#01 狭間の始まり
#01 狭間の始まり
真っ白な空間、無造作に折り重なるウィンドウ画面が宙に浮かぶ。その一つ一つを一心不乱に操作し続ける女性……額に滲み出た汗を拭いながら、呪文の様に独り言を繰り返す。
「ヤバい、ヤバい、ヤバい……完全に育成の方向間違えた……このままじゃマズい……」
ーーー PM5:00 東京 ーーー
(今日のシフトは遅番だから賄い遅いし、小腹空くかもな……)
コンビニのレジで缶コーヒーを会計しようとした時、ふと思い出して、レジ前に陳列された甘味系の食品に目を配る。
「すいません、これも一緒に……」どら焼きを2個カウンターに置く。面倒くさそうにレジを操作し、バーコードをスキャンし直し、無愛想に金額を伝える店員。
その態度にちょっとイラッときたので、「あ、レシートと袋いいです」と言い、パーカーの両ポケットにどら焼きを1個づつ放り込み、缶コーヒーを掴んで足早にコンビニを出た。
夕暮れの雑踏、往き交う人々……
仕事を終えて家路に向かう人、遊びや食事に行く人、俺の様に、これから仕事に向かう人…色んな人生が路上ですれ違って行く……
交差点での信号待ち、隣に並んだOL風の女性達の会話が耳に入ってきた……
「そーいえばさ、会社の側にオープンしたカフェ、評判どう?」
「あーオシャレで雰囲気は良いけど、パスタとかスイーツとかマズいらしいよ〜。値段もお高いみたい……」
「えー!?じゃあ行く価値無いねw明日のランチどうしようか悩んでたけど、いつもの古くて、狭いラーメン屋でいいかw」
(なんで、こいつら上から目線なんだよ……ってかラーメン屋さんに失礼だろ!!ラーメン作るのって、仕込みとか色々大変なんだぞ……)
たわいない会話だが、料理の道で飯食ってる俺にとっては、考えさせられる言葉だった……
飽食の現代日本。
金さえ出せば、どんな料理も、苦労せずに食べられる。
料理を提供する店側も、味よりも利益優先な店の方が、近頃は多い気がする……
俺は、教わった師匠が良い料理人だったから(料理人って言葉の響きは良いけど、小さな居酒屋の大将……)、設けなんかどうだって良いと思っているし、師匠の口癖
「人ってもんはな、旨いもん食って、旨い酒飲んで、思いっ切り笑ってりゃ、明日も頑張って生きていこうって気持ちになるもんさ。その為に俺ら料理人は、精一杯旨いもんを作る!!それが料理人の存在意義ってもんよ」を今でも信仰してる。
(休みの日には料理や食材の勉強だって、俺を連れて日本中飛び回ったりする破天荒な人だったけど、料理には一切妥協しないし、俺の生活も親身になって支えてくれた本当に良い師匠だった……)
そんな師匠も2年前に、病気でポックリ逝ってしまった……修行しながら働いてた店も、人手に渡り、今は別な店舗になってるらしい……
物憂げに謀りながら歩いていると、いつの間にか仕事場に着いてしまった。街は日が落ちかけて、夜の景色に変わろうとしている。
今の俺は、師匠の親戚が経営する店の厨房で働いている。
それが、ここ[ダイニング居酒屋 銀の鍋]だ。
(和食、洋食、中華にスイーツ、どんなジャンルの料理でも提供する、小洒落た雰囲気の居酒屋で、ツマミや酒の種類も豊富なのと、リーズナブルな価格が受けて、連日満員御礼の人気店。勿論、味にも自信ありだ)
「さて……いつか自分の店を持つ為に、今日も1日、腕に槍をかけ、旨いもん作りまくるか!!」
そう呟くと、いつものルーティン、仕事前の缶コーヒーを飲もうとプルタブを引き上げる。
カシュッと心地良い音と共に、いきなり視界の色が消えた……
「…………え?何これ?立ちくらみ?停電?ブラックアウト?」
突然の出来事に軽くパニクる……地面に立っている感覚はあるし、缶コーヒーを握ってる感触もある。呼吸もしてるし、胸に手を当てると、早く脈打つ鼓動も感じ取れる。
けれど、自分の周りは暗闇が延々とあるだけで、今迄耳に入っていた街の雑踏も一切聞こえない……
「生きてはいる……よな?」
ベタだがとりあえず、頰を思いっきり抓ってみた……
「痛って!!生きてる!!……って思いたいが……どうしたら良いんだこの状況……」
途方に暮れて立ち竦んでいると、暗闇が徐々に白みを帯びてきた。次第に明るくなっていき、今度は真っ白な空間に変わってしまった……混乱していた頭も明るくなった事により、少し落ち着きを取り戻す。
(やっぱり俺、心臓麻痺とかで死んでしまって……ここは、死後の世界なのか?)
