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暇つぶしに
「…………ゔぁ」
重い体を動かしてスマホを手に取り時間を確認する。
すでに午前十時を過ぎていた。
「……はぁ……」
またかなり遅い時間に起きたことに少しだけ自己嫌悪し、ため息をつく。
凝り固まった体をぐぅぅっと伸ばし、ゆっくりと起き上がる。
昨日のうちに枕元に置いていた服に着替え、途中トイレによりながら居間に向かう。
がらがら
曇りガラスと木でできた戸を開けると、テレビを見ながらコタツで暖まる祖母がいた。
「おぉ早兎くん、おはよぉ」
「うん…おはよう」
祖母は遅く起きてきた早兎を怒ることなく、ニコニコしながら柔らかい声色であいさつをする。
「朝ごはん食べれる?」
「……うん、食べる」
そう言うと二人はキッチンへ向かい、祖母は味噌汁の入った鍋をガスコンロで温め始め、早兎は食器棚から茶碗を取り出し、炊飯器から炊いた米をよそう。
「はい」
「……ありがと」
祖母にお椀に入った味噌汁を渡され、礼を言いながら居間に向かいコタツに足を入れ「いただきます」と言い早兎は朝ごはんを食べ始める。
朝ごはんを食べ終わりコタツでぼーっとしていると、ふと思い出した風に早兎は気になっていたことを祖母に聞いてみる。
「……そういえば、信くん来るの今日だっけ?」
「ん?あぁ、そーだねぇ。昼過ぎぐらいには着くんじゃないかなぁ」
「んー、そっか」
あまり気にしていない雰囲気で返事をするが、密かにかなりストレスを感じ緊張し始めていた早兎。
早兎はかなりの人見知りで初対面や久しぶりに会う人がいると、ほとんど声が出なくなる。
少し前まではクビを縦や横に振ったり、黙り込むことしか出来なかったが最近は少しマシになった。
それでもあまり顔を合わさない人と会うとなると、早兎はかなりストレスを感じる。それでも早兎は以前のように部屋にこもることをしようとは思えなかった。
なぜならいつもなら夏休みや冬休みの長期の休みではなく、五月に入ったばかりのこの時期に、中学生のいとこがこちらへくる理由があったからだ。
早兎はストレスを和らげるためにイヤホンを耳に付け、スマホを操作して音楽を聴き始める。