 甲子園こうしえん。彼曰く、両親が無類の甲子園ファンだったとか。通りでこの名前。と言っても、本人はあまり気に入っていないらしい。小さい頃から野球をやっていたが、中学の時に辞めてしまったらしい。


「朝からお疲れさん。はい、食べな」

「いつもありがとうございます。相変わらず美味しいです」

「そう言ってくれると嬉しいよ」


 この夏休みの間、俺はずっと同じことを繰り返してきた。

 朝起きる、墓守の仕事をする、朝飯を食う、住職さんの仕事を手伝う、昼のお供えをする、昼飯を食う、水をまく、家に帰る、晩飯を食う、風呂に入る、寝る。

 ここまでパターン化されると、なんだか怖い。


◇◇◇


 いつもの流れを終わらせて帰宅。

 この生活を俺は案外気に入っている。蓮さんには申し訳ないが、俺の人生は少し充実してきているのではないか。

 そんなことを思いながらも晩飯を口に運んだ。


『速報です、ただいま◯◯県△△市で、市のシンボルとも言える、陽陰寺で火災が発生しました。火は未だ消火しきれておらず、近くの墓地にまで燃え広がっています。また火災直前に不思議な人影があったとの情報が入り、放火の可能性を疑われています……』


 テレビの速報ニュースに手を止める。

 陽陰寺。よく知っている寺だ。ついさっきまでいたあの寺が見る見るうちに炎に飲まれていく。

 俺は何も発することなくただその映像を見ていた。最初は悲しみ、次に怒りが込み上げてくる。

 気がつくと家から飛び出していた。間に合うはずもないと、頭では理解しながらも、そうせずにはいられなかった。

 

「せめて墓だけは……墓だけは」


◇◇◇


 結論から言うと、間に合わなかった。

 俺がついた時には、墓も含めて全焼だった。住職さんは消防隊に保護されているようだ。

 込み上げた怒りは明確な憎悪に変わる。


「誰が放火なんかした⁉︎俺と蓮さんの糸を切ったのは誰だ!」


 野次馬に紛れながらも、不審な人影を探す。

 一瞬、ほんの一瞬だが、一人の中年女性と目があった。と思うと、女性は急に目をそらし、身を潜めた。

 

「ちっ、待てババァ!」


 周りの目なんか気にしていられない。温厚な性格であった俺は自分の憎悪に塗れた姿に驚きを隠せない。

 持てる自分の全てを使ってついに女性を追い詰める。


「やっと追い詰めたぞ!ババァ!」

「しつこいガキが!」


 痺れを切らしたのだろう。

 その平凡な服装から出てきたのは鋭利なナイフだった。

 

「え⁉︎」


 反応する間も無く、鋭利なナイフは俺の腹部に突き刺さる。

 痛い。言葉では表せないほどの痛み。

 憎悪が死への恐怖に変わる。直後、蓮さんとの出来事が走馬灯のように頭に広がる。


「あんたが悪いのよ。私は関係ない!」


 そう言い残して、女性はその場を去った。

 意識がだんだん遠のいていく。


 発見された時にはもう手遅れだった。

 





 そして、指田 黎人は新たな人生を迎える。

次回は転生した話では無く、七つの質問について書きます。

お楽しみに!

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