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この町ってなんなんだ!  作者: 朝山 みどり


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11 山本くんとサッカー 黒川美鈴目線

サッカー部の試合なんて、最初はそんなに興味なかった。だけど、今日は違う。あいつが出るって聞いたから。

 山本くんが・・・

 バレー部の練習はちょっと置いといて、みんなで見に行った。


 都会から来た転校生。最初は、軟弱そうな子だと思ってた。優しげな目をしてて、ちょっと線が細くて、でも真面目で、なんというか、弱そうなのに変に我慢強いところがある。それが逆にイラッとする時がある。


 試合は、思ってたより激しかった。部内の紅白戦だけど、不知火圭一がまるで敵を潰すみたいな動きで山本くんに絡んでいく。肘で押したり、わざと足を引っかけたり。


「うわ、感じ悪っ」思わず声が漏れた。


 でも、驚いたのはまわりの声。


「不知火、手ぬるいぞ。もっと行け!」

「おいおい、都会っ子なんてすぐ泣くって」


 そういう言葉が、笑い声に紛れてベンチの方から聞こえてきた。

 見物人の中からも聞こえてきた。それは仕方ないと言えば仕方ない・・・当然かな?



 その中に混じって、また別の声があった。

「けど、あいつ意外とやるじゃん」

「うん、最初は舐めてたけど、足元しっかりしてる」

「さすが三千院。やっぱ違うんだな」


 その一言に、私はぐっと唇を噛んだ。

 さすが三千院?


 あいつの名前は山本。三千院じゃない。

 なのに、そうやって繋げてくる。それが、なんだか嫌だった。


 そのくせ、山本くんが不知火を抜いてゴール前に走り込んだ時のあの動きには、私も目を奪われて、さすがって思った。さすが三千院って・・・人のことは言えない。

 スピードもあったし、読みも鋭かった。たしかに上手かった。悔しいけど、上手かった。


 ゴールが決まった瞬間、ちょっと胸が熱くなった。ベンチの子たちはさらに騒ぐ。


「三千院の血だよな、絶対」

「高志郎さんの義理の子だっけ?そりゃあ、運動神経も筋金入りか」

「それって他人だよ」

「でも、あそこに住んでいるんだよ」

「そうだね」


 不愉快だった。自分でもさすが三千院って思うのに、他人が言うと不愉快・・・どう言うこと?



 だって、山本くんは、ここに来て、毎日必死でやってる。部活も勉強も、皆に追いつこうとして、がむしゃらにやってる。家のことで何かあるってことも、きっと、ある。


 それなのに、三千院だから。それで片付ける?


 そう思った瞬間、自分の中に熱いものがこみ上げてくるのを感じた。



 どうして、そんなに腹が立つの?どうして、こんなに・・・


 私、何を見てるんだろう。


 確かに不知火は三千院に突っかかるだろう。剣道でもやたら張り合っているし、勝負事になると急に声が大きくなる。そういう子だ。


 でも、今日の不知火は、いつもと違う。何故?


 そうだ。山本くんが原因だ。やり返しているからだ。だから不知火がいつもより荒いんだ。



「なんで?」ふと、小さく呟いた。


 なんでわたしはこんなに、心がざわつくの?


 三千院の名前を出されて、ムカついたのは何で?

 都会から来たって馬鹿にされるのを、腹立たしいと思ったのは何で?


 わたしは、ただ見てるだけじゃない。心が、動いてる。きっと、それだけじゃない。


 ゴールを決めた山本くんが、皆に囲まれて水を飲んでいた。

 わたしの方には気づいていない。


 それでいい。今はまだ、それでいい。



 試合が終わって、夕日がグラウンドの端を染めていた。


 わたしは、ずっと黙って見ていた。叫びたくなるような言葉も、唇の奥で飲み込んだ。


 次、またこういう試合があったら、きっとまたわたしは見る。


 でも、次は少し違う気持ちで見ると思う。


 だって、わたしは自分の心を知ってしまったから・・・

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