8話
種族:風爪狼 性別:♀
レベル:150 状態:正常
ステータス
【生命力】7000/7500
【持久力】6000/8100
【魔力量】5000/7800
【物理攻撃】8250
【物理防御】7500
【魔法攻撃】7800
【魔法防御】7500
【敏捷】8100
スキル:
通常:
【爪術】Lv6【牙術】Lv5【尾術】Lv4【隠密】Lv5【気配探知】Lv5【暗視】Lv4 【物理攻撃耐性】Lv5【魔法攻撃耐性】Lv5【状態異常耐性】Lv5 【生命力回復】Lv2【持久力回復】Lv2 etc...
魔法:
【風魔法】Lv6
加護
称号
争いが続く廃村。局所的に降り注いでいた矢の雨はぴたりと止んでいた。森を切り開いて生きる逞しい命は散り、二体の怪物が互いに睨み合う。理由は違えど、両者の眼には濃密な殺気が籠っていた。
狂気に口を歪める少年の側に二体の幼狼が無様に地面に落下する。同時に巨狼の足元で金属が砕ける音がする。先ほどまで少年が使っていた剣が落下の衝撃で限界を迎えたのだ。大して質の良くない剣だった。それを折れた状態で格上の魔物を斬るという、随分と無茶な扱いをしたことを鑑みれば折れるのも無理はない。少年はそんな剣の状態を見抜いており、先ほどの二頭の幼狼への攻撃を直剣ではなく巨狼の首元に刺さっていた短剣で行っていた。
間合いは短いが、唯一、巨狼に一矢報いることができた武器。砕けた剣よりも遥かに品質は良く損傷もほとんどない。二体の幼狼は武器の刀身が短くなったことで、文字通り辛うじて首の皮が一枚繋がっているが受けたダメージは先に死んだ兄弟たちと遜色なく、彼らもまた一撃で命を刈り取られていた。
白狼は目の前の少年を殺すか殺されるかの状況に立たされていた。白狼は目の前の怪物が自身をこの場で殺すつもりであることと、少年よりも優れた数値をもってしても彼の追跡を振り切ることができないことを理解している。そしてなにより、守る相手がいなくなったとはいえ、モノや生きた存在を一瞬で移動させる強力な固有スキルと銀の短剣を駆使すれば怪物の攻撃は自身の命に届きうる。巨狼は悲しみと後悔を振り払い怒りを燃やす。目の前の少年を殺すことが自身の復讐と子供たちへの弔いとなると信じて。
「(...。)」
両者は互いに隙を窺いながら円状に歩く。先に動いたのは白狼だった。
「Guruaaah!」
唸り声とともに、廃村に風が吹き荒れる。突如として吹き始めた強風。その中心には風を纏う白狼の姿があった。少年は短剣を構えたまま行動を起こす気配はない。
「(風の鎧か。厄介だな。攻撃を防ぐだけでなく、空間転移対策にもなっている。)」
少年は魔物の周囲で吹く風を冷静に観察する。間合いを詰めるために荒れ狂う鎧の中に転移すれば、風に体勢を崩されまともな攻撃を繰り出せないことが容易に想像できる。
「(だがこれはおそらくただの防御の魔法ではない...!)」
風を纏う白狼が動く。少年に向かって踏み込みながら右前脚を振り上げる。
「(やはり、速い!)」
巨狼のステータスをフルに発揮した全力の一撃。それだけではない。風の鎧がその巨躯を運び、更なる速さを与える。白狼はステータス以上の速さで少年に迫る。
「(だが、想定の範囲内だ。」
白狼は右前脚振り上げ踏み込みの勢いを載せる。同時に白狼の身を護る風が騒ぎ出し、一部が右前脚の爪に集まり渦を巻く。
白狼は少年に向かって全力で前脚を振り下ろす。その攻撃は叩きつけるというよりも切り裂くという表現が近い。そして巨躯を包む風は前脚による攻撃をも加速させる。ステータスで劣り被弾を重ねている少年は、この攻撃を受け止めたとしても致命的なダメージを受けるだろう。
