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あの日の面影2

実際の平安時代の制度等と異なる点がございますが、パラレルワールドだと思ってご容赦下さい。

 あっという間に夕方になった。時子は、改めて紅葉に礼を言う。

「お付き合い頂き、ありがとうございました。・・・お礼なのですが、何か私にして欲しい事はございませんか?」

 紅葉は、また困ったように右目の周りを掻いた。

「いや、何も無いよ。・・・しかし、本当に大した事してないんだけどねえ・・・」

「いいえ。あなたには、素敵な時間を頂きました。今日も・・・七年前も」

紅葉は、目を瞠った。

「あなたの本当の名前は、紅葉ではなく・・・若菜(わかな)ですよね」

 若菜。それは、七年程前に、時子が町に遊びに行くたびに一緒に遊んだ少女。黒い靄を纏っていた少女。そして、既に亡くなっているはずの少女。

若菜は今時子と同じ十七歳に見えるが、彼女の姿は、時子と紅玉以外には見えていなかった。

「・・・よく気付いたね。こんな姿なのに。まあ、どうしてこの年齢の姿になったかは、自分でもわからないけど」

「同じですもの。優しい表情も、困った時に右目の周りを掻く癖も」

「・・・変だと思ったんだ。店で私に話しかける時、私の方を見てなかったから。あれは、店の人に不審に思われない為だったんだね」

「・・・あなたが若菜だと気付いた時点で、あなたがあの世に行けるように尽力するべきだったのですが、少しでも、またあなたと過ごしたくて、黙っていました。・・・七年前、あなたと遊ぶ時間は、本当に楽しかったんです。あなたは、掛け替えのない友人だったんです」

「やめてくれ!」

若菜は叫んだ。

「私には、そんな事言ってもらう資格なんてないんだ。私は、私は・・・七年前、あんたの巾着袋からカネを盗んでいたんだ」

 七年前、若菜が貴族である時子と仲良くなっているのを知った若菜の両親は、時子が持っている銅銭を盗むよう指示した。最初若菜は抵抗したが、抵抗すると殴られるので、仕方なく時子の目を盗んで銅銭を手にしていた。

 「・・・盗みを働いた事、あんたに言ってしまいたくて、謝りたくて、でも言えないまま死んじまって・・・ずっと苦しかった・・・」

若菜はぼろぼろ泣いていた。

「・・・あれは、あなたに素敵な時間をもらった礼だと思って黙っていましたが・・・きちんと言えばよかったですね・・・」

 若菜は、目を見開いた。

「・・・まさか、あんた、気付いてたのか・・・」

「はい。・・・しかし、黙っていた事が結果的にあなたを苦しめてしまった・・・。本当に、ごめんなさい」

「あんたって人は・・・」

若菜は、涙を浮かべながらも笑っていた。

「改めて言わせてくれ。・・・あの時、盗みを働いてしまって、本当にごめん。・・・でも、あんたの事、大切な友達だと思ってるよ」

「私も、あなたを大切な友人だと思っています。・・・さようなら」

「ああ、さようなら・・・」

若菜の姿は、消えていった。


 その後、二人きりになった時子と紅玉は、鬼ヶ原神社に移動した。

「・・・結局、七年前に若菜に纏わりついていた黒い靄は、何だったんでしょう。若菜の死に関係しているのでしょうか?」

「俺の推測だが、その黒い靄は、若菜の生霊が若菜自身に向けた悪意なんじゃないか?若菜は、盗みを働いた自分を責めていたみたいだしな」

紅玉には、七年前の事を全て話してある。

「黒い靄と、若菜の死の原因となった病とは関係ないだろう」

「そうですか・・・」

「・・・だから、お前も、自分を責めるな。若菜が亡くなったのは、お前のせいじゃない」

「・・・ありがとうございます・・・」

 時子は、目に涙を溜めていた。紅玉は、溜息を吐いた。

「・・・最近、お前が泣くような事ばかり起きるな」

 時子は、涙をぬぐって紅玉に笑顔を見せた。

「大丈夫です。・・・泣くような事が起こっても、私の側には、あなたがいますから」

「いつでも俺が側にいると思うなよ」

そう言いつつも、紅玉は、穏やかな笑顔で時子を見つめていた。

この優しい鬼と出会えて良かったと、時子は心から思った。


平安時代には「さようなら」という挨拶が無かったかもしれませんが、どうしても別れの挨拶をさせたかったので、「さようなら」の言葉を入れました。


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