まず、生きねば。
うん。ここどこ?
眼前に広がるのは、鬱蒼とした森。整備された感じの道はないし、今居るここだけ栄養が足りないのか知らんけど、木とか植物が生えてない感じ。
で。
マジどこよ、ここ。
いや、まず情報整理。自問自答していきましょか。声に出すのが良いんだっけ?
「えーと、俺は新田 賢吾で、年は十六。職業は…職業って言うか学生。
で、この状況になる前は…家で寝てたね。あ、そうだ、夢か。」
夢なら頬か身体中つねれば分かるだろ。
…全身つねっても痛かったんですがこれは?
ははっこの状況が現実だって?GENGITUだって言うのかい?あの最強の敵?
でも何とか越えれるやつや圧勝し続けるのはいるし、流石に酷くね?
でさ、さっき身体中つねったときに気付いたんだけども、俺、ちっちゃくね?いや、目線の高さから気付くべきだったんだけど、俺、今、小学生よりちょっと低いくらいなんだけど?あ、何で知ってるかってのは、親戚に小学生くらいの子がいて、目線合わせて話して、遊んでるからな。
で、その親戚の子って結構ちっちゃいんだわ。それより俺ちっちゃいんだわ。あれだ、大体5歳児くらいだわ。
ふざけんな?今をばか騒ぎして駆け抜ける男子高校生が朝起きたら幼児って、どこぞの名探偵もビックリだわ。あれか?ホントに何かの組織がいて、毒でも飲まされたか?あ、あれか、格ゲーで封殺された恨みって感じか?それなら人違いだ馬鹿野郎!格ゲーなんか出来るか!ってか俺、対戦型ゲームほっとんどしねーわ。じゃあ違うって考えが逸れてきた。夢じゃないなら次、荷物チェーック。
…ふっざけっんな~
声に出して物品一覧いってみよ~。
「いつもの服、バイトの制服、手提げ鞄(中身はゼリー系の栄養補給のやつ、水筒(500ml位入るやつ)、スマホ(電池切れ)、ノート、ペン。)ポッケに家の鍵と財布!」
遠足か!
つーか全部バイト前準備してた物じゃん!そんで制服!だっぼだぼ。着ーれねーじゃーん。そうだね。5歳児くらいだもんね。そんなもんだね。
結論・ろくなもんねぇ…。
で、次!周囲の詳しい状況!!
森なんだけどさ、めっちゃ紅葉してる。秋真っ只中って感じ。でね?寒いの。で、静かですねん、静かすぎですねん。
逆にこえーよ!やっベーよ、何か熊かなんか出そうだよ。熊とか野性動物に教われたら死ぬよ。死んだふりしてもダメらしいからね。
その前に食糧ゼリー系のあれだけってヤバくね?餓死すんじゃね?あー、いや、今秋か。秋なら食糧探せば、多分木の実はあるんじゃ…食える木の実って何さ?
水も川の生水だと腹下すらしいし、水もダメ?いや、水は煮沸できればセーフらしいから川とか水源近くは良いな。…獣もいるだろうけど。
ここ抜けて人探す?でもこの森絶対抜けれねーもん。さらに迷うこと間違いなしだしさ。
ってかさ、夜って火焚かないと死ぬよね?俺、火起こしなんてちっちゃい頃に失敗した覚えしかねぇよ?つーか火ぃ焚いてもあんま寝れないよね?警戒しながら寝るなんて器用なことできねーし。
あれ?俺、死んだ?
…いやいやいやまてまてまて。先ずは川探そう。生き残ろう。人って必死になったら何でも出来るらしいし、きっとこの先生きのこれる。
きのこる先生を信じるんや。なんとかなる。まずは耳をぉ澄ぅませばぁ聴こえてくるぅ
『グルルルル』
『アオーン』
『わんわんお!』
狼の鳴き声ぇぇぇぇい!
一匹おかしいけど、絶対狼ぃぃぃ!!
さっきまで何もいなかったじゃんかぁぁぁぁ!!!