さっきまでは眩しい位に感じた白さに、ようやく目が慣れて来て、離れたところに人影が見えた。
あくせく手を動かして、体操?している様にも見える。
黙って突っ立っていてもラチが開かないので、勇気を出して人影の方に歩いてみた。
人影に近づいていくと、容姿や体操?の内容が次第に解ってきた。
白い布を身体に纏った金髪の女性……まるでギリシャ神話の登場人物みたいだが、近未来のSF映画に出てくる様な、空中に浮かぶ沢山のウィンドウ画面を必至に操作している。
こちらを背にしているので、いきなり声をかけると驚かせそうだし、少し距離を置いたところから話しかけてみた。
(外国の人みたいだけど、日本語通じるかな……)
「あのー、すいませーん」
声をかけたと同時に、女性が勢いよく振り向いた。青い瞳が俺を捉える。
(やっぱり外人さんか……かなり美人……なんだけど……疲労しきった表情、髪もバサバサなのでちょっと窶れて見える。例えるなら、夜中まで残業終わらない女上司って感じか?)
会話をするには少し遠いので、距離を縮める為に歩きながら、質問をしてみる。
「すいません日本語わかりますか?ここは何処なん……」
質問しようとした俺の言葉に、被せる様に女性が話してきた……
「君は、神代 乗[かみしろ じょう]?合ってる?」
(何で俺の名前知ってんの!?)
突然、知らない外人女性に日本語で名前を呼ばれ、頭がプチパニック状態になるが、女性は質問を続けて来た。
「神代 乗26歳、職業は居酒屋厨房担当、天涯孤独で友人、恋人無し。間違い無い?」
「ちょ、ちょっと待て!!何でそんな個人情報まで知ってんの!?ってかアンタは誰なんだ?」
(なんだこれ?新手のドッキリ系の撮影?)
混乱する頭で、ありきたりの質問返しをしてしまったが、シカトする様に女性は話を続けてきた。
「その反応だと、人違いって事は無さそうね。良かったぁ〜慌ててたから、間違った人呼んじゃったかもって心配だったの。あ、喉乾いてたから、それ貰うわね」
女性がこちらに近づくには、まだ距離があった筈なのに、一度瞬きをしただけで、いきなり俺の目の前に立っていた。そして、女性は俺の手から缶コーヒーを奪い、腰に手をあてがい一気に飲み干してしまった。
「く〜ぅ、疲れた脳に糖分とカフェインが染みる〜」と言って、空き缶をポイと放り投げたのだが、放物線を描いて飛んだ空き缶は、落下する直前に空中に吸い込まれる様に消えていった……
「は?何それ……」
女性は缶コーヒーのお陰か、少しホッとした表情になったが、思い出した様に話を再開し始めた。
「時間が無いから、かなり端折って説明するけど良く聞いてね。私は女神リタ……」
缶コーヒーを奪われ、個人情報も知ってる得体の知れない外人にムカついたので、少しだけ反論してみた。
「女神⁈どう見ても疲れたオバ……」と言いかけた後、こめかみに激痛が走った。
「誰がオバさんだって〜?」
さっきまで目の前に居た筈の女神の声が、後ろから聞こえた。どうやら背後から、両拳でこめかみをグリグリされてる様だ。
(いつの間に後に!?ってか、女性の力でも、これは地味に痛い……)
「痛ってー!すいません、言い過ぎました!!お姉さん……」
「わかれば宜しい!!って時間無いんだから、黙って聞きなさい!!私は、これから貴方が向かう異世界[フリーダ・ルル]の創造神」
そう言って女神は、再びウィンドウの操作に戻る。
「貴方に判り易く説明するから良く聞いて!!」
女神は早口で説明を続ける。
「フリーダ・ルルに生きる人々の生命エネルギーにより、私は神力を得て[魔物]と[魔素]をフリーダ・ルル還元する。魔物は食糧や素材に、魔素はマナエネルギー……簡単に言うと魔法ね、それを蓄積させておく媒体[魔石]や、魔石のエネルギーを使う[魔導具]、それと、人々が生まれ持って与えられた[スキル]を使って文明を発展させてく計画だったのに……」
(何か訳の分からない単語が沢山出て来たな……魔物とか魔法とかゲームの話か?)
