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お前以外はダメなんだ  作者: 遠藤 敦子
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 7月からネイトたちが日山学園高校に交換留学で来ると尾崎先生から話があった。晶匡は今でもネイトやホストマザーとやりとりを続けており、ネイトと再会できるのを楽しみにしている。

 7月1日、全校生徒が体育館に集まった。カナダ、アメリカ、オーストラリアからの交換留学生たちが日山学園高校の制服に身を包み、横一列になって並んでいる。そこにはネイトの姿もあった。晶匡のクラスにはネイト、アリソン、アンソニー、優香のホームステイ先のシンシア、有明麻歩のホームステイ先のフィリスが来ることになる。

 さすがに尾崎先生も留学生の前では不機嫌な態度は出さないだろうと晶匡は考えていた。しかし留学生たちは別のカリキュラムが用意されているので、晶匡たちと一緒に授業を受ける機会はない。留学生たちがいるときはにこやかな尾崎先生も、英語の授業のときはピリピリしていた。それは生徒たちもそう。晶匡たちはむしろ、尾崎先生の顔色を伺っている感じだった。なぜならば何がきっかけで尾崎先生の怒りを買うかわからないから。

 尾崎先生のコミュニケーション英語の授業中にて、ある男子生徒が課題を忘れてきた。尾崎先生はその男子生徒に強く注意したけれど、彼は尾崎先生に日頃からうんざりしているのか反抗的な態度をとる。

「もうあなたは授業受けなくて良い! 廊下に立ってなさい!」

尾崎先生がそう言うと、彼はだるそうな様子で廊下に出た。クラス中が静まり返っており、晶匡は心の中で「あの尾崎に立ち向かう奴がいるとは……」と驚きながらも彼を称賛する。

 それ以来、英語の授業中は尾崎先生と彼は冷戦状態だ。周辺の者が彼に英語の配布物を回そうとすると、尾崎先生から「先生の授業受けたくないみたいだし、プリント渡さなくて良いから」と阻止される。1週間冷戦状態が続き、「このままだと英語の成績下がるけどいいの? 謝りに来たら許すけど」と尾崎先生が反抗してきた男子生徒に言う。結局男子生徒は尾崎先生に謝りに行き、冷戦状態はなくなった。


 一方でネイトたち交換留学生はというと、晶匡たちとは違うカリキュラムで授業を受けていた。日本語の勉強、習字、折り紙、茶道など日本文化に触れる内容だ。放課後はそれぞれ部活を見学したり、時には参加したりする。部活がない日は晶匡とネイト、雪乃とアリソン、優香とシンシア、友哉とアンソニーが集まってショッピングモールで遊ぶこともあった。このまま時間が止まれば良いのに。晶匡はそう思いながら、ネイトと過ごす日々を楽しんでいる。

 ネイトは晶匡の家にホームステイしているが、平日の学校終わりは一緒にゲームしたり日本語や英語を教え合ったりしていた。週末は晶匡の家族とネイトでショッピングモールや地元の観光地に行っていた。

 が、そんな楽しい時間もあっという間に過ぎていく。ネイトと晶匡が過ごした2週間は過ぎ去るのが早かった。最終日は全校集会でお別れ会が開かれる。晶匡、雪乃、友哉、優香、麻歩のそれぞれが交換留学生に花束を渡した。代表で優香が英語でのお別れのスピーチをする。晶匡たちはもちろん、交換留学生がホームステイしなかった家庭の生徒たちも涙目になっていた。お別れ会はしんみりとした雰囲気で終わる。この後ネイトたちはバスで観光地を巡り、空港に行き、帰国するという。晶匡は休み時間に、トイレでネイトにメッセージを送った。教室でスマホを触っているのが尾崎先生に見つかったら没収されるからだ。


 交換留学生たちのお別れ会でしんみりしていたかと思いきや、生徒たちの切り替えは意外と早かったようだ。

「うーわ、また尾崎の機嫌が悪くなってピリピリした雰囲気に戻るんかよ。マジで勘弁して」

などといって愚痴をこぼす男子生徒たちもいた。晶匡も彼らと同じような内容を友哉と話していたのだ。

 ネイトたち交換留学生が旅立ってからは、晶匡のクラスは日常を取り戻しつつある。英語の授業で指名されて「わかりません」という返答が続くと、尾崎先生の機嫌が悪くなった。

「あなたたちこんな簡単な問題でわかりませんって言うけど、ちゃんと予習してるの?」

「ほら、宿題ちゃんとやってきてないじゃない!」

などと尾崎先生が強い口調で言い、ピリピリした雰囲気になっていく。これはいつものことなので、もはや誰も気には留めていなかったのだ。

 一方で、中谷先生の数学の授業ではいつも笑いが絶えなかった。男子生徒に対しての「お前、女の子に振られたんか?」といういじりはいつものことだ。バスケ部所属でお調子者の小清水誠也(こしみずせいや)が数学の計算問題でミスをしたとき、中谷先生はこう言っていた。

「お前さ、バスケ部退部した方が良いんじゃない? 退部届に『私 小清水誠也は、成績不振のためバスケ部を退部します』って書いとけ!」

言葉だけをとるとアウトな発言かもしれないけれど、中谷先生の冗談めいた言い方と小清水のお調子者な性格もあって、クラス中が笑ったのだ。波平はもともとこんな人だから、という理由で受け入れられていたのだから。

 

***


 晶匡本人はというと、ネイトが帰国してからもやりとりは続けている。雪乃、優香、友哉とは相変わらず仲良しだ。晶匡はいつどのタイミングで雪乃に告白するか悩んでいた。というのも、雪乃との今までの仲が壊れてしまうのが怖かったからだ。高校を卒業する時に告白しようと考えていた矢先、晶匡はあることに気づいた。

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