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婚約破棄された令嬢は、王家契約の鍵として王弟殿下に選ばれました  作者: 佐藤なつ


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封じられしものとは

王都の北門。


人気がない通りを選んで、馬車が進む。


「ねぇ、方向が違うんじゃない?」

ロゼリアは不思議がって聞いた。


「あぁ、転移陣に向かっている。」

「えぇ?それも通り過ぎちゃったわよ。」

「正規のじゃなくて、俺が若い頃に整備したものだ。」

「何それ、年寄りみたいな言い草。」

「うるさいな。」

軽口を叩きながらも空気は張り詰めている。

「エルドは遺跡近くの臨時救護所にいる。表向き”監視下療養”としてな。」

「監視・・・。」

ジトッとした目でロゼリアに見られてアルヴィンは手をヒラヒラ振った。

「そういう大義名分が無いと、面会謝絶に出来ないだろ。」

「そうだけど。」

「大事なのは、命を守ることだ。」

ロゼリアは渋々うなずいた。

「ところで遺跡は一体なんだったの?」

アルヴィンは一瞬言葉を選ぶように視線を彷徨わせた。


「建国時の話だ。初代王が代償を払ってある”存在”と契約を交わし、力を得た。」

「その力で、災いを払った。代わりに力を貸した存在・・・神は力を無くし、眠りについた。初代王は神が安らかに眠れるように祠を建てた。・・・子供でも知ってる絵本でしょ?」

子供の頃から読まされる建国話の一つだ。

「いや、本当なんだ。」

「え……じゃ、その祠が・・遺跡?」

「そうだ。」

「なんで、アルノー伯爵家の土地に?」

「アルノー家は100年前に、王家から姫が降嫁しているからな。その時に何かあったんだと思う。」

「何かって?!雑・・。」

「仕方ないだろ、資料が焼失しているんだ。」

「えぇ……じゃあ、本当なの?代償とか、神とか・・。おとぎ話だと思ってた。」

「その代償も本当なんだ。」

「代償は何なの?」

「”血”だ。」


「え……?」

馬車内が静まりかえった。

アルヴィンは真面目な顔で続けた。

「残った資料から見ると、ある”存在”に血を捧げたらしい。だから、封印を解くのにも血が必要だ。王家の血と、契約に関わった者の血。二つが重なって封印が解かれるらしい」


