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第6話:仮面と包帯の襲撃者

「リーさん!【オールガンズ】は!?」


 9番格納庫に飛び込むなり、アルは叫ぶ。


「整備出来とるぞぉ!3番エリアだ!」


「ありがと!」


 それだけのやり取りを交わし、3番エリアに入る。


 ピカピカに整備された青色の愛機【オールガンズ】は、すでに腹部のコックピットを開放した状態で、ひざまずいている。とはいえ、コックピットまでの高さは5メートル近いのだが―――


「よっと!」


 アルはまるで軽業師のように装甲を蹴って上り、用意された梯子も使わず、操縦席に滑り込むように搭乗し、ハッチを閉じる。


 暗闇は一瞬で、すぐにセンサーが起動し外部の映像を映し出す。


(センサーはすべて良好・・・関節の消耗部分はまだ余裕がある・・・問題はない)


 完全起動に必要なチェックを済ませながら、開かれていく出撃口へ機体を進ませる。


「守りたいものは、近くにあるから・・・」


 操縦桿を握りしめる。


 格納庫から出撃し、兄がいる病棟を機体のセンサーを通して見つめる。


「絶対に守り通す!」


 アルの言葉と思いに応えるかのように完全に起動した機体の両目が緑の光を灯した。



                     ●



「やはり気付かれているか・・・」


 コックピットの中で髑髏を模した仮面をつけた男が崖の上から慌ただしくなった基地の様子を眺めて呟いた。


 無理もないのは承知している。戦後はどこの拠点も『守備』に徹した設備が充実しているからだ。


「できれば、リスクは最小限にしたいが・・・」


 とはいえ、この場にいるのは自分の機体だけ。まあ、地上に限定してのことだが・・・


『はっ。ずいぶんと臆病だなぁ。え?』


 いきなり音声のみの通信が入る。男より、少しかん高い声で、どこか興奮しているような感じがあった。


『てっとり早く潰せばいいだろうがよ!』


「手当たりしだいに攻撃して、探し物(・・・)がつぶれては元も子もない。第一、貴様は加減を知らん」 


 たいして感情も込めず、仮面の男は言う。


「お前は、内部に入り込め。正面は引き受ける」


『何もなかったら?』


「前と同じだ。まかせる」


 崖の上から、巨大な鉄の塊を右腕につけた赤い機体が、眼下の基地へと跳躍した。


    

                    ●



 着地した赤い機体を最初に出迎えたのは、レールガンを構えたアルの【オールガンズ】。いつでも発砲できる状態だ。


 その状況下で襲来機は、ゆっくりと姿勢を直立させる。


 外部スピーカーの声があたりに響き渡る。


『すぐに、機体を停止させて、降りなさい!さもないと発砲する!』


 従わないだろうと思いつつ警告する。


 アルは、目の前の機体にどこか見覚えがある気がした。


 正確にいえば、その機体がまとう独特の存在感にだ。


 頭部の右側にセンサーがあるはずの部分は装甲に覆われており、サイドに牙のようなパーツがある。


(似てる・・・【蒼鬼】と・・・・・)


 9番格納庫で未だ沈黙を保つあのギア・フレームと、目の前の所属不明機には類似するデザインが見られた。


 すると、敵機が動きを見せた。


 アルが引き金に指をかけるが、相手には襲ってくる気配がなかった。それどころか、地面にひざまづき―――コックピットハッチを開放したのだ。


(!?、まさかね・・・)


 にわかには信じられなかったが、実際、機体の稼働を示す頭部の左センサーも光をなくしていた。

 

 ギア・フレームは、一度機能をシャットダウンすると、再起動に少し時間を必要とする。つまり、敵機が示した行動は『投降』の姿勢を意味した。


 油断はせずとも、あっけにとられているアルの眼下に、敵パイロットが姿を見せた。


 地面に降り立った男は、黒いコートのような衣服で、顔に仮面をつけている。その隙間からのぞく髪の色は、紅。


 まさか、本当に降りるとは思ってなかったアルは、次の言葉を考える。


 すると、サイドのウィンドウに音声のみの通信が入ってきた。


 それは―――相手パイロットからだった。


『交渉がしたい』


(!?)


