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第0話 プロローグ

初めての投稿です。誤字・脱字等があればご指摘頂けると嬉しいです。



※プロローグの内容を大幅に変更を致しました。

<???森 深夜>



「音を立てるな、注意しろ。」


 新月の夜、月の光の無い暗闇の中を騎兵500騎が夜の森を進軍していた。それぞれ装備の金属部分を煤や土で汚し、馬の蹄に足音がならないように布を履かせるなどをして夜間において敵に発見されないよう細心の注意が払われていた。


「総員、停止。」


先頭を進む騎兵隊長が指示を出した。騎兵の集団は先頭が森の終わりに差し掛かかる所で進軍を止めるのであった。


「蹄の布を取れ。」


騎兵隊長が命令を下すと、各騎兵たちは相棒である馬の蹄から防音のため履かせていた布を外し始めた。その作業は慎重なものであり、布が擦れる音ですら気を付ける程だった。


「やはり、こちらの読み通り森側には例の鉄の茨は少なく見えます。」


騎兵隊の副隊長が私物の遠眼鏡を見ながらそう述べた。


「そうか、何とか飛び越えることは出来るか?」

「何とかなるでしょう。ですが、隊長。我が隊の士気は最悪であります。」


蹄から布を外す作業をしている部下たちは皆暗澹した様子であった。手の震えを抑えようとしている者、手の震えからか布を外すことが出来ず隣の戦友に手助けされている者、首から下げたロザリオを握り必死に神に祈る者、皆が恐怖を感じている。精強たる騎兵隊がこの有様とは何とも情けないものであった。


「仕方があるまい。ここに居る者は皆、先の戦闘で生き残った者たちだ。皆、奴らの恐ろしさを嫌という程味わっているからな。」

「実際、無理やり連れてきていますからね。」


今のここにいる騎兵達は誇りというのは無く士気崩壊一歩手前であった。実際、生き残った騎兵は500以上は居たが、恐怖のあまり逃走、命令拒否をするものが続出し、部隊編成すら危うかった。その為、そうした者達を処刑し、恐怖を与えることで何とか連れてきているという現状だった。今、隊長の目の前に騎兵は敵と味方の二つ恐怖に挟まれている状況であった。


「これでは戦どころではないな。」

「しかし、逃げる訳にも行きません。」

「そうだな。戦えなくとも囮にさえなれば十分だ。私たちを含めてな。」

「隊長……」

「私の家族はもういない。君はどうだ?」

「両親と妹が居ましたが、先月の巨大火によって町ごと……」

「そうか、嫌な聞いてしまったな。」


この二人の家族は既にこの世の者では無い。彼らの家族はいた町ごと一瞬にして地上から消失したのであった。残ったのは僅かな建材の瓦礫とクレーターのみ。


「誇りある騎兵。軍隊にとっての花形。最優秀の者だけが集まるエリート。戦にはそういったものがあったはずだ。だが、奴らは一瞬にしてすべて無に変えてしまう。正直、私は世界がどうこうよりも復讐心のみでこの場にいる。」


さらに「空しすぎる。」と呟くと、兜を被り直して兜の緒をしめた。そして、部下の方向へ振り向いた。


「諸君。これより我々は奴らの背後から夜襲をしかける。幸いにもこちら側は例の茨は少なくこちらに意識は薄そうだ。我々が奇襲を仕掛けることで不意を突くことが出来るわけだ。それにより奴らの意識を本隊から少しでもこちらに向けるぞ。」

「そして、何度も言うようだが、命令無しに撤退した者は一族郎党処刑である。肝に銘じよ。」


副隊長は付け加えた言葉で、自分たちには後が無いということを改めて理解するのであった。

実は彼ら知らないが、後方には督戦隊も控えていた。もし逃走した兵士は居れば捕獲処刑する手立ては整えられていた。

そして、指揮官は腰の剣を抜いた。


「総員突撃!!!」


指揮官の号令とともに騎兵500が一斉に駆け出した。


『ウォォォォォォォォォォォーーーー!!!』


怒号の様な鬨が発せられる。いや、やり場の無い叫び声でもあった。とはいえ、500と言えどもかなりの声量であるため、彼らの鬨は遠方まで届いたのであった。

そして遂に先頭を走る隊長が鉄の茨に接近する。そして、勢いのまま、鉄の茨を飛越しようとしたその時であった。突如として眩い閃光があたり一面を照らした。夜であるのに辺り一帯が昼間の様な状態になっていた。


