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「ッッ……」
茶色の毛の獣人、信は口元を手で抑えてうずくまる。早兎はそれに驚きながらも側に近寄り、少し躊躇いながら信の背中を優しくさする。
「はぁ……はぁ……ううっ……!」
「……だ、だいじょうぶ?」
信は吐き気を堪え必死に呼吸をする。そして縋り付くように早兎の腕を掴み、囁きのようなか細い声をもらす。
「もう、いやだぁッ」
その声を聞くだけで胸が締め付けられ苦しくなるほどの苦痛に満ちた声。歯を食いしばりもう耐えきれないというように目に涙を溜めて顔を歪ませる。
「ッッ……」
早兎は何も言えずに獣人の背中を優しくさすり続ける。そして何度も唱えるように「大丈夫、大丈夫」と言い、側に居続けた。