やベーよ。やっベーよ。狼って確か、ちょっとした車くらいの速度で走ってくるんだっけ?ヤバイじゃん。一噛みでもされたら病気で死ねるし…なにこの絶対絶命。きのこる先生信じれないかも知んない。ってか何で唸り声あげてたの?何か狼よりヤバイの居んの?
え?なにそれ?狼って熊も殺すんだよね?じゃあ何さ?ってそもそも何で野生っぽい狼居んの?もしかして日本じゃないの?
まぁ、取り敢えずそんなことはどうでもいい、重要なことじゃない。いや、重要だろうけど。先ずは生き残れるようにしないと。あれかな?スニーキングミッション的な感じで行けばばれないかな?まずこの辺ヤバイのは確かだから移動しないとなー。
では、屈んで、ゆっくり踵から体重移動を気にして…あ、何でそんなこと気にするかって言うと、適当に気になったからネットで調べてたら、こんな感じにするんやよってのがあった。
…で、移動中なんだけどもさ、
『わんわんお!』
『わんわんお!』
『わんわんお!』
三つの鳴き声全部わんわんおになっちゃったよ。すっげー気ぃ抜けるわ。でね、もう一つ。
『ざわ…ショワー』
『ヴヴヴ』
って鳴き声なんだろって見てみたらさ、植物なんだよ。人面のとか、ウツボカズラ的なのとか。大きさは、体感で二メートルぐらい。
うん。日本じゃないね。日の本こんな物騒ちゃう。あ、もしかしてあれ?例の樹海?まぁ、違うだろうけど。ウツボカズラ的なのとか自生しないと思うし、人面植物とか知らんもん。
で
『ごうごう』
無事、水源にたどり着けました!よっしゃぁ!!
ただね?しんどい。疲れたのもあるんだけど、ずっと警戒してたら精神がガリガリ削られんの。正直、もう寝たいぐらいなんだけどさぁ…今の俺、只でさえ毛の少ない動物で、肉食動物からしたら食べやすい獲物でね?多分子供になってんの。食われるよね。確実に。
で、ここにはしばらく居るつもりだから、居住空間が必要なわけですよ。ってことで、さらに肉体を酷使だぜ。
まぁ、まずはどこに作るかだけど、恐らく地上に家作んのは危険。子供の力、しかもまともな道具がない状態だから耐久性は期待出来ない物しか作れない。最善は恐らくこの水源の上なんだが…
『ごうごう』
この通りここ滝だし、その前に水上に家作る方法とか知らん。家って言っても、適当に枝組んでその辺に生えてるつるで縛るだけだし。
で、次、木上なんだが…無理。
何でって?高いんだよ。5歳児くらいの体だからどのサイズの木でも、登るのは危険なわけだ。
で、最終案は、滝裏に洞窟があるかだけども…
「よっしゃぁぁ!!」
大型動物が入れそうにない位の滝と崖の隙間に、大体五畳半ぐらいの洞窟があった。叫んだけど、大丈夫そう。
で
荷物を置いて、少し横になってみるんだけど…痛ったいなここ。ゴツゴツしてて結構痛い。平らなとこでもこんなもんか…しかも寒いから、多分ここでこのまま寝たら風邪引く。あ、バイトの制服布団にしよう。ブカブカだから着れなかったし、重かったけど持ってきた甲斐があった。いつもの服もブカブカで、かなり袖と裾捲ってるけどな。
ただ、ある程度安全でも、しきりみたいなのは欲しいな。そろそろ暗くなってきたし、早くしよう。
ってことで外に出て、枝を幾つかと、必死になって岩のとこに叩き付けて割った鋭い石と、その石で切った蔦を幾つかゲットだぜ。あ、勿論水辺で石洗ってから使ったし、つるも念のため洗った。あ~、しんど。
で、ここから枝をつるで括って、板みたいにしてから板みたいにした奴の角と、真ん中を適当に岩肌にくくりつけて、完成!!
やったぜ。ただ、死にそうな位しんどい。ちょっとお茶飲んで寝よ。制服のズボン敷いて、制服の上着を掛け布団にして寝る。