 第一声から少し驚いた。内容にではない。その声色自体が―――


『互いに無駄な損害は避けるべきだと思っている』


レイヴンとほぼ同じものだったからだ。


〈どうなってるの・・・それとも、単に似ているだけ?〉


『応答を願う』


 相手は、アルの疑念などお構いなしに通信を続ける。


(考えるのはあと・・・とりあえず、この事態を終わらせないと)


 ウインドウを操作し外部スピーカーを再びオンにする。


「不法侵入の上に、交渉を持ちかけるの?」


『ああ、あまり争いを好まない性質(たち)でな』


 どこまで本気なのか分からないが、相手の機体は停止しているのは確かだ。交渉をする意思がある可能性は高かった。


「・・・一応、応じることにするわ。場合によるけど」


『話がわかるな』


「・・・何が目的なの?」


『俺は、人を捜している。もしこの基地に居るのなら引き取りたい』


 アルは、少し鼓動が早くなるのを感じた。


 心あたりがある。それも、確信に近い。


「・・・名前は、何」


『レイヴン=ステイス。紅い髪の青年だ』


(!!)


 予想が外れることを心の隅で願っていたが、現実は突きつけられた。


(レイヴンは・・・・・テロリストの仲間・・・敵?)


 たった4日しか共にいなかったというのに、アルの心はどこかに喪失というものを覚えた。


 だがそうとわかればなおさら彼を引き渡すわけにはいかなかった。


『返答は?』


(例え、いると答えたとして、相手がテロリストである以上・・・)


 瞬時の思考。努めて冷静を崩さないように返す。


「答える必要がないと判断させてもらったわ」


『・・・・・』


「これより、あなたを逮捕します。動かないように」


 あくまで、彼女は警察としての姿勢を維持した。


 話はあとでも聞ける―――そう思っていたのだが・・・


『なるほど、この基地が当たりか・・・』


 男が呟くのと同時に―――敵機が突如動いた(・・・)


「っ!?」


 不意を突かれた突進攻撃を真正面から受けたアル機は吹き飛ばされ、貨物エリアのコンテナに背面から衝突。コンテナが変形する。


「がっ・・・!」


 衝撃をうけ、肺から空気が漏れる。


「何で・・・」


 確かに機体は停止していたはずだ。しかもパイロットすら乗っていなかった。それが、急に動いて襲いかかってきたことが信じられなかった。


『彼を無事に帰してくれるなら、これ以上手荒な真似はしない』


 男は、まだ地面に立っていた。機体に乗り込む気配はない。


(いったい、どうやって・・・?)


 機体を立て直しつつ、クラクラする頭で考える。


『返答は?』


 男は、どこまでも冷静で、無感情だった。


 敵機の性能がわからない。戦うなら相当の危険が伴う可能性が高いことは容易に想像できた。


「くっ・・・!」


 再び男に伝える。それは、たった一言―――


「あなたを、逮捕する!」


アルは、戦うことを決意した。


 すると、また敵機が動いた。今度は、巨大な右腕でパイロットを包むように守る体勢を取る。すると、その右腕の表面に突如、爆発が起こった。


「狙撃?」


 アルは瞬時にそれが味方による援護だと気づく。それと同時に、


『白馬の王子様の到着だ。待たせたな、アル』


 通信。今度は映像つき。相手は、銀髪に紫の瞳をもつ軽口男。


「ロイド!」


『おれだけじゃないぜ?』


 はるか後方から、もうひとつ機体が跳躍し、アル機の隣に着地する。


 形は【オールガンズ】と同系だが、両肩のサイドには大型レールガンではなく、鎧の様な厚い装甲がついている。アル機と比べ、全体がずっとスマートで、非常にスピーディーな印象が感じられる。


「ルゥも!?」


『待たせた』


 ルゥ=フェイネストの機体は、【オールガンズ】を接近戦に特化させた改型だ。機動力を重視した結果、装甲強度が犠牲になったうえ、装備も刀型の音波剣(ソニックブレード)のみと最小限だが、従来のギア・フレームの半分以下の重量がよりアクロバティックな動きを可能にしている。白と青を基本にしたボディカラーは、さしずめ、『流水』のイメージといったところだ。


