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消えた王女

モンスター図鑑

№001


ぬえ

山に住む怪物。

顔は猿で胴は狸、四肢は虎に尾は白蛇の姿をしている。

成体は知能が高く人語を話せる個体もいたという記録も残されている。

とある地域の伝承によっては神として崇められていた。



[時の王国]の正門に着いたアダスは門をくぐろうとしたら昨日の夜と違う門番に止められていた。


「よそ者が王国に入るには通行書が必要だ。悪いが、ヒック……!通行書を持っていないお前を通すことはできない。ヒック!」


「俺はここの国民だぞ!」


「嘘をつかない方が身のためだぜ小僧。ヒック!」


門番の口から酒の匂いがする。


このオッサン、仕事中に酒かよ。


これ以上話しても無駄だと判断したアダスは正門から離れ、防壁の周りを歩きだした。


確か、防壁のどこかに水門があったはずだが……


アダスが十歳ぐらいの年齢の時に公園にある養殖湖の水門から外の防壁にある水門が繋がっていることを発見した。

そして、水門の鍵をこじ開け中に足を踏み込むところを母のローズに見つかりその場で長い説教をされたことがあった。

なぜ、こんな所まで母がいるのかは見当がつかなかったけど。


説教にこりたアダスはそれから公園の水門に近づくことはなかった。


「おっ、ここだ。よっと……」


ガチャガチャガキンッ!


アダスは水門の扉を刀先でこじ開けて中へと侵入した。


まぁ、ばれなきゃいいよな。


水門の中は王国全域に水を回すための用水路が無数にありその中の一つをアダスは歩いていた。


「・・・キレイだな。」


水路の横にある歩道を歩きながらアダスが呟いた。


「たしか王国の用水路って、何とか五世っていう結構昔の王様が作ったはずたが……古くさくないな。」


目的の水門に着くと、水門の外が騒がしことに気づいた。


王国で何か起こっているのか?


アダスは急いで水門をこじ開け外に出た。


「何だ…?」


アダスの目に飛び込んだのは公園に数多くの祭り屋台があり、国民は水門から出たアダスに気づいていないのか祭り拍子の音楽に合わせて歌い、躍り狂っていた。


………………………………………



~祝え 歌え 踊れ♪今日はありがたい日♪


空の星 太陽 我らの神に感謝せよ♪


あぁ~神様♪あんたは最高♪


国の宝を戻してくださった


我々の大切な王女を


やっぱりあなたは偉いだ♪~


………………………………………


・・・王女が戻った?いったいどう言うことだ?


アダスは歌の意味を知るためにたまたま近くにあった喫茶店に入った。

店内も外の公園と同じような歌が歌われていた。


「・・・・・。」


アダスが店の奥にある椅子に座るとウェイターがやって来た。


「ご注文はお決まりになりましたか?」


「コーヒー…ブラックで。」


「かしこまりました。」


いま気付いたけど、すれ違った一般地域の国民で俺の知っている顔がない…


心の焦りのせいか、無意識のうち指で顎をかいていた。


「お待たせしました。コーヒー、ブラックでございます。」


「おう、ありがとう。」


「では、ゆっくりとおくつろぎください。」


「聞きたいことがあるんだがウェイターさん。」


離れるウェイターをアダスが引きとめる。


外のことについて情報がほしいな。


「はい、何でしょうか?」


「いま外でやっている祭りは何なのか教えてくれないか?」


「お客様はお知りでないのですか?」


ウェイターの顔が驚きの色に染まるが、すぐに営業スマイルに戻った。

プロだな。


「い、いやー。俺は旅の途中でここに寄ったからな…何も知らないんだ。」


「・・・そうですか。」


「せっかくの祭りだから俺も楽しみたいから教えてくれないか?」


「かしこまりました。」


ウェイターがアダスの向かい側の椅子に腰を下ろした。


「旅人様はこの王国の王を知っていますか?」


「レイト王だろ。」


「詳しく言いますと、レイト五世様です。今日はレイト五世様の誕生日でして…」


ん?レイト五世…どっかで聞いたような?


