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第一話 死亡&転生

 俺は引きこもりだった。中学まではちゃんと行っていたのだが、高校の生活が自

分に合わず、いつの間にか行かなくなってしまった。毎日ゲーム三昧。


 外に出るのはせいぜい夜中にコンビニへ夕飯を求めて行くぐらいだ。そして今日

も日が落ちかけた時間にコンビニへと足を運んだ。12月の上旬で、冷たい風が吹き

つけた。


 この生活があと何年続くんだろう。答えの出るはずがない質問を自分に問いかけ

た。


 電柱に留まっているカラスが自分を嘲笑っているかのように鳴いていた。

 

 無気力な状態で横断歩道を渡っていたその時だった。横から猛スピードで大型の

トラックがこちらを目掛けて走ってきた。咄嗟に前へ避けようとしたがその時には

もう遅かった。


 引きこもりの18歳、五十嵐 翔琉(かける)はトラックに吹き飛ばされ命を落とした。



×××××××××××××××××××××××××××××××××××××



 気が付くのと同時にあまりの眩しさに目をかばった。


「あなたにはどうやら英雄となる資格と能力があるようですね……、なのに何でこ

 んな自堕落な生活を送っていたのかわかりませんね」


 美しい女性の声が聞こえた。しかしその発言内容は意味の分からない言葉と失礼

な単語で構成されたものだった。

 目を開けると顔こそ光で見えなかったが、白いシスター服を着た女性がたってい

た。


「あなたには魔王により苦しんでいる世界……、日本で異世界とかいう場所へと行

 ってもらいます」

「い、異世界に俺が……?」

「そうです、あなたがです。自分ではお気づきになっていないと思いますがあなた

 には膨大な魔力をため込むことができる器とそれを自由に扱うことができる能力

 を持っています。まぁ、地球には魔力がないので当たり前ですよね」


 もしも今の話が本当なのであればゲームで何度も見た世界で冒険ができる。その

上どうやら俺には魔力を扱う才能があるらしい。


「とりあえずは魔王城から一番離れた都市に送りますね。そこでいろいろと準備を

 してください」

 彼女は落ち着いた口調でそう言った。どうやら俺に拒否権はないらしい。


「では準備をしてください。あなたには異世界で魔王を打ち滅ぼすという使命を与

 えます。あなたにはこの世界の運命がかかっているのです。それを忘れないでく

 ださい」


 体を包み込むように魔法陣が出現した。周りがだんだんと明るくなっていく。

 

「幸運を祈ります」


 周りの明るさはさらに増し、何も見えなくなった。



×××××××××××××××××××××××××××××××××××××



 見たことのある街並み。犬や猫、いろいろな動物の耳が生えた亜人。そして俺は

ギルドへと向かっていた。

 どうやらギルドはここから少し離れた場所にあるため、歩いていくには遠いらし

い。ただ馬車に乗るお金が無いため渋々歩いているのだ。歩き始めて1時間半、も

うすでに足が引きちぎれそうだ。


 よくよく考えたらあのシスター服の女には何ももらっていない。装備も無ければ

お金もない。見たこともない文字を読むことができたのがせめてもの救いだった。


「思ってたのと違う。なんか違う」


 独り言をつぶやいてはため息を深くついた。


(とりあえずギルドにつけば何かしらあるはずだ。それまでは頑張らないと)

 そう思い、再び前を向いた。



 もう3時間は歩いたが見えるのはギルドではなく古びた家が立ち並ぶ住宅街。足の

筋肉の感覚がなくなっていた。


 もう空は赤く染まっていた。これからどうしよう、とぼんやり考えていると女性

の声が聞こえた。

「キャア! や、やめてください……」

 すぐに声のする方向へ向かった。路地裏の角を何回か曲がると一人の少女といか

にも悪そうな顔をした男性が二人いた。

「お前なかなか可愛いじゃねぇか、ちょっと俺と遊んでもらうぜ」

「大丈夫、命だけは取らないから」

 

 少女は猫の耳が生え、桃色の長い髪の亜人だった。あの男の言う通り可愛い。


「やめてください……、あなたたちはいったい、何なんですか!?」

「通りすがりの冒険者だよ、じゃあ行こうか」

 そう言って片方の男が少女の腕をつかんだ。

「は、放してください!」


 悩んだ。俺には彼女を助ける力がない。恐らく俺の体に流れている魔力もどうっ

やって使うかなんて知らない。それに殴るにしても3時間も歩いた引きこもりの体

はもう限界だった。

(見捨てるか?、いや、そんな男は英雄なんかになれねぇ……。それにこんな

 とこで死ぬ奴は英雄候補にならないはずだ。なら……)

「やめて……、放して!!」

 勇気を振り絞れ。一度亡くした命なら人のためにつかえ俺!

「お前ら! その子の手を放せ!!」


 大きな声で二人の男にそう言い放った。

 
























 

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