表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この町ってなんなんだ!  作者: 朝山 みどり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/24

09 何かある!

僕は、手伝って貰い始めてからも毎日が変わらず忙しかった。月曜日から木曜日までは放課後サッカー部で汗だくになってボールを追いかけて、金曜日は弓道部に顔を出して弦を引く。土日は聖一郎さんから剣道を習った。夜は机に向かって、教科書。参考書。ノート。全部のページを忙しくめくる。


 手伝って貰ってから、確かに全部が少しずつ楽になった気がする。ボールは足に吸い付いてくるし、弓も当たるようになった。竹刀も空を切るばかりじゃなく、相手の胴を打てる。勉強だって、前よりずっと頭に入る。自分でも、少しは成長したって思えた。


 だから、この前の期末は嬉しかった。ちゃんと結果がついてきて、聖一郎さんも「よくやった」とだけ言ってくれた。光子さんはお茶とお菓子を一つ多く出してくれた。僕は、思わず机の下でガッツポーズした。


 そして夏休みを前に、時間に少し余裕が出て来た僕は歴史に目を向けた。

 この町には昔からの大きな家がいくつもあるから、さぞや資料がたくさんあるだろう。我が郷土を誉めまくる記録とか、日記とかがあると思ったんだ。

 だが、図書館で郷土史を探しても何にも出てこない。

 三千院の家みたいな屋根の大きい家がいくつもあって、神宮寺とか不知火とか、すごい苗字の同級生が平気な顔して学校に通ってるのに、我が郷土に関しての記録がない。こういう時のネットだが、うちには回線がない。この町にネカフェはない。僕のスマホは調子が悪い。


 僕は昔からこういうのをほっとけない性分だ。だから少し時間が出来ると、町の図書館に行って郷土史の棚を隅から隅まで見た。でも、新しい観光案内のパンフレットと昭和の町並みの白黒写真が数枚あるだけで、僕が知りたい昔のことは何もなかった。


 市役所にも行った。古い資料を探してますって窓口で言って、職員さんに案内して貰ったけど、そこも同じだった。「他の町には資料がある?そうなんだ。でもここは・・・聞いたことがないですねえ」って笑われたときは、ちょっと悔しかった。


 なんで何もないんだろう。こんなに古い家が残ってて、武家の屋敷みたいな石垣だってあるのに、記録がないなんておかしい。僕は思わず母さんに話したくなったけど、電話に出ない。もう、海外に行ってるはずだけど、なんの連絡もない。

 そのことは僕の胸に重い塊となって存在している。そして日毎に重く、大きくなって行くが僕は目を逸らしている。


 夏休みに調べ直そうと決めた。学校がない分、時間はいくらでもある。サッカーの練習もあるし、剣道も弓道も続けなきゃだけど、できるだけ早く、県庁のある花筏市まで足を伸ばして、もっと大きい図書館に行ってみるつもりだ。


 僕は自分の机にノートを広げた。表紙には『雫野原郷土史調査ノート』って書いた。字はまだ下手くそだけど、ちゃんと調べたことを残さなきゃって思った。


 まずは何を調べるか。

 一、町の成り立ち。

 二、三千院の家の蔵を見せて貰う。これは血筋じゃないとダメだって・・・

 三、神宮寺、不知火、紫苑みたいな苗字の家の由来。

 四、何故、記録がないのか?


 書いているうちに、わくわくしてくる自分がいた。やっぱり僕はこういうのが好きなんだ。本棚の一番上の段には、幕末や戦国の分厚い本がずらっと並んでる。この町の歴史だって、そのどこかと繋がってるはずだ。


 侍が夢に出てくるのってこの関係だったりしないよね。あれは僕の深層真理の表れだよね。

 あの人は僕だよね。僕は自分を助けているんだよね!


 部屋にずらっと並んだ本を見る。聖一郎さんが買ってくれた立派な本棚に並んでいる。一冊抜いて表紙を撫でた。この一冊ずつが、きっと僕にヒントをくれる。ページをめくれば、どこかに答えが隠れてるかもしれない。


「普通のままじゃ終わらせない」

 僕はそう小さく声に出した。部屋の外から風が入ってきて、ページがぱらっとめくれた。


 あの侍も、僕にそう言って笑ってる気がした。


 よし、夏休みはすぐだ。僕はこの町を全部調べてやる。山本航平の名前で、全部暴いてやるんだ。



いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。


どうぞよろしくお願いいたします。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