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早兎が玄関でサンダルを履き外へ出ると、信の父親と祖母が挨拶をしているところだった。
「こんにちは、お久しぶりです」
「いらっしゃい、遠かったでしょう!」
「ははっ、こっちはまだ雪あるんですね、びっくりしました」
「今年は寒くてこの前も雪降ったりしてねぇ」
信の父親と祖母が立ち話をしているのを横目に、早兎は少し周囲を見渡してからもう一度車を見る。
(信くんはどこだろ?……まだ車の中にいるのかな)
そんな事を考えていると、ちょうど祖母が信の事を聞く。
「今日は信くんも来たのかい?」
「はい、少し車酔いで気持ち悪くなっちゃって今寝てます」
「そうかぁ、じゃあいま布団敷いて来るからね」
「……すみませんお願いします」
そういうと祖母は体調を崩した信が休むための布団を敷きに家の中に入っていった。
「早兎くん、久しぶり。元気だった?」
「……はい……」
「そっか、良かった。……信、まだ体力戻ってないから助けてあげてな」
「……はぃ……」
自分には何もできない、そんな言葉が頭の中に浮かんだせいでノドに変に力が入り上手く喋れなかった。