アルタリウス・オンライン
「ようこそ、アルタリウス・オンラインへ!」
ヘッドセットを装着した瞬間、目の前に広がったのは鮮やかな緑の森と、澄み渡る青空だった。
『すごい……本当に現実みたいだ』
早坂ユウキは思わず呟いた。最新のフルダイブ型VRゲーム『アルタリウス・オンライン』のリリース初日。学校をサボってまでログインした甲斐があった。
ユウキは軽快に森の中を走り回り、風の感触や草の香りを楽しんだ。
だが、しばらくすると、ゲーム画面に見知らぬ警告文が現れた。
【警告:原因不明のエラーが発生しました。強制ログアウトを実行します】
「え、ちょっと待って!」
焦ってログアウトをキャンセルしようとしたが、指示は無視され、視界が真っ暗になった。
次にユウキが目を覚ましたとき、周囲は静かな森だった。だが、さっきまでとは明らかに違う。風の冷たさ、身体の重さ、そして何よりも、鼻先をかすめる土の匂いがあまりに鮮明だ。
「え……?」
戸惑って立ち上がるユウキ。すると背後から静かな足音が響いた。
振り返った先には、銀色の鎧をまとった美しい少女が、剣を構えながら鋭い視線を向けていた。
「あなたは一体どこから来たの?ここはアルタリウス王国の禁域。立ち入りは厳禁よ」
ゲームのNPCにしてはリアルすぎる声と表情に、ユウキの胸は激しく鼓動した。
――ここは、本当にゲームの世界なのか?
そう疑問を抱き始めた瞬間、ユウキの異世界での物語が幕を開けた。