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この町ってなんなんだ!  作者: 朝山 みどり


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18 お家騒動

 僕は江戸時代の政治について本を読んでいた。

 すると天領の二文字が目についた。天領と言えば、佐渡金山。観光地だ。それとお家騒動。え?お家騒動・・・

 僕は本を閉じて立ち上がった。

 天領の二文字が、頭の奥で小さく光っている気がした。

 お家騒動。僕の胸の中で何かが弾けた。

 ずっと探しても見つからなかった、この町の何か。

 それが「お家騒動」って言葉に結びついた。


 僕は居間に入った。聖一郎さんが新聞を読んでいた。


 いつものように姿勢が綺麗だ。胸がドキドキしてる。

 言葉が出ない。勢い込んでやってきたけど、何をどう聞けばいいのか、頭の中でぐるぐる回ったけど、何もまとまらなかった。


 でも立ち止まるのが嫌だった。


「聖一郎さん、僕・・・その少し話してもいい?」


 聖一郎さんは顔を上げて、小さく頷いた。目尻が少しだけ下がって、優しい笑顔になる。


「どうした、航平」

 声が優しい。


 その声に勇気を貰って僕は

「僕、お家騒動について知りたくて」


 口に出した瞬間、心臓がドクンと跳ねた。

 頭の奥が熱くなる。何を聞いてるんだ、って自分で思った。

 だって、お家騒動で、負けた側だったりしたら・・・そうだったら聞かれたくないかも?

 聖一郎さんは驚いた顔をした。

 目がほんの少し大きく開いて、すぐに細くなる。

 やっぱり、失礼な質問だったんだ。でも撤回できない。だって口にしたし・・・


「お家騒動か?」


 静かに言った声に、僕は小さくなった。怒られると思った。

 聖一郎さんは僕を見て、ちょっと不思議そうな顔をして


「航平、そうか、お前は何も知らないか。そうだな・・・前からここにいるわけじゃないか」

 と言うと

「そうか、そうか」と小さく呟いた。


 言葉が胸に刺さるみたいだった。何も知らない。

 図書館にも、市役所にも、花筏市まで行っても、何もなかったんだ。

 だからこうして、やっとここまで来たんだ。


 だから教えて欲しい。僕は祈った。聖一郎さん教えて。


「そうか、話してないんだな。高志郎も」

 と言うと、しばらく、聖一郎さんは何も言わなかった。

 静かな時間だけが流れて、僕の膝の上で手がじっとりと汗ばんだ。


「それはな・・・」と聖一郎さんは話し始めた。


「・・・と言うことだ。あいつら、御維新に助けられたんだ。明治政府もなかったことにしたんだ」

 遠くを見ながら聖一郎さんは言い終えた。


 それから僕をしっかりとみると

「いいか、航平。まだ無念は晴らされてないんだ。決して忘れてはいけない。

 いいか?航平。血筋ではないが、三千院の心を持っている。だから知って欲しい。明日、蔵を案内する」



 心臓が飛び跳ねた。

「いいの?」


 思わず小さく呟いた声が、自分でも頼りなくて笑いそうになった。

 聖一郎さんは笑わなかった。真剣な顔のまま、僕をまっすぐ見た。


「お前が選んだ道だからだ。知りたいのだろう、航平」


 頷くしかなかった。頷いたら、喉の奥が熱くなった。


「おや、二人、仲良く話していたの?」の声で喉が普段通りになった。


「久しぶりに蒸しパンを作ったのよ。どうぞ」と光子さんがテーブルに蒸しパンの乗ったお皿を置いた。

「航平さんは飲み物は何がいい?」

「牛乳。自分で注ぎます」と僕は立ち上がった。


 レーズン入りとさつまいも入り。僕はどちらも食べた。美味しかった。


 時代が移る時に起こったお家騒動。時代に助けられたのか?

 普通だったら、お取り潰しになっている。

 でも、その時代だったら、写真とかあったりしない?余計に記録があるのでは?


 明日、その謎が解ける。明日、侍の鼻を明かしてやる。

 でもちょっとだけ、手伝ってくれてもいいかなって、心の中で思った。

 ・・・いや、やっぱり自分でやる。

 僕は僕の名前で、この町のことを全部暴いてやるんだ。



 ◇◇◇◇◇◇


 江戸時代には、天領という呼び方はなかったようですが、ここではよく知られている呼び方を使っております。

いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

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どうぞよろしくお願いいたします。



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