表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/28

第20話:新たなる剣<2>

ちょうど正午。飲食店【delicious】の店内のテーブルの一角―――


「新型機のテスト?」


「そ。いろいろ検討して私にお呼びがかかったらしいの」


 アルがサラダをつまみながらそう答える。


「そんな事一般人に話しちゃっていいの?」


「すぐ一般公開されるから大丈夫よ。機密事項とかなかったし」


「どうしてアルになったんだろうね」


 クックルが首をかしげる。本当の理由などバカバカしすぎて言えるはずがない。


「俺には納得できるがな」


 すでに自分の分の料理(大盛りサラダとミックスサンド)をきれいに食べ終わっているレイヴンがそう言う。


「あら、どうしてそう思うのレイヴン君?愛を込めて答えなさい」


「込めんでいい」


 隣のアミーナの頭にビシッとチョップを入れる。


「単にセンスの問題。操縦の適応力が最も高い者が適任なのは当然だ」


 クックルが首をかしげる。


「それだったらロイド君やルゥちゃんも負けてないんじゃないかい?」


「適応能力の問題だ。G・F(ギア・フレーム)の操縦は操作を覚えればいいというわけじゃない。操縦技術もそうだがそれを応用する技能も不可欠。要はバランスが重要だ」


「つまりアルが選ばれて当然ってことかい?」


 その質問に、そういうことだ、と答える。


 一方のアルは、


(なんか本当のこと言いだしづらい・・・)


そんな内心で、あはは・・・、と笑うしかなかった。


「ほら彼氏から誉められてるよん?」


「だから彼氏じゃないってば!」


「照れるな照れるな。で、いつ出発?」


「えっと、明日の朝かな?」


「そりゃまた急だね」


「ちょっと私用でね。明後日のはずだったんだけど早めてもらったの」


「へー。・・・・・狙いは『おにーちゃん』ね」


「なんか言った?」


「別になにも〜」


 そっぽをむいて口笛を鳴らすアミーナを横目でジト見するアル。


「色々あるんだなー」


 そう言いながらクックルは新しいデザートをほおばっていた。


「バレイ。それでいくつめだ?」


「7個目。うーむ・・・この味はどうやって出すんだか・・・。××の×かな?それとも*****か?」


 ボソボソと危険な材料名を呟く。スイーツの考案にきたクックルだが、道は険しそうである。


 レイヴンの視界にふと電子伝票が映る。メニューが出揃ったあとではなく、食べた分だけ自動的に料金が更新されていく仕組みなのだが・・・・・・


「・・・・・・」


 それをちらりと見てみる。


・レイヴンの支払い――――――980ラドル(終了)


・アミーナの支払い――――――1200ラドル(終了)


・クックルの支払い――――――1560ラドル(更新中)


・アルの支払い――――――――13050ラドル(更新中)


 なんか一つだけ桁が違う。


 さらにアルの方へ目をやると、どんぶりやら小さい鉄板やらが数枚積み上がっているので決して見間違いなどではない。


「ステイス君、驚いてない?」


「・・・アルは小食かと思っていたがな」


「初めはみんなそうさ。そのうち慣れるよ」


「そういうものなのか・・・」


 そんな会話をしていると、ふとレイヴンが気づく。


「アルは左利きか?」


「あれ?知らなかったのかい?」


「ああ」


「両方とも利き腕みたいに使えるけど、元は左利きらしいよ?」


「・・・・・・そうか」




同じころの隊長書斎――――――


ノックの後ドアがギィと開く。


「よう。呼んだかい?」


 現れたのは伊達眼鏡に銀髪の男―――ロイドだ。いつもの着くずした制服に身を包んでいる。


「うむ、待っておったぞ」


 カリスマンが迎える。


「もう少し病室で天使たちと過ごしたかったんだがなー」


「そういうでない。お主の意見が重要なんじゃよ」


「はいはい。言いたい事は分かってるさ」


「なら話が早い」


 カリスマンが手元のキーボードを数回たたくと、巨大な空間ウインドウが部屋の中央に出現する。


 そこに映し出されていたのは、バルフィリカでの市街地戦で【ディオン】が赤い機体と交戦した時の映像記録だった。


 【ディオン】以上の機動力と圧倒的ともいえる近接時の攻撃力。通常のパイロットなら対応すらできないだろう。実際、ロイドの【ディオン】が2回も大破寸前まで追い込まれている。


