表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蠱毒  作者: 志に異議アリ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/5

第4話 祈り



新聞の片隅に小さな記事があった。

[少女、夜のビルから転落 医師の処置疑惑]

たったそれだけの文字。

でも私は、すぐにわかった。


神は、この世にまだいたのだと。

汚れた街の、薄暗い夜の片隅に。


私は教会で祈るのが好きだ。

蝋燭の炎を見つめ、ひとりの少女のために心を震わせる。

その記事を読んだ夜も、私は膝を折り、手を合わせた。

「どうか、あの子をお守りください」


でも、祈るほどに、心はざわめいた。

少女は助かるのか、死ぬのか。

神は本当にいるのか、いないのか。

私の祈りは、誰のためのものなのか――。


教会の空気は、静かに重い。

周囲の人々は皆、知らない。

私は知っている。

少女の命の行方が、私の祈り次第で揺れることを。


その夜、夢を見た。

少女が私を見上げ、泣き笑いの表情で問いかけた。

――どうして、私を助けないの?


私は目を覚ますと、息が荒くなっていた。

祈りは、救いではなく責めになった。

逃げ道を塞ぐ、見えない檻になったのだ。


翌朝、新聞を読み返した。

記事の文字は冷たく、無機質で、少女の痛みなど知る由もない。

それでも私は、同じページを折り、また祈る。

今日も明日も、少女の運命が私の手の内にあるかのように。


「神よ、どうか、私をお許しください」


信仰は救いではない。

信じるほどに、私は少女を縛っていた。

そして、私はその呪いから逃れられないのだ。


「あの子は救われたのよ」

そう繰り返し囁く女の目は赤く血走っていた……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