「しかも、今日は誕生日会だけでなく二日前くらいに王国領域外の森に行方不明になっていたていた王女様がお見つかりになりました。見つかった時、なぜか王女は武装だったのは謎のままでしたけどね。」


森で見つかった武装王女か、なんかひっかかるな。


アダスは立ち上がった。


「・・・すまない、急の用事を思い出した。」


「は、はぁ。」


戸惑うウェイターの前に硬貨を置いてアダスは店を出ていった。


信じられないが、森で見つかった王女とはケイトの可能性が…あいつ可愛い顔してるから女、王女に間違わられてたりしてな。

まずは行ってみなくちゃ分からないな。


アダスは一般地域を水路を使って越えて、五等爵達の敷地に入るがここも祭りでアダスが城へと進むことを誰も気にしなかった。

そしてアダスは[時の王国]のシンボルである城の門に辿り着いた。


「何者だ?」


門には二人の国王に直属で仕える騎士団の聖騎士が腰の剣に手をそえて立っていた。


「この王国、王族の区域では見かけない顔だな。旅人か?」


アダスは聖騎士の質問に答えないで言う。


「王女に会わしてくれ。」


「貴様のような汚い旅人に王女が会うわけなかろう!」


甲高い声が耳に響く。


いつの間にか門が開き、黒いマントを羽織った小男がアダスを睨んでいた。


「こ、公爵様!」


二人の騎士が敬礼する。


「えっ、」


こいつが、公爵?


「そこの身分がわからないゲスな小僧を引っ捕らえよ。」


「おっと、待てよ。」


剣を抜いた聖騎士に向かいアダスが刀を抜いて威嚇する。


「やめさいっ!!・・・双方武器をしまいなさい。ここは高貴なる王の城ですよ!」


凛とした声が響き、アダスと騎士の間にある重い空気を打ち砕いた。


「「はっ!」」


「・・・・・・。」


騎士がひれ伏し、アダスも反射的に頭を垂れた。


「こ、これはこれは王女様。」


公爵が態度を変え、うやうやしく王女に頭を垂れた。


「王女、こやつは…」


「公爵殿は黙っていただけませんか。」


公爵は口を閉ざした。


アダスは顔を上げ、声の主である王女を見た。


「・・・・・!」


そこには、ケイトに瓜二つつの顔で気品に満ち美しい王女が立っていた。


「その方から離れなさい聖騎士のお二人。」


「「ははっ!」」


王女の一言で聖騎士がアダスから三メートルも離れた。

いや、離れ過ぎだろ。


「失礼ながらも王女…」


公爵が手を揉みながら目で王女に訴えていた。


「この方は遠い国からやって来た私の古い友人です。公爵、あなたは城にお戻りなさい。」


「・・・く…………。」


公爵は悔しげにアダスを一睨みすると黙って城の中へと消えていった。


「さぁ、シルバは私の後について来なさい。」


誰も動かないのを見てアダスは王女が自分のことを呼んでいることを理解した。


「・・・わかりました。」


いやいや、シルバって誰だよ!?


と内心で思いながらもアダスは答えた。


そして、アダスは女王に連れられて城の中に入った。

城の中は広く、壁にはさまざまな形をした時計などが飾られ世界各国の時間を示していた。


アダスが王女の後ろに従い廊下の角を曲がるとき、先程のチビ公爵が廊下の端で窓に向かって立たずんでいるのが見えたので、王女が後ろを振り向くか気にしながら近づくと何か呟いているのが聞こえた。


「・・・くそ!いったいぜんたい……なぜ王女がいるんだこれでは……ん?」


うおっ、やべっ!