「今回、俺とエルドが調査に行って、封印が開いてしまった。」

「え……って事は、王族の血はアル兄だけど、契約に関わった者・・って父さんなの?」「その可能性が高い。」

「えっ……だって、ウチは代々平民で。」

「でも、魔力は多いだろ。センスもある。」

「え……え~え~。ちょっと信じられない。」

「それよりも問題はロゼだ。お前も血縁だろ。狙われてしまう。」

「いやだ。ちょっと整理できない。」



「着くぞ。」

馬車が停まり、降りると古びた礼拝堂の裏口だった。


人影はない。


地下へと続く石階段を降りていくと、淡く光る魔方陣が広がっていた。

「結構、立派なのね。」

「お前は、初めてだったな。」

「父に理論だけは習ったけど。」

「実戦はない・・か。俺の側を離れるなよ。」

陣が起動する。

美しく黄金色に輝いていく。

足元から光が立ちあがった。


その瞬間。

空間が歪んだ。


「伏せろ!」

アルビンはロゼリアを抱きよせた。

上から黒い刃が降りそそいだ。

金属ではない。

影そのものが刃になっている。


避けることは出来たが陣に立ちあがった光は消えてしまった。

「くそっ。妨害されたか。」

「甘かったな。アルヴィン殿下。」

冷たい声が響いた。


闇から現れたのは黒装束の男。

口元も覆われて目しか見えないが、だが、その背格好には見覚えがある。

何より、纏っている魔力の色に記憶があった。

「あなた、ディアンの従者ね。やっぱり魔術師だったの。」

「良くわかったな。元男爵令嬢。」

あざ笑われて

「婚約破棄の演出は気に入って頂けたかな?」

「あなたが?アルノー伯の命令?」

「誰がやったか、知る必要はないだろう?」

言葉を濁された。

「さて、お二人は包囲されていますよ。大人しくついて来てください。」

「二人?」

「封印を解くのにはお二人が必要。そう仰っていたじゃないですか?」

口元が覆われていても声色で笑っているのがわかる。


「なんで大人しくついていくと思うのよ。」

返事の代わりに影の鎖が伸びてきた。

アルヴィンが切り払う。

だが、動きが鈍い。

数も多く防御で手一杯になってしまう。

「もしかして、怪我、治ってないの?」

「かすり傷だ!問題無い!」

そうは言うが、明らかに精彩を欠いている。

「何か、私に出来る事。」

ロゼリアはキョロキョロした。

だが、レベルが違う。

下手に動けば囚われてしまうだろう。

庇われたままで焦れていると、アルヴィンが叫ぶ。

「ロゼ!陣の再起動は出来るか?」

「やってみる。」

ロゼリアは地面に膝をつき陣の一部に手を当てた。

アルヴィンがやっていたみたいに省略しては出来ない。

這いつくばって陣の文字を読み上げていく。


「やだ。ここ、反転してる。」

「何だと?」

アルヴィンは防御しながら視線を落とした。

「くそっ!最初から妨害するつもりだったんだな。」

「用意周到だろう?」


ロゼリアの脳裏に再び父の言葉が蘇る。


ーーー生き残った者が勝者ーー

「アル兄!私を信じて!10秒で。」

「5秒!いや3秒でやれ!」

言葉を遮られた上に無茶ぶりされる。

言葉を返す余裕も無く、指を走らせた。

指先から魔力を迸らせる。

封印を書き換えていく。

一秒、二秒、影の刃がロゼの指先を捉えようとした瞬間。

「出来た!起動する!!」

一気に魔力を流し、陣が光り輝いた。

「良くやった!!」

アルヴィンがロゼリアを抱え、飛び込んだ。


男の叫び声が遠ざかる。

「逃すかっ!!」


視界が白く染まって、次の瞬間、二人の身体は地面に転がった。

冷たく乾いた空気。

砂埃が舞う。


「ここ・・は?」

「遺跡の外縁だな。」

二人は起き上がり、周囲を警戒した。

「成功だ。」

ロゼリアはそのままへたり込んだ。

「無茶言うんだから。」

「お前なら出来ると思ったんだ。」

そんな言葉に胸が熱くなる。


風が吹き、砂埃に包まれ、むせてしまう。

砂埃が消えた後には巨大な岩が見えた。


「あそこ?」

「そう。あの下にある。」

「なんか、光って見える。朱い光。」

ロゼリアの目には良く見えた。

その朱い光が古代文字を示しているのも。

「なんか、目が変。見えるはずないのに、見える。」

「あの時のエルドと同じだな。やはり。お前にも資格があるのだ。」

そこから二人は吸い寄せられるように岩のもとに。

近寄るほどに、文字の発光は強くなっていく。

それは、文字だけじゃなく不思議な紋様も浮かび上がって、それは広がっていく。


ロゼリアの胸も何だか熱く、どくんどくんと身体の中で心臓が脈打つ。

アルヴィンも胸元を押さえている。

同じなんだとロゼリアは思った。

アルヴィンもロゼリアを見て、

「やはり。ロゼも同じだ。」

閉じられていた扉が開く。

岩の重なった場所がギシギシと軋む。


ギギギと。

重々しく開き、中に入る。

光が溢れて消えた。


そこにピョンと現れたのは……。


「ふぇっ?」

ロゼリアは間が抜けた声を上げた。


そこにいたのは巨大な魔物でも、禍々しい悪神でもない。


丸く、ポフポフした、白いものがふかふか浮いていた。


しかも、

「もふぅ・・。」

と、なんとも言えない鳴き声をあげた。


「も、もふ??」

思わず繰り返す。

すると、丸いモフモフはロゼリアの方に向き直った。

ふよふよ浮いてロゼリアの真ん前まで飛んでくると

耳をピコピコ震わせ、短い手足をプラプラさせながら、ほぼない首をかしげた。

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