説明しながら女神は半べそをかきはじめた……
「フリーダ・ルルの住人本当にバカばっかりで、魔物狩るのが、生きるメインになっちゃったもんだから、発生するべき生命エネルギーがどんどん減少してしまって、私の神力が底を尽きかけてるのよ……」
「この空間も、元々は色とりどりの花々が咲き乱れる美しい庭園だったのに、神力が減ってきたせいで維持出来なくなっちゃって……」
必死に涙を拭いながら説明を続ける女神を見ていたら、少し可愛そうに思えて来た。
「とにかく、貴方の力でフリーダ・ルルの生命エネルギーを増幅させて、私の神力を取り戻さないと、私も…フリーダ・ルルも消えて無くなっちゃう……だからお願い!!助けて……」
どうやら、神力ってもんが枯渇しそうでヤバいというのは理解出来たが、どうすりゃ良いのかわからないし、とんでもない頼み事をされた気がしたので、少し反論してみる。
「いきなり貴方の力で助けてって言われても、俺は知力も体力も普通の一派人レベルしか無いし、アンタの期待には添えないと思うぜ……それに戻って仕事もあるんだが……」
そんな言葉で返されると解っていた様に、女神は涙を拭い会話を続ける……
「その為に、今……こうして……貴方にギフト出来るスキルを……」
(どうやら必死にウィンドウを操作してるは"スキル"?ってのを何とかする為にやってるらしい)
「最後に……これを……こうして……よし!!出来た!!」
どうやら作業が終わったらしく、無数のウィンドウが一つに集まって女神の手に光りの珠となって吸い込まれた。
女神は此方に向き直り俺の両手を握ってくる……握られた両手が光り始め、ほのかな熱が体に入って来るのが解る。
「何だこれ……俺の体に何をしたんだ!?」
「貴方が向こうで簡単に死なない様、スキルてんこ盛りでサービスしといたわ」
女神がベソをかきながらも、ドヤ顔で話す。
「ちょっと待て!!俺は行くとか一言も言ってないぞ!!しかも"死なない様"とか、とんでもないワードが聞こえたし、何をさせるつもりなんだ!?」
俺は少し声を荒げてしまった。
「勇者として凶悪な魔王を倒し、世界を救って!!とかじゃ無いから安心して。ただ……魔物とか居るから、一応保険の為にチート使用にしといたんだけど……」
「は?なんだそれ!?死ぬレベルの危険な世界って事なのか?」
「大丈夫、チート仕様にしといたから、そう簡単には死なないわ」
「さっきも言ったけど、フリーダ・ルルの住人は本当にバカばっかりなのよ!!魔物を狩る為の道具とか、システムには、一生懸命になるくせに、生活面…特に酷いのは"食事"ね、それに関してはエネルギー補給出来ればいいや位の感覚しか持ってなくて、一向に改善する気が無いの!!そのせいで、食に絡む産業とか、そこから生まれる、生活を支える文明、関連する仕事なんかも全然発展しなくて……何て言うか……文明的にガタガタなのよ」
(成る程、食事は腹が満たされて、栄養摂れればいいって感じの文化なんだな。でも、それで何で俺が助ける事につながるんだ?)
「だから貴方の持ってる知識と技術で、フリーダ・ルルの住人に"美味しいものを食べる歓び"を与えて欲しいってのが目的ね」
(どういうことだ?)
