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15、過去話

信が来る一年くらい前の話。

獣人化の時、体が作り変わる過程で記憶をほとんど失っていました。ユメをきっかけに親との記憶を取り戻した時の話です。

「……おばあちゃん……」



「……どおしたの?」




どこか苦しそうな、何かに耐えているような顔をした早兎を見て少し心配になりながら、祖母は次の言葉を待っていた。


早兎は強張り吐き気で震えそうになる体を抑えながら、やめても良い言わなくても良いと心を守ろうとする思考と葛藤しながら、一歩踏み出した。




「心療内科行きたい……」



「……うん、わかったよ」




二週間ほど悩み考えていた事をやっと言えた事と、すぐに受け入れてくれた祖母の言葉に安堵して早兎は自室に戻る。



自室に戻り電池が切れたように座り込み何も無い空間を見つめる早兎。



「…………」



「……最近早兎くん、元気無かったから心配してたんだよ」




いつの間にかついて来ていた祖母の、その言葉を聞いた瞬間に心臓を軽く締めつけられたような感覚と、目の周りが熱くなっていくのを感じる。


ほろほろと流れ出す涙に自分で少し驚きながらも、どこか安心したように体のチカラがスッと抜けていく。




祖母は涙を流す早兎に「頑張ったね」と優しく言いながら背中をさする。




「……なにも、かえせな、かった……」



誰に何を返せなかったのか何となく察した祖母は、早兎の背中を優しくさすりながら言う。



「……返す何て考えなくて良いよぉ。早兎くんが生きてるだけでお母さん達は嬉しいはずだよ」




無表情で涙を流し続ける早兎に「話してくれてありがとうね」と言いながら背中をぽんぽんと安心させるように軽く叩く。




早兎の中の止まった時間が少しずつ動き出した。







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