「なんだ!?」


そして、次の瞬間、乾いた音とともに光の弾が雨のように騎兵に降り注いだ。全く昼間と同じ後継であった。光の弾は騎兵が身に着けている胸甲が紙できているかのように貫き騎兵の命をもぎ取っていった。 盾で防ごうと構えるものもいたが胸甲と同じように易々と貫いた。

地獄。脳裏に浮かぶ言葉はそれだけであった。どんな磨いた剣技も馬の操練の成果も意味は無い。互いの剣技を競い戦う光景はない。ただ無言に命を切り取っていくだけの戦場であった


「いてえ いてえよ」

「腕が、腕が!!」

「女神様……女神様――!!」


あちらこちらで落馬した者達の呻き声が聞こえてくる。光の弾に撃たれて奇跡的に生き残った者達であった。しかし、生き残ったとしてもまともに普通を生活を送れそうなものは多くはなかった。

夜襲をかけようしようとしところを逆に予想外の反撃を受け、さらに低かった士気も加わり騎兵部隊は完全に士気崩壊した。


開戦して一分で、全軍の三分の二が戦死していた。残った物も全員があ落馬して戦どころではなくなっていた。

彼らの隊長も謎の光で辺りが明るくなった直後、馬が倒れ落馬していた。今は倒れた愛馬の陰に隠れて光の弾をやり過ごしていた。


「(奇襲は失敗した。だが、奴らの気をこちらに向けることができた。もう十分だ……)」



この攻撃は見るからに敵の一兵も損害を与えることは出来なかった。しかし、彼らの不意を突きこちらに意識を向けることは出来たと隊長は判断をした。つまり、陽動作戦を完遂したのであった。後は一人でも多くに生き残ることが使命と結論を出した。


「総員てっ―――」


隊長が指示を出そうとしたその時に光の弾が頭部に直撃した。近くには副隊長がおり、彼の目の前で頭蓋骨の破片や脳の一部をまき散らし倒れた。


「隊長!! ウッ……」


副隊長は必死に身を伏せて駆け寄った。だが、指揮官はただの屍と化していた。

そして、次の瞬間、何かが風を裂く音ともにあたり一面が爆発し始めた。その爆発は生き残った騎兵達を次々と巻き込み紙屑のように吹き飛ばしていった。


「これより私が指揮を引き継ぎます。総員撤退だ、撤退するぞ!」


屍と化した隊長に別れを告げると生き残った部下に撤退の命令を伝えつつ、森まで後退をしていった。途中、落馬または負傷した仲間を助けようとするものがいたが副官はそれを無視するように命令をした。なんとか森まで副官が撤退した頃には、500いた騎兵隊は10人までに減っていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



<???本陣>


騎兵が奇襲を行った森と『奴ら』を挟んだ反対側に軍団が待機していた。その後方にいる軍団を指揮する将に伝令が滑りこむように駆け寄った。


「報告! 陽道作戦が開始されました。」

「始まったか。」


彼らの方向から鬨らしきものが聞こえた後から、もう聞きなれた轟音が断続的続いている。彼らの犠牲を無駄にしてはいけないと心に刻むのであった。


「全軍に伝令、攻撃を開始せよ!」

「はっ!!」


軍団を指揮する者の命令で軍団が動き出した。奇襲性を高める為に戦太鼓や戦笛を使うわけにいかず、最初の部隊が動きだしたのは命令してから数分が立ってからであった。そして、全体だ完全動いたころには命令から30分以上が掛かっていた。


「で、例の『鉄の茨』の対処はどうなっている?」


将は周りを囲む側近の一人に対して質問を投げた。

『鉄の茨』。これが原因で軍団の行動は大きく制限されていた。これに阻まれ動けないところを敵の放つ光の弾の餌食となってしまっていた。


「は、前衛に魔術師を配置し彼らの爆裂魔法を持って茨を吹き飛ばし対処します。その後、一気にあいての懐に入り込み光の弾を撃つ前に奴らを掃討します。」


側近が質問に答えきったところで前衛の方から乾いた音と爆裂音が聞こえ始めた。


「前衛が茨に到達したか」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 本来、魔術師は後方に配置するものある。だが、今回に限っては前衛に配置されていた。歩兵の進行ルートを確保する為に鉄の茨を吹き飛ばす使命があるからだ。