「人って美味しいものを食べて感動すると、強い生命エネルギーを産み出すじゃない?そういう歓びのエネルギーが、私の神力になるのよ。」
(言われてみりゃそうだな、めちゃくちゃ美味いもん食えば感動して脳から何か出る感覚あるわ)
「勿論、食文化が発展してゆけば、そこから社会も発展して、更に色々なタイプの歓びのエネルギーが生まれるし、そういうのも私の神力になるの」
(成る程な、外食産業や雇用も生まれるって事か……)
「要はそのフリーダ・ルルって世界で料理すりゃいいのか?それだったら、俺じゃなくても有名なシェフとか料理人の方が適任だろ!!何で俺なんだ?」
「理由は2つあるわ」
「一つは、貴方が日本人で、料理ジャンルに縛られず何でも作れる事」
「何故に日本人?」
「日本人はマカイゾウが得意って聞いたわ」
(確かに、それは一理ある……ってか変な言葉知ってるなぁ……)
「それなら俺じゃなくても良いじゃないか!!俺より料理スキル高い奴なんかゴロゴロいるぜ」
「貴方じゃなきゃならない理由があるの……もう一つは、フリーダ・ルルを創造する時に、色々相談に乗って貰った恩人が、貴方を強く推薦したからよ」
(恩人?誰だ?俺の知ってる人か?)
「本当にお願い……もう貴方に頼るしかないの!!フリーダ・ルルを助けて!!このままじゃ、私も消えてしまう……」
女神の頬に大粒の涙が流れた……
(ちくしょう、オバさんに見えるけど、女性の涙はズルい……彼女を助けてやらなきゃ、俺が悪人みたいになってしまうだろ……俺を推した人ってのも気になるし……)
少しの沈黙が流れ、仕方なく俺は覚悟を決めた。
ここで押し問答してても、何も進展しないだろうし、元の世界に戻ったところで、毎日仕事と、暇つぶしにスマホでゲームするくらいだしな。それに、ちょっとだけ面白そうだと思ってしまった。
「わかった。貴女を助けるよ……でも幾つか質問させてくれ」
泣いてグシャグシャの女神の顔に、少し明るさが戻る。
「ありがとう、やっぱりあの人の見込んだ人間ね」
微笑んだ女神の顔が、何故だか記憶の奥底にあるのを感じた……
(気のせいかな?俺は何処かで、この人に会ってるかも?けど全然思い出せない……)
「多分、余り時間が無いと思うの、質問って何?」
女神が急かしてきた。
「ところで、俺って死んだのか?」
「生きてるわよ、召喚に割込みする為に、私が呼んだの。流石に転移させるには神力が足りなくて……」
(召喚?転移?何の事だ……ここがフリーダ・ルルって場所ではないのか?)
「俺を呼んだって事は、帰す事も可能なんだよな?」
「大丈夫、神力が元に戻れば、貴方を呼んだ時間軸に戻せるわ」
俺は、その言葉を聞いて少し安心した。
「じゃあ、次の質問。俺に料理を作れって言ったけど、地球の食材はあるのか?」
「それも大丈夫、地球を参考にして創った世界だから、大体の物はあるわ。ただ…フリーダ・ルルでは呼び名が変化してたり、未発見になってる食材、貴方の世界に無い食材もあるわ」
(成る程、ある程度の種類の食材が手に入るのなら、何とかなりそうだな……)
「それと、俺が地球の料理を作る事で、食文化や文明が大幅に変わってしまう可能性があるけど……そこは、いいんだな?」
女神は少しだけ悩んだ様に見えたが、腹を括ったらしく、俺の目を真っ直ぐに見てこう言った。
「私がフリーダ・ルルに直接関与出来ないって神界のルールだから、ガンガン変えちゃっていいわ。寧ろフリーダ・ルルの住人には良い刺激になるくらいだと思うし、好きな様にして」
(女神の承諾を貰ったからには、取り敢えず何やっても問題なさそうだな。あとは……)
「他にも聞きたい事は山ほどあるが、最後の質問だ。因みに俺が死んだらどうなる?ゲームみたいに生き返る事は可能か?」
「それは…死んじゃうわ……女神の力を持ってしても死人を生き返らせる事は出来ないし、地球の神に魂を還すから……貴方は存在しなかった人間として扱われると思う……ゴメンね、こればかりはどうも出来ない……」
(成る程、ゲームオーバーでコンティニューは無しか……)
話を聞く分に、ゲームみたいな仕様を期待したが、少しショックだった……まぁ、現実でも死ねば終わり、同じ事だ、仕方ないだろう……そんな事を考えていたら、突然俺の体から火の粉の様に光が昇り始めた。
「ゲートが開き始めた!!転移が始まるわ!!」
(転移?……じゃあ、これから向かうところが、フリーダ・ルルって世界か……)
すると突然女神が、何かを思い出した様に慌てふためいた。
「ヤバっ!!忘れるとこだった!!」
(今度は何だ!?)
