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僕と君と僕らの幸福  作者: lie
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 冷たく乾燥した風が、山を降りて来て僕たちの町に吹き込んでいる。

 

 窓から下を覗き込むと、洗濯物が風に揺らされている。視線を再び机に戻すと、見るだけでやる気を削ぐ厚さの問題集が広げられ、その隣のノートの上にはシャーペンが放り投げ出されている。

 

 ここで一言、「いや、こんなん絶対に終わらねーよ」と呟いてしまう僕はやはり集中力が足りないのだろうか。しかし、もうそんなことを言っている時期ではないことくらい、この愚かな僕でも重々承知している。

 

 もう僕は中学三年生、そして今は一月中旬だ。すなわち、受験に向けて追い込みをかけ始める頃で、願書提出も来週に迫っている。しかし、その現実感や危機感という物が全く沸いて来ないのも事実。なぜなら、まだ志望校が決まっていないのだ。

 

 確かに、行ってみたいと思う高校もいくつかあるが、うちの担任の山川先生がいう、「高校は、自分が幸せになれるかどうかをよく考えてから決めなさい」という言葉が、いつも僕の心の内で引っかかっているのだ。僕たちは高校に入って、本当に幸せになれるのだろうか? 今までずっと一緒にやってきた奴らと別れてまで得ることのできる幸せとは、どのくらいのものなのだろうか? そんな風に、僕はいつも思ってしまうのだ。

 

 いや、わかっている。所詮、僕は今まで慣れ親しんできた奴らと別れて新しい環境に行くのが怖いだけなのだ。しかし、僕だっていつかは高校生になる。いや、「いつか」じゃないな、三カ月後だ。

 

 まあ、ひとしきりそんな事を思ってから、さあ勉強するぞと思ってもそうはいかない。危機感がわかないものはわかないのだ。じゃあ、危機感を抱くために志望校について決めるために相談しに行きますか、といつものようにこじつけの理由をつけ、僕は出かける用意を始めた。

 

 財布と鍵をポッケにねじ込み、腕時計をつけて、親に一声かけて外に出る。自転車を道路まで引っ張り出してサドルにまたがると、時間を確認した。


 「2時半か…。あいつが図書館にいるかな」


と呟いて、図書館にいるはずの慣れ親しんだ奴に会うために、自転車を漕ぎ始めた。


 5分ほど自転車を飛ばすと、町外れにある図書館に着いた。公共施設にしては交通の便が少々悪い気がするが、まあそこは仕方がない。自転車を駐輪場に止めると、僕は図書館の中に入っていった。案の定、そいつは図書館の人間・社会スペースにいた。とりあえず、声をかけてみる。


「やあ、桜空。そんなところで何を調べているの?」


すると、桜空は振り返り、言った。


「僕は受験のために社会の勉強中さ。そうゆう星咲は? 志望校の相談かい?」


「そいつはもちろんのこと、後勉強のやる気を出してくれると、とっても嬉しい。」


「君は相変わらずだね…。まあ、僕もこの調べものには飽きてきたからね、いいよ、相談に乗ってあげるよ。」


「そもそも、なにについて調べていたのさ?」


「各国の人間性が社会にどのような影響を与えているのか、また受けているのか、それによって人はどのように生活様式が変わって行くのか、そもそも人はどのように生きるのが最も幸せなのだろうか………」


「うん、もうわかったからいいや。ありがと。」


「そっか。残念だな。」


危ないところだった。こいつはこうゆう奴だったな。将来の夢、社会哲学者だったっけ。話始めると止まらない奴な。


「さてと、星咲はどうする?僕一人でもいいけど、後二人も集めるかい?」


「いや、あの二人は今どこにいるか分からないからな。」


「それもそうだね。と言おうと思ったけど、どうやら向こうから来てくれたみたいだ。」


「なぬ。」


 僕は慌てて後ろを振り返ると、二人の男女が歩いてこちらに向かっていた。隆時と雨鳥だ。


「ヤッホー! やっぱりここに居た! さすが隆時!」


「俺は何も言ってないぞ。雨鳥が勝手に走っていっただけだろう。」


「そういえばそうだったね! さすが私!」


いきなり現れた二人に僕が戸惑っていると、桜空が反応していた。


「お疲れ、お二人さん。毎度のことだけど、星咲の進路相談だよ。ここではなんだし、話す場所を変えようか。」


「そうだね! 私向かいのカフェがいい!」


「わかったから、お前は少し静かにしようか。」


僕はこめかみを抑えながら、それだけ言うのだった。



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