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首狩りの赤銅  作者: 星屑アート
プロローグ
7/11

6話

辿人族...異なる道を辿る者。高いステータスと優れた魔法の才能を持って生まれることが多い。只人族の辿人族は"魔女"や"仙人"と呼ばれている。彼らの道はどこまで続くのか、彼らの道に終わりはあるのか。それらは本人すら知りえないことである。

 少年は、五体の魔物の一挙手一投足を警戒しながらも、改めて観察する。

「(こいつ、左目がみえていないのか。)」

 昨晩の邂逅が、弱い月明りの中でのことであったために気づけなかったのだろう。魔物の親玉の左目に治って随分と経つ古傷が刻まれていた。古傷は魔物の左目の視覚機能を完全に奪っていた。

 少年が魔物を観察しているのと同様に、魔物たちもまた少年を周囲深く観察する。少年の装備は一番小さな幼狼と一緒に川に落ちた時と変わっておらず、腰に短剣の鞘と無用の薬草が入ったポーチがぶら下がっているだけであった。

 お互いが探りを入れあい、蹂躙の跡地の空気が一層張り詰める。

 相手の観察を続ける少年は、更なる事実に気づく。返り血で染まっている魔物の白い体毛。あまりの強さに村人たちの攻撃は一切効いておらず、全くダメージを受けていないと思い込んでいたのだが、親玉の首元に一本の短剣が刺さっているのだ。

「(あれは親父の...!)」

 少年の意識が魔物の首元に逸れた瞬間を魔物たちは逃さなかった。眼前の巨狼が鋭い爪の生えた右前脚を振り上げ、風魔法を纏わせ始める。背後に控える幼狼は巨狼の動きに呼応して口元で風魔法の準備を始める。

 ほんの数瞬遅れたものの、少年は魔物たちが攻撃動作に入ったことを察知する。少年は、すぐさま腰にぶら下げていた短剣の鞘をベルトから引きちぎって下段に構えると、正面の巨狼の軸足に向かって駆けだす。

 やはり、魔物が感じ取っていたように少年のスピードは昨晩よりも段違いに速かった。しかし、魔物に疑念こそあれ驚きはなかった。それほどまでに、この巨狼と少年の間には、位階(レベル)数値(ステータス)に差があった。

 背後の幼狼は左右に2体ずつ、巨狼の身体が射線を遮らないよう素早く移動する。少年を迎え撃つ巨狼は余裕をもって向かって来る少年に照準を定めなおすと、獰猛な風を纏った脚を地面にたたきつける。振り下ろした脚は衝撃音とともに地面を揺らすも、少年に当たることはなかった。しかし、振り下ろした脚の爪先から起こった魔法の風が地面を掘り起こし、地表を切り裂きながら少年へと襲い掛かる。四体の幼狼が油断なく追撃を狙うなか、少年は一撃必殺の攻撃への対処を迫られる。

 風の刃が半分ほどの距離まで到達した頃、少年に異変が起こる。少年が構えている短剣の鞘が刀身の折れた直剣に変わったのだ。

 巨狼は大きく動揺する。少年が手にしている折れた直剣が、少年の臭いが一際強く染みついた家に住んでいた、男が装備していた剣であることを即座に思い出していた。その折れた剣で巨老の体に傷一つ付かなかったことも。白狼が驚いたのは剣の性能が理由ではない。少年がどうやって折れた剣を装備したのか全く分からなかったのだ。

 白狼はヒトとの戦闘経験が乏しいが、剣と鞘の関係を理解している。にもかかわらず、少年は短剣の鞘から直剣を生みだした。巨狼は少年から魔法を使用した際に見られる魔力の揺らぎや減少を感じなかったことから、少年が何らかの強力なスキルを使用すると考え、さらに警戒レベルを上げる。警戒レベルを上げるのが遅すぎたと後悔することも知らずに。

 風の刃が少年に届く一歩手前、再び少年が動く。下段に構えた直剣を斬り上げ始めたのだ。巨狼は内心で少年を嘲笑う。この村で最も強かった男の剣を手にしたことで武器の性能は上がったとはいえ、この剣が風の刃を相殺できるほどの業物ではないことを確信していた。巨狼は、一晩で見違えるほどに成長したにもかかわらず、彼我の力量差を測ることができなかった愚かな少年が風の刃に切り刻まれる、あっけない結末を想像する。

「...?」

 巨狼が自身の縄張りを荒らした不遜な少年の最期を見届けていると、直感が違和感を察知する。折れた直剣が前回の戦闘時と違って、わずかながらも魔力を帯びているのだ。巨狼は魔力を帯びた武具は魔力を帯びていない武具と比較して高い性能を持つことを知っている。一方で、折れた直剣が保有する魔力量では、変わらず風の刃を相殺することができないであろうことも理解している。

「...!」

 巨狼は違和感の正体に気づく。しかし、すべてが手遅れだった。

 風の刃が少年に届く刹那、三度少年に異変が起こる。少年の姿が消えたのだ。いや、正しくは少年が剣を振っていた場所にボロボロの木材が現れたのだ。

 少年が廃材と入れ替わった瞬間、巨狼は周囲の空気の揺らぎから全てを悟っていた。成長した少年は幼狼よりも弱いが差は大きく縮まっていた。つまり幼狼には有効なのだ。折れた剣とは言え、魔力を帯びた剣は幼狼には脅威だった。母親をサポートする為に、幼狼は互いにカバーができないほどに離れて魔法の準備をしていた。

 最悪の光景が広がっていること既に知りながら巨狼は背後を振り返る。未熟な剣技で渾身の一撃を終えた少年と首が舞う息子の姿があった。

種族:風爪狼 性別:♂ 


レベル:50 状態:死亡




ステータス


【生命力】0/1250


【持久力】1200/1600


【魔力量】1200/1400


【物理攻撃】1650


【物理防御】1500


【魔法攻撃】1400


【魔法防御】1500


【敏捷】1750


スキル:


通常:

【爪術】Lv3【牙術】Lv2【隠密】Lv3【気配探知】Lv2【暗視】Lv1 【物理攻撃耐性】Lv2【魔法攻撃耐性】Lv1【状態異常耐性】Lv1etc...


魔法:

【風魔法】Lv3

加護


称号

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