『注意しとけよ。目の前にいる奴の、紅い機体は7番基地を壊滅させた奴に違いねぇ』


(!、お兄ちゃんの負傷の原因・・・)


『詳しいことは分からねえが、得体が知れないのは確かだ』


 そういう間もどこからか狙撃が飛来し、防ぎ続ける敵機の動きを封じる。


「民間人の避難状態は?」


『65%完了してる』


「ならまだ【基地街】近づけられない。フォーメーションΔ(デルタ)!」


 ルゥの【オールガンズ・S】とアルの【オールガンズ】が左右に分かれる。


 敵機もパイロットの搭乗が完了したらしく、センサーが浅葱色(あさぎいろ)の光を取り戻し、ゆっくりと狙撃を防ぎながら直立する。


『ちっ!どんな装甲してんだクソッたれ!』


「ここで相手をとりおさえるわよ!返事は!」


了解(ラジャー)


『簡単に言うよな・・・了解!』



                     ●



 どこだ


 誰だ


 声なき声で俺に語りかけるのは


 俺を引き寄せているのか?


 何のために?



 気がつくと格納庫に来ていた。


 遠くで轟音が聞こえる。


(戦闘か。この発砲音は・・・滑空狙撃砲。だが、連射しているな。相手が素早いのか、固いのか・・・どちらにせよ苦戦は―――?)


 なぜそんな事がわかる?


 なぜそんなことを気にする?


(その答えが・・・この先で呼んでいるのか?)


 まるで、とりつかれたようにレイヴンが格納庫の奥―――暗闇の先へと歩を進めようとすると、


「誰だぁ!ここは、民間人は立ち入り禁止だぞ!」


 物資コンテナの陰から服のあちこちをススで黒くした大男が大声を出しながら走ってくる。


 だが、レイヴンの関心はすぐ先から聞こえる『声』にしか向けられていなかった。


「この先に何があるんだ・・・」


「おめぇ、この間来たっていう小僧か!?」


 大男は、レイヴンを見てそう判断した。


「警報が鳴ってる!すぐに避難シェルターにいかねぇと!」


「いや・・・俺は進む。進めば何かがあるはずだ」


「よせ!ここは危険だ!子分どもはみんな退避した!ワシとシェルターまで逃げるぞ!」


 大男がレイヴンの腕を掴み強引に連れて行こうとする。まるで何かから遠ざけようとしているように。


「放せ!俺は―――」



「呼ばれている・・・か?」



「ぬ!?」


「!」


 レイヴンと大男が声のした方向―――作業員用の通用口へと視線を向ける。


 そこに、男が一人立っていた。


 装飾があるが、あちこち切れていたり、右腕の袖から先がなかったりする黒いコート。その顔は、怪我をしているのか、包帯が人相がわからないほどに巻かれている。隙間からのぞく髪の色は―――紅。


 大男は包帯男が放つ言い知れない気配から、明らかに民間人ではないことを直感する。


 そして、レイヴンは―――


(・・・この男、どこかで)


