表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この町ってなんなんだ!  作者: 朝山 みどり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/24

16 サッカーの試合

今日は隣の市の中学とサッカーの練習試合だった。

 朝から少し曇ってて、夏なのに風が冷たかったけど、グラウンドに立つと、僕の背中に熱が集まってくるみたいに感じた。

 相手チームの子たちが集まりながら

「なんか体が重いな」って言ってるのが聞こえた。

 この町は山の中にあって、標高が高いから空気が薄いのかもしれないって一瞬思ったけど、すぐにそんなこと忘れてしまった。

 試合が始まればそんな言い訳なんか通用しないんだから。


 僕の足元には芝じゃなくて土の匂いがある。

 東京でやってたグラウンドとは違う。

 この土の上で、どれだけ走れるかが勝負だ。そして僕は誰よりも走っている。


 相手は強かった。ドリブルも速いし、パスも正確だ。

 でも、僕の足は止まらなかった。常に目の隅に相手を置いて警戒する。

 この町に来てから、夢の中であの侍に手伝ってもらうようになって、ちょっとずつだけど本当にボールが足に吸い付いてくるようになった。

 見てなくてもポールがどこにあるかわかる。足がボールを見ているようだ。

 気持ちの問題かもしれないけど、それでいい。僕は僕の足を信じる。


 試合の前半は押され気味で、僕も何度かボールを奪われた。

 悔しくて、何度も舌打ちしそうになったけど、ベンチの向こうの聖一郎さんを思い出してお行儀よくした。

 見てるんだ。みっともない真似はしない。僕が東京から来て、ここで何ができるか見てくれてるんだ。

 背中が少しだけしゃんとした。


 ハーフタイムのとき、相手のエースみたいな子が「ここの空気が重いんだよ」って言ってるのが聞こえた。

 心の中でちょっとだけ笑った。

 僕だって最初はきつかったけど、走って、倒れて、息が切れるまで練習してきたんだ。

 ここじゃ僕が一番走れるんだって、そう言えるようになりたいんだ。


 後半、相手チームが受け損なったボールが僕の足元に転がってきた瞬間、頭の中にボールと僕とゴールが浮かんだ。

 相手のディフェンスが二人、僕の前に立ちはだかった。

 でも、視界の端にゴールが見えた。いける。道はある。

 足を後ろに引いて、思い切りボールを蹴る振りをして、相手の股を抜けるようにトンと押し出した。

 同時に僕も前にすり抜けた。

 もう一人が慌てて寄ってくる。

 こっちは一歩先にボールをちょんと外に出して、体を思い切りひねった。



 相手のゴール前は、音がなくゆっくりとキーパーがこちらへ動いた。

 キーパーの息が荒いのがわかる。

 ネットをボールが揺らすのか見えた。


 蹴る。蹴った瞬間、砂が飛んだ。

 ボールが弧を描いて、キーパーの手の先をかすめていった。

 ネットがバサッと揺れて、遠くの味方が「ナイス!」って叫んでる声が聞こえた。


「よっしゃ!」


 思わず声が出た。

 足元の砂を軽く蹴った。

 相手のディフェンスが悔しそうにこっちを睨んでたけど、もう怖くなかった。

 僕は、この町でちゃんとやれてる。

 空気が薄い?体が重い?条件は同じだ。

 そんなの関係ない。

 僕の足はここで動ける。

 誰が相手でも、この土の上で走ってやる。


 試合は、僕らの勝ちだった。

 相手のキャプテンが悔しそうに首を振りながらも、僕に手を差し出してきた。


「君、上手だね、足も速いしボールに好かれている?」と言いながら、二パッと笑った。


 僕も手を握り返した。

 心臓の奥がまだドクドクしてたけど、その言葉が全部が嬉しかった。



 ベンチの隅で水を飲んでると、少しだけ空が高く見えた。

 山の上の空は広いんだなって思った。


 この町に来たとき、いろんなことが怖かった。

 勉強もついていけないし、サッカー部だって最初は笑われてばかりだった。

 でも僕は走り続けてる。誰にも馬鹿にさせない。


 僕は『山本航平』普通の苗字『山本』だ。この名前で、この町のグラウンドで、何度だってゴールを決めてやる。



 よし、明日も負けない。

いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。


どうぞよろしくお願いいたします。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