さらに、凶悪な前脚の攻撃の中心である鋭く長い爪で渦巻く風から周囲に真空の刃が放たれる。爪を起点に広範囲に放たれた無数の風の刃は、少年の動きを阻害する牽制とフェイントを兼ね備えた攻撃となっていた。
「(『時間加速』)。」
数値で上回る魔物の全力の一撃をに対処するために、少年もまた身についたばかりの魔法で自身の数値を上回る速さを引き出す。さらに、魔法の取得によって開花した空間把握能力を駆使して無数の風の刃の軌道を予知する。その動きは躊躇なく空間転移を用いているものの前後の移動に留まっており、短剣による相殺や上下左右の動きは最小限に留めていた。当然、少年は牽制の刃を捌ききれず、本命の爪による攻撃を前に被弾を重ねる。
「(まだだ、もっと視えるはずだ。)」
死神の足音は少年のすぐそばまで迫っている。元の世界で感じたことのない強烈な死のイメージが生の渇望を極限まで高める。かつてない渇望の高まりが少年の集中力と成長速度を引き上げ、技量が熟してゆく。
白狼は本命の攻撃を確実に当てるため、熟達した風魔法の使い手特有の感知能力を少年の動きの察知に注ぎ込む。視界内で前後にアクロバティックに動きながら風の刃を凌ぐ少年の一挙手一投足を観察し注意深く狙いを定める。
「Guaa!」
「(この武具にさらなる力を。『付与魔法』-『鋭利』)」
風を纏う高速の一撃は衝撃音とともに地面に小さなクレーターを生みだす。その光景が白狼の渾身の一撃の威力の高さを物語る。しかし、右脚が地面に着くと同時に、右脚を軸に白狼は身体を180度回転させ追撃の体勢に入っていた。右前脚が着地する前、本命の攻撃が切り裂いた相手が廃材だったことを白狼は感知していたのだ。少年の瞬間移動能力は白狼の全力の一撃ですら超えることはできなかった。
白狼は瞬間移動を捉えることはできず、空気の揺らぎを感知する能力は視界内に特化させていたため、白狼は一時的に少年の行方を見失っている。しかし、移動先に心当たりがあった。
攻撃時に発生していた無数の風の刃。広範囲に長い射程で飛ばしていたが、自身の巨躯が遮るために白狼の背後には攻撃が届いていなかった。身体の捻りの反動で大きく尻尾を振るう。その尻尾には、右前脚の爪と同様に身体に纏う風の一部が集まっている。そして、振り向きざまの尻尾の薙ぎ払いが地面に対して水平な巨大な風の刃を生みだし、白狼の背後に襲い掛かる。
白狼は背後に向き直りながら、感知能力を再度周囲に展開する。
少年の居場所を突き止めた白狼の身体を冷たい汗が伝う。確かに、少年を追撃の風の刃の進行方向上に発見した。しかし、それはあまりにも遠かった。加えて少年は魔力の大半を短剣に注ぎ込んでいる。白狼は少年の移動する方向を正しく読み当ていたが距離を見誤っていたのだ。
白狼の追撃はかつて家屋であった瓦礫の山にぶつかる度に、僅かではあるが威力と速さを減衰させている。この僅かな時間の猶予が命運を分ける。
「(『空間転移』。)」
少年が隠れる瓦礫の山に追撃が襲うも、白狼は追撃の失敗を確信する。
相当量の魔力を帯びた短剣を構える少年が白狼の目の前に現れていた。
名前:フリードリヒ=スーザツ 種族:辿人族 性別:男 年齢:13
レベル:50 状態:正常
ステータス
【生命力】900/4500
【持久力】2700/4500
【魔力量】3000/4600
【物理攻撃】4550
【物理防御】4500
【魔法攻撃】4500
【魔法防御】24500
【敏捷】4550
スキル:
通常:
【直剣術】Lv2【短剣術】Lv1【弓術】Lv1【解体術】Lv1【採取】Lv1【隠密】Lv1【気配探知】Lv1【暗視】Lv1 etc...
魔法:
【付与魔法】Lv2
補償:
【時空魔法】Lv3
加護
称号
【時空の化身】