「どう思うかの?じかに戦って」


 その映像を見ていたロイドの表情は先ほどとは正反対に冷めていた。まるで別人のようである。


「どうもこうもない。あいつの戦い方と同じ・・・いや、多少アレンジが入ってるからほぼ同じってことか」


「生きておったか・・・・・・」


 ウインドウが消される。


「あの状況下で生き延びてるなんてどこまで神様に愛されてるんだか・・・」


「とはいえあくまで仮説の域を出ておらん。一応本部にはかけあってみるが、いまそれどころではないだろうのぉ」


「アル達には言ったのか?メイス=フルーレンが脱獄したってのは?」


「まだじゃ。メイスの行方が全く予測できんからの。下手に騒ぎを大きくはできん」


「・・・ひとつ、頼みたい事があるんだが」


「なんじゃ?秘蔵の酒は分けてやらんぞ」


「ちげーよ。【ディオン】の装備についてだ」


 何でもない事のように尋ねるロイドに対し、カリスマンの表情は曇った。


「・・・・・・また寿命を縮める気か?」


「説教を聞く気はねえぞ」


「・・・・・・あれは条約に違反する装備なのでな。ソリスほどの男でなければそうそう許可が下りるものではない」


「じゃあ急ぐように伝えとけ」


 それだけ言うとやれやれとばかりにロイドは踵を返した。


「・・・死に急ぐなロイド。彼女がお主に残した言葉を忘れるな」


 その場から去ろうとする男の背中にそう言葉を投げかける。するとロイドは立ち止まった。


「・・・・・・・俺は生きてる人間だぞ。生きてる奴が死んだ奴の言葉に振り回されるなんて冗談じゃねぇ・・・」


 そう言って再び歩き出した男の背中はどこか孤独に見えた。







ところ変わって、新7番隊基地の特別格納庫内――――――


「カイさーん。早いとこ観念してくださいよー」


「ええいっ若造ごときが!何度言ったらわかるんじゃ!ワシは断じて妥協せん!」


 巨大な布の足元で迷彩服を纏った老人が叫ぶ。どうやって動かしたかは知らないがそこらのコンテナやら重機やらでやたら頑丈なバリケードが組まれている。どこからどう見ても徹底抗戦の構えだ。


 しかもそこら中からのぞくマシンガンやらガトリングガンやらには安全装置がかかっていないのである。


「いや、そうじゃなくて危ないですって。せめて火器の安全装置ぐらいかけてください」


「ふん。安全装置をかけた瞬間に鎮圧する気じゃろーが。年寄りだからと言って甘く見るな」


「もう3日ですよー?『ピチピチで20代半ばの胸のでかい若い娘』なんてそうそう居るもんじゃないですよー」


「ワシの存在する世界に不可能はなーいのじゃ!」


「現実逃避はやめましょうよー」


「だーれが現実逃避じゃい!」


 別の意味で凶悪なテロリストと交渉するより厄介だと若い隊員のジェルズ=トートはしみじみ思っていた。


 彼の専門は戦闘ではなく、諜報活動や交渉(ネゴシエート)である。若くしてこの職に就いている彼は、間違いなくプロフェッショナルだ。


 伝説のカリスマとさえいわれるソリス=J=フィアレスから直接『新7番隊基地』配属の辞令をもらった時は、光栄すぎて胸を躍らせていたが、着任最初の任務にまさか『新型機に執念で張りつく技術者をなんとかしてくれ』と言われるとは思いもしなかった。


 交渉を開始してもう3日目。あらゆる方面からもてる交渉術を全て試したがこのじーさんには、どれも全く効果がない。自分もまだ未熟だ。


 向こうは全く休んでいないはずなのになぜかこちらの方が疲れている。しまいには、


(もう放っておいた方がいいんじゃないだろうか・・・・・・)