そう感じていた。


「とりあえず、そこのおっさん。あんた、どっか行ってくんない?オレ、レイヴン君と話したいことあるんで」


 包帯男は、二ヤケた表情で指さしながらそう言う。


「ワシとて警察機関の関係者。こいつをおいて自分だけおめおめ逃げられるわけないだろうが!」


「立場とか、職務とか、大事かも知れないけど、死んじまったら元も子もないって。なぁ【ディス・フィア―】。お前もそう思うだろ?」


 天井を見上げながら、肩を揺らして笑う包帯男。


「いかん!」


「ぬお!?」


 レイヴンは、とっさに大男をひねり倒すように、コンテナの影に飛び込む。


 すると、格納庫の天井に数発の弾丸が撃ち込まれ、屋根が倒壊。先ほどまで2人がいた場所に鋭い鉄材が雨のように降り注いだ。


 もう少しレイヴンの反応が遅ければ、まとめて串刺しになっていたところだ。


「おお!助かったぞ、小僧!」


「礼はいらん」


 それだけ言ってレイヴンは、包帯男と同じ空を見上げる。


 すでに日の光が存在しない夜空。そこには、バーニア・スラスターを噴射しながら滞空する漆黒の機体の存在が確認できた。


「なんだなんだ!空戦仕様だと!?そんな機体の製造は禁止されているはずだぞ!!」


 大男は、そう叫ぶが、相手は笑いをこらえているだけで答えようとしない。


「―――先に行け」


「なに!?」


「あいつは俺との会話を望んでいる」


「だからと言ってだなぁ!?」


「奴を引き付けている間に増援を連れてきてほしい」


 レイヴンはその場しのぎの口実を述べる。自分は単純にあの男と話をしたかった。何かを知っているのは間違いない。それを一刻も早く確かめたい衝動を抑えていた。


 そんな意中を察したか、言葉のまま受けとったか。大男は苦々しげな表情で、わかったと言って背を向ける。


「いいか、無理はするな!小僧、名前は?」


「レイヴン=ステイス」


「ワシは、リー=マクルバン!覚えとけ!」


「ああ、記憶しておく」 


 リーが別の通用口から出るの確認してから、レイヴンは再び男の前に姿を見せる。


「お優しいねぇ」


 相手もこれを待っていたようだ。


「俺に用があるらしいな」


「ああ。たっぷりあるとも。まずはお近づきの印に―――そらっ!」


 男が懐から何かをブーメランのように回転する何かを2本投擲する。


「!?」


 レイヴンはとっさの判断でしゃがみ、これをかわす。


 コンテナに、ぶつかってと落ちたのは、両刃のナイフだった。


「ぼーっとすんなよ!」


 男が新しいナイフを懐から引き抜き、切りかかってくる。今度はさっきよりも大きい片刃で、反り返った銀のナイフ。 


「ちっ」


 レイヴンは舌打ちし、最初の横薙ぎを後ろに体をそらして回避。続いて首を狙う連続突きを、流れるようにいなすと大きくバックステップで距離をとる。


「まだまだぁ!」


「くっ」


 ダッシュで接近してくる男に対し、レイヴンは床に落ちたナイフを拾い上げ応戦する。


 時には正面、時には横、時にはフェイント。それらをまじえた変幻自在な斬撃を受けるのは並大抵の反射神経では不可能だった。しかし、レイヴンはそれらをしっかり受け続けている。悪態こそつくものの、それが当然のように―――


「まさか、受けられて当然と思ってねぇか?」


 フッと相手の姿が消える。


「消え―――」


「こーこ」


 レイヴンが背後の声に反応し素早く振り返る。


「反応速度、動体視力、体捌き・・・全部落ちてるな。ん?」


 男の言葉が終ると、レイヴンの右肩が切れ、鮮血を噴いた。


「なっ・・・!」


 右肩を押さえてう膝をつくレイヴン。その姿を見下して男は、目を細めて二ヤケる。


「お前、俺を覚えていないみたいだな?どんな因果でそうなったか・・・どっちにせよ、ここで俺に殺されるくらいなら、ヴェイヘルの奴もいらねえだろう、な!」


 再び襲い来る連続攻撃。肩を負傷したレイヴンは受けきることができず、切り傷がみるみる増していく。


「ぐっ・・・!」


 脚力を最大まで使ったバックステップでなんとか距離を離す。すると、相手もその場で止まる。


 レイヴンは、再び肩を押さえる。全身切り傷だらけで、出血がひどい状態だ。服もずたずたで、切れあとには血が滲んでいた。


「はぁ・・・はぁ・・・・」


 息が荒い。思考が薄らいでいく。目の前にいる敵の存在すらおぼつかなくなってきた。


「まさか、お前がオレの前に膝をつくなんてなぁ・・・最高に笑えるな!ヒハハハハ!」


 虚ろな意識をなんとか保つレイヴンに男は告げる。


「じゃあなレイヴン。死ね」


 相手がダッシュをきる。 


 正確な突きが来る。



 俺は死ぬのか?