公爵が廊下の角から出ているアダスの影に気づいた。


「そこで何しているんだ!早くどこかにいって働けっ!!」


「・・・・・。」


公爵はアダスを城にいる召し使いの一人と勘違いしているのだろう。


「・・・・・。」


アダスは沈黙を守った。


「きー!マナーがなってないけしからん!!」


などと公爵が怒鳴りながらも廊下の奥へ消えていった。


なーんか、怪しいなあの公爵。


アダスはそう思いながら王女を追い掛けた。


アダスが王女に追い付いたのは王女の部屋の中だった。


「・・・王女…様。」


アダスは自分と王女以外誰もいないか確認して再び口を開いた。


「俺……あ、いや私めはシルバではあり…」


「フフフ…、知ってましたよ。」


「・・・・・・。」


だよねぇ、やっぱり……………


「あなたは私の大事な親友ですもの。」


王女が言う。


「僕はアダスがここまで来ることを信じてた。」


この一言で王女である気品という仮面が剥がれて幼馴染みの顔が現れた。


「・・・ハァ~、やっぱケイトだっか。」


アダスがわざとため息をついてみせた。


「ム、何か言いたいことがあるみたいだね。」


「・・・あぁ、本物の王女だったら口説いて俺の彼女にでも……」


「うん、黙ろうかアダス。夢は見ない方が良いよ。」


「・・・くっ!はっきり言いやがって、ひどいな。」


アダスは顎をかきながら部屋に飾られている無数の時計を見た。


―全部違う数字に針を指していて、時間がわからねぇな。どれが王国の時間だよ・・・まぁ、いいか、ケイトを見つけたし城を出るか。


「なぁ、ケイト。」


「何だいアダス?」


「色々とお前と話したいことがあるんだが、ひとまずここから出ようと思うが…ついてくるよな?」


「当たり前じゃないか!僕はこんなキツい生活はごめんだよ。」


「そうか……だけど、」


「だけど?」


アダスはケイトが着ている白いドレスに指を差した。


「その格好で外に出るには目立つし………何か、ドレスがお前にとても似合ってるから脱ぐ気がないかと思ったんだが。」


「あっ、忘れてた。今から着替えるから後ろ向いてくれない?」


「・・・・・。」


「どうしたの?」


「・・・なぜ男の着替えで後ろを向かなきゃいけない?」


「あ!・・・いや、それは……」


しまった!とでも言うように表情が固まった。


「今さら隠すなよケイト。お前は…」


昔からの付き合いで何度も思った疑問。


「・・・そうだよ。僕は女だよ。」


ケイトが目を伏せて答えた。


「僕が女だっていつ言うかは迷っていたんだ。・・・もし女だと告白してアダスに軽蔑、嫌われたらどうしようと思ったらなかなか言えなくて……ごめん。」


「・・・別に俺はケイトが男か女かなんてどっちでも構わねぇよ。でも、俺がお前を嫌うって考えたことが少しだけだが腹が立つよな。」


「・・・・・ごめん。」


アダスが部屋の扉に近づく。


「俺は先に廊下で待ってる。ここから離れたら色々と話し合うからな。」


「・・・・・・。」


アダスが扉の取っ手を掴んで回すが…


「ん?」


取っ手は回らなかった。

扉を押したり引いたり横にスライドさせたりしたが扉はビクとも動きはしなかっ。


なぜ開かない?


その時、部屋の中が薄暗くなって部屋に飾られている無数の時計から秒針の音が消えているのにアダスは気づいた。


「えっ!何、何これっ!?嫌、イ――――」


後ろでケイトの悲鳴。


「どうした!?」


アダスが振り向くと自分で体を抱きしめているケイトの体がぼんやりと光を発していた。


「アダス……僕は…」


ケイトは光だす自分の手を見つめている。

その目には恐怖。


「・・・怖いよアダス……助けて!」


ケイトの体から一筋の光が漏れ粒となって散り、消えていく。

光の筋が出て消えるたんびにケイトの体の輪郭が薄れていく。


「ケイト!」


アダスの手がケイトの肩に触れたその瞬間、


「っ!?」


薄れいくケイトの体が強く輝いたかと思うと音もなくアダスの目の前で無数の粒となって暗闇へと消えていく。


「ケイトーッ!!」


アダスが暗闇でまだ消えていない光る粒を掴もうとして手を伸ばしたが、その手は虚しく宙を掴んだ。


・・・な、何が起きたんだ…


アダスは床に突っ伏した。


部屋が明るくなり、窓の外から鳥のさえずりが聞こえる。

まるでさっきまでいたケイトが最初からいなかったみたいに、世界は再び時を刻み始めた。


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