などと、交渉人(ネゴシエーター)らしからぬ事を考え始めちゃっていた。


 そんな時、格納庫の入口が開き、ソリスが入ってきた。


「どんな調子だ。ジェルズ?」


 あいも変わらずだろうな、と思いつつもソリス=J=フィアレスはそう尋ねた。


「す、すいません!どうも力不足で・・・」


 恐縮しながらそう答えると、ソリスは、ハハ、と苦笑いした。


「カイさんは言い出したら聞かない人物だからな。別に君の力を疑ったりはしないさ。そこで吉報を持って来た」


「吉報?」


「該当者が見つかった」


「本当ですか」


「フフ、ワシの勝利。びくとりーというやつじゃい」


 カイは堂々と勝ち誇った。ジェルズはなんとなく敗北感を味わった。


「一体誰なんですか。該当者って?」


「後で説明する。とりあえずは休んでくれ。お疲れだろう?」


 気になりつつも、疲れている事は確かだったのでこの場は引くことにした。


「じゃあ、お言葉に甘えて。失礼しました」


「ご苦労」


 敬礼のあと、ジェルズがその場を離れるのを見送ると、ソリスは改めてカイの方を見る。


 まだ、キャンプ用品を片づける様子はない。『該当者』が訪れるまで居座るつもりらしい。


 ソリスもその事を責めようとはしなかった。こういう人だと分かっているからである。気になっていたのは『新型』と言われる機体の方だ。


 性能や設計コンセプトなどは書類で見たが、実際に機体そのものを見た事がない。今現在も布がかぶせられており、黒い塗装の足先以外はうかがい知る事はできなかった。


「気になるか?」


 ランプの火でお湯を沸かし始めたカイがそう尋ねる。


「気になって当然でしょう。テストの後は量産ラインにのせるかの議論をしなければならないんですから」


「こいつはワシが造ってきた中でも最高に近い芸術品。お前さんほどの奴でもほいそれとは見せんぞ?」


「分かってますよ、プロフェッサー。ですが条件がピンポイント過ぎるのでは?」


「なんじゃ気づいておったか」


「ええ。『ピチピチで20代半ばの胸のでかい若い娘』に専用OSの『左利き』が加われば、分かりますよ・・・」


「フフフ、察しの通り。こいつはアルちゃんのために造った『専用機』。ゆえに他のパイロットでは扱いきれんぞい」


「私はプロフェッサーを扱いきれないんですが?」


「そして、専門的な整備ができるのはこのカイ=アドフストのみ!つまり、ワシは機体と共に0番隊基地へ旅立つチケットを得るわけじゃ!」


「それがねらいですか・・・」


「ここは野郎ばかりで息が苦しい。女性(さんそ)をギブミーじゃ。死んでしまう」


「男が二酸化炭素みたい言い回しですね」


「0番隊基地はアルちゃんがおるばかりか、女性隊員も多いそうではないか」


 そうなのだろうか?、とソリスが考える。


「しかも、あの女たらしの小僧は0番隊基地所属と言う。なんと羨ましい!」


 女たらし?ああ、ロイドの事か・・・。


「なんとしてもこの作戦は成功させなければならん!我が野望のために!フハハ」


 まあ、性格はともかくとして短期間で新型の設計から開発までを行うカイの腕は高齢になった今でも衰えを全く見せていない。


 カイ=アドフスト。戦争時代からG・F(ギア・フレーム)の設計・開発に貢献し、技術者達をまとめ上げた伝説的人物で『創造者』の異名すらある。だが、活躍ばかりが知られ過ぎて世間では『博士っぽい人』というイメージが定着し、実際とは正反対の人物像が構築されていたり、中にはすでに故人とかいうウワサまでたってしまっていたりする。


 だが肝心の本人は―――


「フフフ。待っておれピチピチギャルたちよ。今、ワシが行くぞい!」


迷彩服を着た単なるエロじじいであった。







 様々な思惑とは別に新7番隊基地を遠くの岩山から監視している影があった。


「・・・新しい基地もだいぶ出来上がってきたな・・・例の新型とやらはどこにあるんだか・・・・・」


 そんな呟きをもらすと、無線から声がした。


『こちらアルファ1。どうだアルファ3。新型は確認できたか?』


「こちらアルファ3。新型は格納庫から外に出てこない。ロールアウトどころかテストもしていない様だな」


『アルファ1。了解した。決行は明後日に決まりだな。アルファ4を交代によこす』


「了解。で、あいつらの調整は?」


『ほぼ終わっている。若干問題はあるが、戦闘が始まれば心配はない』


「わかった。まだ隊員が満足にそろっていない今が好機だ」


『ああ。明後日がソリス=J=フィアレスの最後だ』



彼方からの声、更新しました。物語は新しい展開へ。今回の目玉はアルの専用新型機。起動シーンとかカッコよーく書いていきたいですわ、ほんと。一応【ブレイズ・ソウル】君はお休みの予定です。まあいろいろありましたので骨休みみたいな感じで。では読んでくださってるみなさん、ごきげんよー。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