 ナイフが突き刺さった。


 レイヴンの―――左手の甲に。


「なっ!?」


 正確に喉元を狙った刺突を左手を楯にして止められたのだ。


「ぐっ!俺は・・・死なん!」


 レイヴンの右手の中に残ったナイフが逆手持ちになり、下から一閃した。


「ぐがあぁぁっ!!」


 左目を縦に切られた男がよろけながら大きく後ろに跳ぶ。


「てめぇ・・・!」


 男の顔を取り巻いていた包帯がするっと落ちる。


「な、に・・・?」


 レイヴンは最初、目がおかしくなったのかと思った。


 だが、それは現実だった。


 その顔は―――レイヴンと同じ。


 髪の長さが違うだけで、包帯のない相手と自分は鏡合わせの存在のような錯覚を覚えた。


「くそがぁぁっ!!」


 男が踵を返して格納庫の外に飛び出す。


「【ディス・フィア―】!降りて来い!!」


 叫びに答えた漆黒の機体が空から飛来する。男の前にひざまづき、胸部のコックピットハッチを開放すると、右腕を差し出して停止する。


「ぐぅ・・・」


 苦しむようにコックピットに乗り込むと、あっという間にハッチが閉鎖され、漆黒の機体は上昇して去っていった。


「はぁ、くっ・・・ぐぅあぁぁぁ!」


 左手を貫通していたナイフを力任せに引き抜いたレイヴンが、激痛をこらえられず叫び声をあげる。


「か、はっ・・・」


 力尽き、コンクリートの床に仰向けに倒れる。


 新たな深手から、みるみる出血する。


(俺は、なんなんだ・・・?)


 自分を襲った自分の顔を持つ男。


 その最後の攻撃の瞬間、ほんの一瞬だったが突如頭が澄みわたった気がした。


 死にたくないと思ったわけではない。ただ、当然のように体が動いた。


 純粋に、相手をねじ伏せることしか頭になかった。


(俺の・・・記憶・・・・・)


 静かにレイヴンの目が閉じていく。


 その時―――脆くなった建材が破断し、支えを失った屋根が崩れ落ちた。



                   ●



「違う、違う・・・オレは・・・・あいつじゃない・・・・・」


 コックピットの中で男は、先ほどの叫び声が嘘のように静かに呟いていた。長い髪に隠れされた表情はどこか虚ろな感じがあった。


「どこが・・なにが・・・そうだ、この痛みだ・・・」


 いまだに血の止まらない顔の左側表面を走る傷を触る。


「これが・・証明・・・」


 すると、男の口元に笑みが浮かぶ。


「礼をいわねぇとな、レイヴン・・・またオレは、『お前』から遠ざかることが出来たよ・・・ククク」



                    ●



 起きろ


(誰だ)


 起きろ


(起きて、何をする?)


 戦え


(無駄だ。俺は死んだ)


 死んでいない


(なぜだ)


 俺がいるからだ




「うっ・・・ぐ・・・」


 痛みによる苦痛がレイヴンを目覚めさせた。


(生きているのか・・・)


 確か自分は崩れた建材につぶされたはず―――


 はっきりと見えるようになった彼の目に最初に写ったのは、機械の巨人だった。


 角ばった筋肉がついたような四肢からは機械というより人間に近い印象を受けた。二本の角が突き出た頭部には、サイドに牙の様な部品がついている。


 その機体は、レイヴンの上に覆いかぶさるようにして、建材から守っていた。


 デュアルセンサーの光は消えている。間違いなく停止状態。


 だが、レイヴンは、目の前の存在から何かを感じた。


「お前が俺を呼んだのか・・・?」


 機械は喋らない。しかし、応えた。


 胸部の装甲が動く。


 少し前にスライドすると、左右に分かれ、現れたハッチが持ち上がり、コックピットが姿を見せた。もちろん内部は―――無人。


「そうだ・・・敵は、まだいるか」


 渾身の力を込めて体を持ち上げる。


 なぜかコックピットに上るのは苦痛に感じなかった。


 乗り込むと同時に、操作もしないのにハッチが閉じる。


 不思議な一体感が、レイヴンを包んでいた。


 痛みも、苦痛も、消えたようだ。


 これなら、戦える。


「行くぞ・・・」


 機体の四肢が力を蓄えていく。


 その目が、金色の光を灯す―――

 

主人公機登場です。ちょっとじゃねぇかって突っ込みは無しで。次回が大暴れ編です。間違いないです。確実です。でないと話作れませんから(爆笑)。敵さん登場で盛り上がってきました。ご意見などは、積極的に取り入れたいと思っています。

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