「通信機出してっ!!早く!!」
(通信機?……なんだろう?トランシーバーなんか持って無いが……)
「もしかして、これか?」
俺はスマホを取り出して女神に見せた。
「それ!!」と言うと同時に女神は俺のスマホを奪い取り、真っ二つに折った……
「おい!!俺のスマホ!!先週機種変したばっかなのに、何すんだよ!!」
女神は俺を無視して、スマホを更に細かく砕き、紙を丸める様に両手でギュッギュッと握っていく……バラバラになったスマホの残骸が、光に包まれたと思ったら、薄紫色の水晶がついたペンダントに変化していた……それを息を切らしながら、俺の首に素早くかける。
「間に合って良かった……これはメモリークリスタル。向こうで必要になるから無くさない様にして。設定もしといたから、直ぐにでも使えるわ。でも、命の次に大事なものだから、余り人に見せちゃダメよ」
(そんな重要なもの忘れてるなんて、もしかしてリタってポンコツなのか!?)
「あぁ、俺のスマホが……」
スマホが壊されたのを嘆いている間も、俺の体から昇る光が、更に数を増す。やがて体全然が光を帯びている様に見えて来た。
「そろそろ時間ね……スキルとか、フリーダ・ルルの事とか詳しく説明出来なくてゴメンね。でも忘れないで、私は何時でも貴方を見守ってるわ」
(これまで出来る女っぽい仕草で通してるが、このリタって女神は、自分の創った世界のせいで消滅しかけてるし、さっきも重要っぽいアイテム渡し忘れるところだった……もうポンコツとしか思えない……本当に行っても大丈夫かな?)
俺の体が完全に光に包まれ、視界も光の色と同調してきた時、女神が慈しむ様に両手を大きく広げた、その姿はさっきまでベソかいてた女神とは同一人物とは思えない程神々しく、少し見惚れてしまった。そして、優しく語りかけてきた。
「神代乗よ、貴方に女神の祝福ありぇ。」
(最後の最後に、決め台詞噛みやがった……やっぱりポンコツだコイツ!!)
転移の間際、俺の目が最後に捉えたのは、顔を赤らめて、やっちまった感で棒立ちする女神だった……
気がつくと俺は、石造りの広い室内に居た……
(ここは……何処だ?)
足元には光る魔法陣、周囲には西洋式の鎧を身に纏った兵士や、神官らしき杖を持った者、蹲っている女性を介抱するメイド達……
(騎士にメイド?って事は、此処は城なのか?)
そして、目の前には、泣き崩れている女子高生と、何か喚いている作業服姿の女性。
女性の服の背中には[おうちのトラブル素早く解決!!ハウスレスキュー"電光石火"]とプリントが施してしてある。
(俺の他にも日本人が!?でも……どんな状況だよこれ……)
更に奥には、ステージらしきものがあり、一際デカい椅子に座っている、大剣を携えた甲冑姿の男が見えた……
(あれは……玉座か?って事は、あいつは王?それにしては随分若いな……)
俺の体の光が収まってくると同時に、足元にある魔法陣も消えて、周りの音が聞こえ始めた。
「なぁ、王様どないなっとんねんこれ!!ちゃんとウチらに説明してな!!」
威勢の良い関西弁が室内に響く。
徐に玉座から男が立ち上がり、こちらに手をかざし、こう言った……
「異界からの勇者よ!!我らの為に、魔王を討伐せよ!!」
俺はその台詞を聞いた瞬間、思わず声を大にして叫んでしまった。
「聞いてた話と違うじゃねーか!!」
To Be Continued