しかし、敵もそのことを悟ったのか一斉に魔術師を攻撃し始めた。一応、護衛はついているのだが、光の弾を防ぐ手段はない。その為、護衛は自ら肉の盾となって魔術師を待っているのだった。彼らは光の弾の攻撃は降り注ぎ仲間が次々と倒れるがそれに屈することなく果敢に進んだ。『鉄の茨』を己の魔法の射程に入れる為に。

そしてついに、魔術師たちは鉄の茨を射程に捉えた。魔術師は一斉に詠唱をし始めた。それを防ごうと敵は苛烈な攻撃をしてくる。だが、それには屈せず爆裂魔法を放った。それぞれの魔術師が放った爆裂魔法は次々と着弾して大きな土煙を上がった。数分後、土煙が晴れると『鉄の茨』は軍の進行に傷害にならない程度に吹き飛ばされていた。茨の除去に成功した。


『ウォォォォォォォォォォォーーーー!!!』


すさまじい轟音の鬨が兵士たちから発せられた。

後続の歩兵は光の玉に屈することなく進み続けるその魔術師たちの姿に士気が高揚していた。そして、今まで自分たちを阻み続けて光の球の的にさせてきた『鉄の茨』が消えるや否や士気はさらに高揚した。その効用に任せて突撃をした。茨の穴から次々と歩兵が雪崩れ込んだ。敵と我々の間の障害は既にない。あとは敵を手に持つ剣で遂に屠るのである。そう心に誓い、兵士たと溝の中にいる敵に向って全力で走るのであった。


 しかし、その士気も簡単に打ち砕かれた。


『鉄の茨』を越えて数歩進んだところでいきなり地面が爆発し始めたのであった。死には至った者は多くなかったが、爆発に巻き込まれた兵士の足は完全に使いものにならないほど完全にグチャグチャになっていた。それを見た周囲の兵は恐怖で歩みを止めてしう。それを敵は見逃すわけもなく光の弾は容赦なく止まった歩兵達の命をもぎ取っていった。


さらに、その直後、風を裂く音ともに兵士たちの上で『何かの物体』が炸裂しはじめた。その物体が炸裂した途端、兵士達に見たことのない光を放つ粉が降り注いだのだった。

降りかかった火の粉に触れた兵士たちはと次の瞬間に火だるまになった。皆が驚き、歩兵指揮官は冷静に水をかけて消すように部下たちに指示を出した。同じく後方に移った魔術師が魔法で水を掛けるのだが、なかなか消えることはなかった。避けようと思った兵士も居たが光る何かは満遍なく降り注ぎ、歩兵たち密集していた為に避けることもできなかった。その為に歩兵は次々と火だるまになっていった。さらに追い打ちをかけるように光る弾が雨の様に彼らに降り注いだ。


本命である歩兵は完全な混乱状態に陥り戦どころでは無くなっていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



その状況は後方にいる将の元に直ぐに伝わった。


「なんと!?」

「閣下、撤退を!」

「だめだ!別の方面から予備部隊を全て注ぎ込み数で突破しろ。」

「しかし!」

「ここで撤退したら後はない。なんとしても奴ら『裏切り者』を何としても滅ぼすのだ!」


そう総隊将の命令を受理した伝令は各方面へと散っていった。その様な中で総隊将の頭の中で疑念が渦巻いていた。


「(おかしい。奴らの力はこの程度ではないはずだ。)」


総隊将は先の戦闘と比べると敵の火力が低すぎると考えていた。先の戦闘で消耗したとしても低すぎるのであった。怪しい。怪しすぎる。


「まさかっ!?」


その中で最悪の可能性を導きだした。いや、出してしまった。


だが、時は既に遅かった。


彼らが目で追えない速さで遥か遠方から一つの物体が飛来した。そして、彼らの頭上数十メートルで炸裂した。炸裂すると凄まじい熱線が放たれ、直下に居た人間は蒸発した。そして、その後に続く衝撃波で残った生き残りを吹き飛ばしたのであった。そう本来味方であるはずの()ごとである。


炸裂の後に残ったのは巨大なキノコ状の雲だけであった。


感想を貰えると嬉しいです。宜しくお願いいたします。

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